表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

後編【勘違い】

 男衆とは逆方面の駅へ歩く、赤と白の人影。

 その二人は、とある『依頼』を先ほど終えて。

 その成果、()()()()()()()()()について話していた。


─「ねぇ、協力して────」─


「まさか千秋が()()にチョコを渡すことの協力を依頼してくるとはね」

「もう志保ちゃんそればっかり」

「だってあんなやつのどこが良いのよー?」

「それは言ったでしょ『カッコ悪い人』が好きだって」

「まぁ確かにアイツはカッコよくないけど⋯⋯」


「そうじゃないよ。七海さんはね、大変そうな掃除のおばさんを手伝って一緒に掃除をするの」

「あー⋯⋯なんかやりそうねアイツ」


「窓際に見つけたポイ捨ての缶を見過ごさないで拾うの」

「拾うまでに変な動きしてそうね」


「それに、誰も私を助けてくれない時。普段あんなに威張っている人達が、小さく隠れている時に。七海さんだけは違うの」

「それが()()ってことね。あーあ、蒼太には勿体ないよこんないい子!」

「お陰様でちゃんと『本命』の手作りチョコ渡せましたっ。今日は本当にありがとう志保ちゃん」

「どういたしまして。でも私だってアキラ君にチョコ渡せたし、あれが本命なのも嘘じゃない。お互い大成功ね」

「そうだねっ!」


 これが、志保から蒼太への『依頼』の真実。

 志保がアキラにチョコを渡したかったのは決して嘘ではない。

 嘘ではないのだが、真実でもなく。


 ()()()()()()は千秋から志保へ。

『蒼太にチョコを渡すことへの協力』こそ本来の依頼だったのだ。

 千秋は蒼太へ、志保はアキラへ渡したいのならば。


「私が蒼太に『依頼』をすればいい。我ながら上手くいったわね」

「志保ちゃん天才っ。ばっちりでした!」


 志保は『千秋の依頼』に従って正直に蒼太に質問をする。

 しかし蒼太は『志保の依頼』に従ってアキラに話を振る。

 こうすれば千秋は蒼太の、志保はアキラのことを間接的に聞くことができる。

 逆にアキラから話が始まった時は『ついで感』を出して蒼太に振ればいい。


 しかしそもそも──


「なんでそんなにバレたくなかったわけ? 千秋なら渡せば絶対OK貰えるのに」

「そうとは限らないじゃん! きっと昼間の人達なら大丈夫なんだとは思うけどさ、七海さんは違うもん」

「だからこそ好きなんだもんね。たしかにアイツ『貰っても別に』みたいな雰囲気出してるかも」

「でしょー! だから()()()()()()()とか()()()()()()()()()って聞きたかったのっ」


「乙女心ね。でも映画の話はかなり盛り上がってたじゃない」

「あれは私も映画好きだったから⋯⋯それに同じ趣味なら気が合うかなって」

「千秋にしては興奮してたもんね。いやー良かった良かった」


 千秋からの依頼を見事完遂した志保。

 蒼太は志保の『依頼』を遂行していたようで、実のところ志保に上手く操られていて。


 つまり、今日の会を準備したのは蒼太だが、あの状況をセッティングしたのは志保であり。

 気を使って()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のも志保であり。


 そして──


「あのバカ、私からの贈り物──()()()L()I()N()E()にさっさと気付きなさいよ!」


 ちゃんとチョコレートに代わるプレゼントまで『もう渡していた』のも志保だったわけだ。


「わざわざ写真撮ってグループ作ったんだから、早く千秋にLINE送りなさいよね」

「七海さん気付くのかなぁ? あんまりそういうタイプに見えないけど⋯⋯」

「たぶん蒼太は一生気付かないタイプね。アイツ自分のことはてんでダメだから。でも、アキラ君はちゃんと分かってるはず」

「アキラさんが?」


「彼途中から千秋が蒼太のこと気にしてるの()()()()()からね」

「えっ嘘!? あっ──ねぇ志保ちゃんLINE来たっ」

「おっさすがアキラ君。なになにー?」


【──────────────】



 そう、さすがのアキラである。

 千秋の()()を読み切り蒼太にチョコを開けるよう促す。

 入っているのは当然読み通り『手作り』のチョコで。


「ってことは『本命』じゃん蒼太。やったな!」

「えっいやそんな⋯⋯俺とアキラのを間違えたんじゃないか?」

「ちゃんと箱見てみろよ。『To Souta』って書いてあるだろ」

「本当だ⋯⋯ってことは俺に? でもなんで──?」

「そりゃ『カッコ悪い人が好き』だからだろ」

「それのどこが当てはまって──」


 ──いや。

 思い当たる節がない、とは言えない。

 ならばあの『うふふふ──』は変に思われていたわけではなく。

 俺の行為を肯定的に捉えていてくれた、ということなのだろうか。


「じゃあこれ──本命ってことでいいのか?」

「千秋さんがそう言ってただろ」

「本命ってことは──()()()()()()でいいのか!?」

()()()()()()でいいと思うぜ」

「──────マジか。⋯⋯マジか!?」


 こうなったらいいのにと、夢みたいに漠然と考えたことはいくらでもあったが。

 本当に貰ってしまったら、実感がなさすぎてむしろ怖いくらいだけど、しかし。

 じわじわと胸の奥で喜びが溢れて来るのを感じる。


 え、てかヤバくね。

 綾乃さんとお付き合いですか!?

 ていうことは詰まるところによると!?


「はぁー⋯⋯へぇー⋯⋯」

「考えすぎて思考停止してんぞ蒼太。ちゃんとルーラで帰って来い」

「あーパルプンテパルプンテ」

「それは俺の近くで使わないでくれ!」


「おう──アキラのツッコミで帰って来たわ。けどなんで俺のチョコレートが手作りだって分かったんだ?」

「そりゃ千秋さんの態度を見てだろ。『手作りが重くないか』、あれは明らかに俺じゃなく蒼太に聞いてた」

「えーマジ? よく分かるよなぁ本当」


─「⋯⋯七海さんも?」─


 あの質問が蒼太に飛んだ瞬間。


 全てを察した完璧超人は、千秋のサポートに回るべく。

 多少不自然ではあったが、『蒼太の彼女』についての話を振り。

 最後の『タイプの人』もそのまま千秋へ流し。

 お会計でも『蒼太が千秋の分出せよ』という意味で()だと言った。


「長年の戦いの甲斐あってか、そこら辺には敏感でな」

「あー⋯⋯──お疲れ様です」


「それより蒼太、志保さんからの()()()()()気付いてる?」

「志保からのプレゼント? そういえば、『もう渡してる』とか言ってやつか?」

「そうそれ。写真貼ったグループLINE、入ってるの誰?」

「そりゃ俺とアキラ、志保と──()()()()!?」


「やっぱり気付いてなかったのか。だから()()()()んだぞ蒼太」

「えっお前まで言う!? ていうか綾乃さんのLINEあるくね!?」

「落ち着け蒼太。んで折角本命貰ったんだからLINEしてみろよ」

「おっおう、そうだな⋯⋯」


 震える指で文字を打つ蒼太。

 その横で、志保から本命だと名言されつつチョコを受け取ったこの男。

 たしかにあのグループLINEは、蒼太に千秋のLINEを教えるためのものだが。


「志保さんちゃっかり俺のLINEもゲットしてるんだよなぁ」


 その抜け目のなさに、さすがのアキラも関心しつつ。


─「カッコイイ人にはそれだけの理由があるの」─


 君がカッコイイのは内面が素晴らしいからだよ、というメッセージを思い出して。


「志保さんなら、アリかもね」

「なに独り言言ってんだよアキラ。それより文章これでいいかな!?」

「なんでもいいだろ。とりあえずチョコのお礼は言っとけよー」

「お、送ります!」


【本日は誠にありがとうございました。いただいたチョコレートは大切に食べさせていただきます。】


「いや店員かよ!!」

「なんでもいいって言ったじゃんか!!」

「いや言ったけどさ⋯⋯じゃあその後にデートのお誘いも入れとけ!」

「デデデデデ、デート!?」


「あー俺の言い方が悪かった。二人とも映画好きなんだろ? だったら映画見に行きましょうでいい」

「お、おう。映画だったらまぁ、大丈夫そうだ」

「何に対して大丈夫なんだよ⋯⋯早く送れって」

「お、お、送ります!」


【もし良かったら、今度映画見に行きませんか】


「断られたりしねぇか⋯⋯?」

「あの話の感じからして絶対大丈夫だよ」

「だといいんだけど⋯⋯うおっ返信来た!」

「さてなになにー?」


【是非行きたいですっ。()()()()()なんてどうでしょう?】


「「お返し考えねぇとだな────」」


─ハッピーバレンタイン!!─

バレンタイン企画作完結です!


この結末、皆さんは読めましたか?

それぞれの思惑によるクロスしたコンビネーションは楽しんでいただけたでしょうか。

上手く『勘違い』していてくれたら嬉しいです。


自分はまだこの『小説家になろう』に投稿したての新人ですので、評価やコメントなどいただけたら励みになります。


ではまた、他の作品でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 大人になっても青春はできる! そんなことを読んでいて思いました! 大人だって社会人だって。ああ、 バレンタインデーチョコ欲しかった。。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ