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第九話




 城門へ着くと、あらかじめ待機していたカイとエリーがこちらに気づいた。俺の体調を気遣い声をかけてくれるが、それ以上に、何かに怯えているような雰囲気を感じる。


「2人とも……怖がっているんだな」

「は!?そんなこと全然な」

「うわあああああああああああん」


 カイがツンデレっぽいセリフを言い終わる前にエリーが叫び出した。


「そりゃ怖いですよ!?怖いです!わああああああん!わたしなんて後衛のサポート係ですよ!?ただでさえ戦闘向きじゃないのに!一度の奇襲でも食らったらそのまま死んじゃいます!」


 今から世界を救おうとしてるんだから普通に黙ってほしい。とりあえず錯乱しているエリーに声を掛ける。


「大丈」

「でも!」


 俺の声を遮り再びエリーが話し始める。


「でも!どうせ2日後には魔王が……トラックがナラウに来る。もしそれで死んじゃうんだとしたら、私きっと後悔すると思うんです。最後まで、やれることをやらなかった自分を、受け入れられないと思うんです」


 胸がでかいだけで世を生き抜いてきた甘ったれた女かと思っていたが、どうやらそうではないらしい。彼女には、ここぞと言うときに一歩踏み出す決意をする力があった。


「エリー、俺は」

「だから!」


 流石に遮りすぎじゃない?


「私も一緒にいかせてください!あまり力になれないかもしれないけど!自分に胸を張りたいから!」

「エリー……」


 ここまでの覚悟を踏み躙るわけにはいかないな。


「ふん、威信が来るまでずっと私に抱きついて震えてたくせに」

「ちょっと!?カイさん!?言わないでくださいよおおおお」


✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱


「では、今回の流れを説明しよう」


 ナキシィが場を仕切り直す。さすが王国騎士団団長だ、人をまとめる姿から、何とも言えない圧倒されるような迫力を感じる。


「我々で馬を用意したので、4人でそれに乗り移動する。デジャーンに着いてからは、私たちでパーティを組み、洞窟内のモンスターをひたすら倒し続ける。もはやモンスターは我々の手には追えないので、戦闘は基本的に威信君任せになってしまうが、我々は自分の身を守ることに注力する」


 ちょっと待てよ、それならデジャーンへの案内までで彼女らの役割は終わるはずだ。彼女らが命をかけて洞窟に入る理由は全くなくないか?というか、俺はメガミィと意思疎通ができるのだからもはや案内すらいらないのでは?でもエリーがいい感じのこと言ってたから言い出しにくいな……


「……あ、そうか。すまないね、威信君は転生者だからレベルの仕組みを知らないのだったな」


 表情から俺の疑問を読み取る。すごい、これがナキシィが団長たる所以か。戦闘能力や指揮能力だけでなく、他者への気配りまでもが完璧だった。


「パーティを組むと、撃破者以外のパーティメンバーにも経験値が入るんだよ。あ、威信君の得る量が減ることはないから安心してほしい。……まあつまり、今回私たちは威信君の強さにあやかってレベル上げをしようとしているのだ!」


 ドヤアとかドンとかいった効果音が聞こえてきた気がする。


「トラックとの戦いは、きっと壮絶なものになるんだろう?それは威信君に任せるしかないが、私たちは、その間国を守りたいんだ。奴の出現と共に世界の瘴気はさらに濃くなる。民も避難しているとはいえ、いつまでも安全とは言えない。こんな形になってすまないが、君に頼るしかないんだ。威信君私たちとパーティを組んでくれ」

「お、お願いしますぅ」

「……おねがい」


 彼女らの目にはなお恐怖が見えるが、それ以上に決意を感じる。国のトップである三人が森のトロールすらも倒せなくなるような、圧倒的なパワーバランス。尊厳は踏み躙られ、とうに心が折れていても不思議ではない。しかし、この状況を前にして、なお折れることはなかったのだ。


「当たり前だ。俺たちで……俺たちで世界を救うぞ!」


✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱


 さあ、出発だ。馬に乗りデジャーンへ向かう。時間が惜しいので、エリーが馬に速度バフをかける。それはあまりにも疾く、騎乗経験のない俺は当然落ちた。

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