side:サイン
俺の名前はサイン・スーカン。
白い髪に緑の目で、よく人懐っこそうと言われる。全然そんなことないんだけどな。ただにこにこしてたら敵は作らないから、よく笑ってる。
……おかげで舐められることも多いけどね。
……ああ、俺?一人称が違うって?
十一才の人畜無害な子どもを演じるには、俺より僕の方が効果的でしょ?その方が警戒心も解かれるしね。
それはそれとして、俺には大好きなことがある。
勉強だ。
学院が廃止されて数百年。俺たちはなかなか学問を受けられない世界にいるけれど、幸いスーカン家は『数学』という古代の魔法の習得を義務付けられていた。
こう言うと絶対変人って言われるんだけど、俺は数学を学ぶのが好きだ。数式と呼ばれるものを変幻自在に操って魔法を産み出すんだよ?
かっこよくない?
そんな俺だけど、いわゆる幼馴染みと言う関係の人に、シータ・シスーと言う女の子がいる。
青い目に青い髪。
シータは、俺と同じように、『数学』の習得を義務付けられていた。
同志だ!と思ったし、会ったら声にも出してしまった。しかもシスー家は古代書に書かれている模様の装飾がたくさんある。
ここに住みたいと思ったよ。
居候だめかな?
……うん、だめだよね……。
わかってる、言ってみただけ。
ところで、この女の子……シータなんだけど、この子の読んでいる古代書はちょっと俺と違うみたいだった。
似てるんだけど……書かれている内容が違うんだ。
不思議だよね。それに、付き合っていくうちにわかったんだけど、シータは数学があまり好きじゃないみたいだった。
もったいない。
せっかく勉強できるのに、抜け出しちゃうなんて。だったら俺にくれれば良いのに。
正直シータはずるいと思う。なんでこんな子がシスー家なんだろう。嫌なら、他の誰かにシスー家を譲りなよ。
もちろん顔にも声にも出さないけどね。
だから、目の前で震えている女の子を見たとき、「ああやっぱりな」って思ったんだ。
この子は守る対象なんだなって。
一緒に数学を使うことは無理なんだろうなって。
俺はシータを慰めながら、とても冷めた目をしていたと思う。心配げな表情は得意だけど、どうにも目は操れない。それをごまかすために密着した。
シータは顔を赤くするでもなかったけれど、惚れられたらそれはそれで面倒なのでこれで良い。自惚れてると思われそうだけど、俺はそれなりに顔が整ってるからね。
ま、それはシータもだ。少しきつい印象があるけれど、将来はきっと美女になるよ。
妹のラジアとは正反対の作りだよね。あっちは美女よりかわいくなると思うな。
ああ、何が言いたいのかわからないって?
特に言いたいことはないけど……そうだな、俺はシータに対してこう思ってるんだ。
『ずるい女だな』
本当は腹が黒いサイン
実はまだデレ成分0%でした