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そのいち お兄ちゃん死す!

気分転換にこんなん書いてみました。


以前言ってた短編の一つなので

そんな長くは続かないと思います。






「わたち! おっきくなったら、おにいちゃんのおよめさんになる!」




あれから……10年余り……


私は15歳に、お兄ちゃんは17歳になっていた。


今年からは晴れて女子高生。


いや、それよりも――


そう! 遂に結婚できる歳に、なるのだ!


お兄ちゃんもその時は18才。


つまりお互い準備おっけーなのだ!


……え? 兄妹じゃないのかって?


ちっちっち!


確かに私達はひとつ屋根の下で幼い頃からずっと一緒に暮らしている。

戸籍上も兄と妹で間違いはない。


だけど、私は知っている。


皆、私は知らないだろうと

……いや、覚えていないだろうとタカをくくっているみたいだけれど

私たちの今の両親が再婚同士だったってことは……

幼いながらも私はちゃんと、しっかりと覚えていたのだ!


つまり、合法的に結婚は可能なのだよ。 うっしっし!






そう思っていた時期が、私にもありました。






どうしてこうなった!?







◇◆







「実は……ね、彩芽あやめに話しておきたいことが、あるの」


夜の、シンと静まり返った病院の待合室で、

虚ろな目で呆然とうなだれていた私に……

母が、唐突に話を切り出し始めた。


「…………いい、聞きたくない」


そんなのもう、言われなくてもとっくに知っている。

お兄ちゃんと私は、実の兄妹じゃないってことでしょう?


今更、そんなことを聞かせて

私のショックを和らげようとでもしているの?


もし今、その事実を私が知らなかったとしたら

もっともっとショックを受けてるよ!


実の兄妹の方が、まだ少しはマシだったよ!

だって! 私はお兄ちゃんのこと……


「兄ちゃんは、確かに死んだ……」


「嫌っ! そんな話、聞きたくないよっ!」


「死んだんだ……けど、ね……」


「知ってるよっ! お兄は、あたしのお兄じゃないってことでしょう?」


「――!! 知ってたのかい? …………いや、うん、まあ、そうなんだけど……」


「今はそんなことどうだっていいでしょう? お兄が死んだんだよ!?

お母さんにとっては実の息子で、実の母親でしょう!?」


「……いや、それが…………違うのよ……」


「だったらっ! …………って、

……………………へ?」


母が何を言いたいのか、ちょとわからなくなった。


「まず、そもそもの前提が……違うの」


「? ……もしかして、お母さんと、お兄は……他人……なの?」


ありえない話ではない。

現に私たち兄妹も親が再婚同士での血のつながりの無い他人なのだ。

お母さんは、実は再々婚で、お兄も連れ子だったとかでも不思議ではない。


しかし、その考えは即座に否定される。

母は目を瞑り、静かに首を振った。


「ううん、そうじゃなくて……ね」


「……? ……?」


「…………パパ、なの……」



「……………………は?」



もはや、何を言ってるのか理解不能になった。

私の頭をオーバーヒートさせて、逆に落ち着かせようとしてるのだろうか?


「だからね、私は、あの子の、パパだったの!」



ええぇーーーーーっ!?



……え、なにそれ?

つまり、お兄ちゃんのママは実はパパで

ウチのパパとお兄ちゃんのパパが再婚した!?

……え? …………えっ??



ぷしゅー……



流石に、本当に頭がオーバーヒートした。


「…………」


呆然と、アホの子のように目の焦点が定まらなくなった私に

更に話しかける元お兄ちゃんのパパだったママ。


「あ、あやめちゃん? か、勘違いしないでよねっ!」


いや、もはや何をどう勘違いしていいかも分かんなくなってるんだけど!

そんなツンデレ口調で言われても正直、困る!


「ママは、れっきとした女よ!」


「…………えーと……?」


それは、戸籍上での話?

それとも、外見上での話?


そういう人が、世間に一定の割合で存在してるのは

今までメディアや噂で見聞きして知ってはいたんだけれど……

いざ、目の前に、しかも実際の家族がそうだと聞かされたら……


本当は、ちゃんと理解してあげないといけないんだろうけど、

今の状況が状況で、私の頭はとっくの昔にパンク状態で……

もう母を、普通の人として見れなくなっていた私が、そこにいた。


「……ち、違うの! だからねっ!」



「手術は、無事終わりましたよ音小野おとこのさん」



「!?」


いきなり現れたのは、この病院の院長先生だった。

どういうわけか、ウチの家族はいつもこの病院にだけ世話になっていた。


だいたい何でも診てくれるマルチ病院ではあるのだけれど

言っちゃったら悪いが結局の所、単なる町医者である。

そんな病院を徹底的に一件だけに絞って診てもらう

なんてことは普通あまり無いように思う


そもそもここは救急病院でもないのだ。


なのに、お兄ちゃんが事故に遭うと、即座にここに連絡を取り

夜間なのに無理矢理に先生を叩き起こし、

診てもらうという鬼畜な所業を敢行していたのだっだ。


こんな時くらい救急車を呼び、ちゃんとした設備や体制が整った所で

診て貰った方が少しでも可能性があったんじゃないか?

と思わなくもなかったが……




――――って、え? 今、なんてった!? 




……手術!? 無事、終わった!?



「い、伊吹いぶきは、伊吹は無事ですか!?」


ちなみに、伊吹というのはお兄ちゃんの名前だ。


「はい、無事に生まれました。 凄く可愛いですよ

会ってあげてください」


「あ、ありがとうございます! 先生!」


……は? …………は!?


う、生まれた? かわいい?


なんか先生、患者さんを間違ってない?

でも今ここには私たちしかいないよね?

そもそもここって産婦人科だったっけ?


「い、言ってる意味はよくわからないですけど、

つまり、お兄は生きてるってこと、ですよねっ!?」


「……ああ……もしかして、彩芽ちゃんは、このことを?」


「い、今から話そうとしていまして……あ! あやめっ!」


だっ! と、私は猛ダッシュで病室に飛び込んでいった。


「お兄っ!」


「…………ん、んん……あー…………あやめ、か……? あ? あー?」


「…………お、おにいちゃ……お兄は…………どこ?」


「いや、ここだって! ってあれ? 

なんか……おかしいな? ……うっ! あたまが!」


そこに、お兄の姿は無かった。


代わりに、まだ中学生にもなるかならないかくらいの、

いやむしろ小学生高学年くらいの?

ちっこくてとっても可愛らしい見知らぬ女の子がベッドで寝ていたのだった。



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