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夢のその先へ  作者: zzz
【日常の章】
18/23

第17日 私の新しい日常 その一

 



 ――天へ、空へと伸ばした見事な枝葉は太陽の恵みを受けて陽の中で青々しく輝く……。


 遥か昔からその地に根付き、長い時の中を人の営みを眺め、巡る季節を感じていた大樹は気持ちの良い風にその身を晒し静かに佇んでいた。



 平和な時代も、激動の時代も、ただあるがままに見つめ過ぎ行く時の流れに身を任せ幾年月。



 暖かい日差しに柔らかな木漏れ日を作りながら、その大樹は新しい隣人の姿を優しく見守っていた……。


















「――ハンカチ良し、ちり紙良し、薬は……ある。手紙も、一、二、三……うん!全部ある。忘れ物は無し!」



 手に持った鞄の中身を確認して頷く。



 柔らかな陽の光で照らされた店の中は穏やかな時間が流れていた。


 少し前までは何もなく、空の棚ばかりで埃すら薄っすらと積もり寂しかった店内は綺麗に掃き清められて少しずつ商品が並び、落ち着いた色合いの布で彩られていた。


 遮る物の無かった窓にはレースのカーテンが掛けられ、重厚感があるせいで重苦しい威圧感のあったカウンターには細々とした筆記用具や可愛らしい雑貨が並んでいた。


 寂れた空気が漂っていた店内は店としてのあるべき姿を取り戻しつつあった。


 そんな店内のカウンターでアイビーは昨日の内に準備していた荷物の確認をして満足気に一人頷く。



「それじゃあ、行こうか!」


「にゃー」



 窓際の椅子で日向ぼっこしていた相棒に声を掛ければ精霊獣であるセシルは猫の姿で足元に駆け寄ってきた。


 今日の装いは動きやすい明るい色の花柄ワンピースに焦げ茶のコルセットベルト。足元は履きなれたお気に入りの赤茶色の編み上げブーツ。

 アップに纏めた髪を飾る髪飾りは先日幼馴染がくれた宝物。


 薬師の証であるカードを大事にポケットに仕舞い込み、真新しいペンダントを一度握り締めてアイビーは柔らかい笑みを浮かべる。



「いってきまーす!」



 誰もいない家に声を上げ外に飛び出す。


 空は快晴。



 きらり、胸元で光る紺碧の宝石を弾ませてアイビーは街へと歩き出した。






 *



 店がある路地から大通りに出ればそこは物々しい出で立ちの冒険者でごったがいしていた。


 アイビーが店を構える南地区は建国以前より存在する迷宮がある為、それを目的として多くの冒険者が拠点を置いていた。

 それに合わせて南地区には武器や防具を販売する鍛冶屋や傷薬などを販売する薬屋が軒を連ねている。



 通りの奥、迷宮近くの一際大きな建物は冒険者達を束ねる冒険者ギルドだと聞いたのでそれを一先ず目印にアイビーは手持ちの地図を広げた。


 大通りの広場で屋台から買った軽食に囓りつつ、広げた地図は幼馴染であるロイドから勧められた物で、観光用のそれは大まかな目印と大通り、小道まで網羅したものだった。


 見やすく、分かりやすい。それを完璧におさえた地図は流石幼馴染と賞賛の声を上げる。



「えーと、ここが迷宮通りで、あれが冒険者ギルドだから……こっちね」



 薄く焼いたパンに肉を挟んだ軽食はペロリとアイビーの腹に収まった。

 今日の目的は協会に開店許可を取りに行く事とアイビーが継いだ店の顧客――シャルルの患者だった人達に挨拶と薬を届けに行く事だった。


 ガルシア王国の王都は王城を中心とし、王城から円を描くように、貴族の屋敷や主要施設が立ち並ぶ中央区。そしてそれぞれ東西南北に地区が分かれている。


 他の区と中央区の間には塀が築かれ身分証が無ければ入る事は出来ない。

 今日は中央区には行かないので必要無いがいつかの為にその身分証の事も協会で聞こうと脳内メモに刻む。



「さっ!先ずは協会に行こうか」


「にゃ」


 足元で座っていたセシルに声を掛けてアイビーは中央区へと足を向けた。







 *




 ガルシア王国王都支部の協会は中央区と南地区の中間辺りにあった。


 大通りを北に上れば中央区を区切る塀の手前に一際大きな大樹を囲うように協会の建物が存在する。



 ひと目見ただけでそうと分かる薬師の証、六花弁の水花と柄杓が描かれた旗と、医師の証、水花と鋏が描かれた旗の二つが堂々と掲げられ風にはためいていた。


 医師と薬師の相互介助組織である協会は様々な仕事を請け負っている。


 女神ルーデルトルワ教会とは似て非なる組織は素質のある者の育成、統括、医師や薬師免許の試験と免許証の発行など医療関係に関して全てを司っていた。

 女神ルーデルトルワ教会が優秀な医師薬師を抱える閉鎖的な組織である分、協会は開放的な組織で医師薬師の依頼の斡旋、その補助や独り立ちし遍歴医として世界を巡る事は勿論、店を持つ事も推奨している。



 アイビーは気合を入れ直し協会の扉を潜った。

 協会の建物は全てが木造建てで作られており、一歩足を踏み入れただけで芳しい木の香りが身体を包み込んだ。


 まるで森の中に入り込んだかの様に錯覚するほど濃密な木の香りと草花の匂いは在りし日の故郷を思い出す。


 建物の中は入り口からすぐの所に案内所があり、その奥に横並びに大きなカウンターがあった。

 それぞれ番号を割り振られ、隣同士衝立で区切られ半個室となっていたが、その中はたった数組しかいなかった。



 アイビーは相変わらず閑散としているフロアを見て少し苦笑を浮かべた。


 先日、初めてガルシア王国の支部を訪れたのだが、余りの人の少なさに驚いたのを覚えている。


 遍歴医としてアイビーは色々な国を見て回った。

 勿論それぞれの国の王都支部にも足を運んだが、どこも協会支部は人で溢れていた。

 寧ろ余りの人の多さで辟易する程のもので、案内待ちだって行列が出来て数時間待ちはザラにあった。


 しかしガルシア王国の支部に来てみれば人は疎らで、用がある者よりも逆に協会の役人の方が多いくらいでその落差に動揺してしまった位だ。



 ロイドから内情は少し聞いていたが、まさかここまでとは思わなかった。



 それ程までに十五年前の開戦時に起きた大事件はガルシア王国に住まう医師や薬師を揺るがす物だったのだろう……。


 国は、国王は、決して今は無き聖地を守らなかった訳では無いと知っているアイビーだからこそ、逃げた彼らに怒りが湧くが……アイビー 一人がそれに憤っても何も変わりはしないのだ。


 幸い、アイビーに店を譲ってくれたシャルルや他の優秀な者達が少ない人数ではあったがこの地に残ってくれたからこそ、まだこの国は国としての体裁を取れており、女神ルーデルトルワ教会からも本当の意味で見放されてはいない。


 その助けになればなぁ、とアイビーはひとりごちた。




 そんな風にぼーっとしていたアイビーに一人の男性が声を掛ける。



「こんにちは。何かご用ですか?」


「あっ!すみません!」



 入り口でぼけっとしているアイビーは余程悪目立ちしていたのだろう。

 案内所にいた協会所属の制服の男性は訝しげな表情をしてアイビーを見つめていた。

 ハッと目の前の男性に目を向けるアイビーだが、遅まきながら自分に向ける幾つもの視線を感じ、何気なく周囲を見回せば他の協会の職員からも注目されていた。



「えぇっと、その、今日は開業手続きに来たんですけど……」



 怪しさに追い出されては、来た意味が無い。

 慌てて身分証のカードを取り出して今日の目的を口にすると男性は険しかった表情を一変、にこやかな笑顔を浮かべた。



「そうでしたか!カードをお預かりしますね。こちらにどうぞ」


「あ、はい」



 颯爽とアイビーをエスコートする男性の目は『逃さない』と言わんばかりにギラついていた。

 男性の剣幕に及び腰になるアイビーだが……それだけ人材不足に悩まされているのだろう。


 協会関係者は明確に言えば医師や薬師ではない。

 勿論、全く関係無い人間ではないが、その才能――所謂医師や薬師になる為の“聖力”を持たないが故に女神ルーデルトルワ教会から認められず、その将来を諦めた人達が作り上げたのが相互介助組織“協会”である。


 医師や薬師の元弟子だったり、その身内だったり、理由は事欠かないがそれでも知識はあってもその役職を名乗る事を禁じられた人々が少しでも力になればと作り上げた組織。それは閉鎖的な教会に虐げられてる彼らを知っているからこそ逃げ道になればと、助けになればと、そんな思いで協会は創られた。



「それでは、まずはカードの確認をさせて頂きます」


「あ、はい。お願いします」



 アイビーは促されるままに席に着いた。

 カウンターの空いていた席に案内され対面には先程の男性がそのまま座った。



 男性はカウンターの下からいくつかの書類を取り出し、アイビーに渡されたカードを検分する。


 手の平サイズの薄い金属で出来たカードには役職、出身国、名前、そして薬師又は医師としての階級が刻まれている。

 階級は見習いから始まり下級、中級、上級、特級の五つの階級に分かれていた。

 そしてその階級を示す印は女神ルーデルトルワがそれを用いて傷や病を癒やしたと言われる六花弁の水花が使用され、水花の花弁の数で階級を表していた。


 通常は最大でも五つの花弁しか刻まれないが、医薬師のカードはまた少し異なる。


 階級を示す水花は完璧な形で描かれ、その中央には医薬師の精霊獣によって創られた祝福の宝石が埋め込まれる。それが女神ルーデルトルワより癒やしを司る頂点に立つ事を認められた証だった。



 余談だが、関係者ならば一目瞭然の印だが、一般的には医薬師の証は余り知られていなかった。

 水花が描かれている時点で医師か薬師だというのは分かるが、その完璧な形の水花が何を示すのか、その本当の意味を知る者はそう多くは無い。

 その為、国境を守る番人たるガルシア王国の緑峰騎士団が医薬師の来訪を見逃したのも仕方ない事だった。

 ただでさえ滅多にお目にかかれない医薬師の印。


 特にガルシア王国は医薬師が訪れなくなって久しく、その証の意味を知っているのは騎士団の中でも上の立場か、年配の人間だけだった……。





「っ!すみません、宜しければ場所を移しても?」


「え?はい、別に構いませんけど」



 アイビーのカードを確認した男性は階級を示す水花に目を止め驚きに目を見開き息を飲んだ。


 己の目を疑うように何回も瞬きをしてもその目の前のカードに変化はない。

 カードは女神ルーデルトルワ教会が保持する独自の魔法によって作られており、偽装は出来ない。それを知っているが、男性はカードが示す証に俄には信じれない気持ちだった。



 しかし本当ならば、こうしてはいられない。と慌ててカウンターの席から立ち上がり、アイビーを促す。


 それに疑問符を浮かべながらもアイビーは大人しく男性の後を付いていく。

 男性が向かったのはフロアの端にある階段。

 いきなり二階に上がる事に少し不安を抱きつつもアイビーは丁寧過ぎる先導にされるがままに二階にある部屋へと足を踏み入れた。









「突然失礼致しました」


「いえ、大丈夫です」



 二階の部屋は豪華な調度品や絵画等が品良く飾られ、落ち着いた内装になっていた。

 ひと目で高価な物だろうと分かる黒革張りのソファーに腰を下ろしながらもアイビーは警戒を一段階強めた。



 アイビーのカードは女神ルーデルトルワ教会から許可を貰い医薬師になる前の物を使っている。


 医薬師だとバレていない筈なのに、ここまで丁寧に扱われる意味が分からない。


 アイビーとしては王都支部の協会が信頼に足るものであるならば本当の身分を教えても良かった。

 しかしこの支部に来たのはシャルルの店の場所を聞きに来た時と今日の二回だけ。


 王都は権力や己の私利私欲しか考えない欲流者が多い。協会の上層部がそうでないと思いたいが、護衛役がいないアイビーにとって、己の立場の危うさは理解していた。

 ロイドと再会したあの日、隠れて尾行してきた仲間達を責めるように理由を尋ねた彼の心配も無理は無かった。アイビーは彼等がロイドの知り合いだと分かっていたからこそ笑って彼の心配を吹き飛ばしたが、あの時はロイドがいたからそうしただけで、今アイビーは一人。

 護衛役のセシルは動物を連れている事に変な勘繰りをされたくなくて建物の外で待ってもらっている。




 警戒は神経質な程に。



 それが様々な国々を周り歩いたアイビーが心に刻んでいる教訓だった。


 自分を守る為に、自分を大事に思ってくれる大切な人達を守る為に。




 しかしアイビーはそんな警戒を悟られぬように心持ち表情を和らげる。

 表情を取り繕うのは慣れている。

 正直慣れたくはなかったが、それでも必要ならば腹芸でもなんでも熟さなければならなかった。



「それで、私のカードに何かありましたか?」



 もてなしの用意をされテーブルには美味しそうな紅茶や茶菓子が置かれていた。

 それを飲む振りをしつつアイビーは目の前の男性に尋ねる。


 自分よりも遥かに歳上だろう男性は恐縮した様子でアイビーにカードを返却した。




「いえ、カードには何もおかしい所はありません。ですが、失礼を重ねて大変申し訳ありませんが、ダノン様はこの国に来てどれくらいでしょうか?」


「……大体五日、ぐらいでしょうか」



 質問の意図が分からず首を傾げる。

 何故自分がこの国に来たばかりだと知っている風に尋ねるのか。

 それも合わせて疑問符が浮かぶ。




「やはり、そうですか……ならばこの国の現状をご存知ではないのですね」



 現状、とは一体どういう意味なのだろう?


 ロイドからこの国――ガルシア王国における医師薬師の少なさは聞いている。その理由もまた然り。


 しかしそれだけではなさそうな男性の様子にアイビーは鋭くなりそうな目を丸くし、少し眉を下げながら不安そうな表情を浮かべた。




「どういう意味でしょうか?それと失礼ですが、貴方は?」


「あ、大変失礼致しました。私はこのガルシア王国王都支部を預からせて頂いております支部長のヒース・ダナウェイと申します」


「まぁ!支部長殿でしたか、こちらこそ大変失礼を致しました。私は薬師のアイビー・ダノンと申します。以後お見知りおきを」


「こちらこそ」



 案内所にいた男性がまさか支部の長だとは……アイビーはその意味を考えながら殊更驚きの表情を浮かべて慌てて立ち上がり丁寧に頭を下げた。




「それで……何か御座いましたでしょうか?カードに不具合は無かったとの事でしたが、ただの薬師であります私がこのような場に……」



 互いに自己紹介も終わり促されて再びソファーに腰を下ろし早速疑問を口にする。

 カードには医薬師になる前の特級薬師の証である五つの花弁の水花と中級医師の三片の水花が描かれている筈。


 薬師や医師は通常、その頂点である医薬師を目指し研鑽を重ねる。

 専攻は人それぞれではあるが、カードには薬師、医師の階級どちらも刻まれるのが普通だ。

 そしてそれぞれの試験をクリアし階級が上がり、どちらも特級の免許を取り、精霊獣と契約を成して最終試験を潜り抜けた者のみ医薬師の称号を賜る事が出来る。


 その為、医師としての階級と薬師としての階級、その差はあるがどちらも刻まれているのは何らおかしくは無い。

 それに加えてアイビーのようにどちらかの役職階級が偏った形で刻まれているのも普通の事だった。

 ……決して支部長自ら応対するものでも、別室に移動させられるものでも無い。



 他の国の支部では普通に受付で済ませられる身分にも関わらずこの高待遇にアイビーは心底不思議だった。




「それにはまず我が国の現状をお話しなければなりません。誠にお恥ずかしい事ではありますが我が国には特級薬師の方はとても珍しいのです」


「それは……」


「“あの大戦”以降、特級、もしくは上級薬師の方の殆どがこの国をお立ちになりました。現在我が国に残って下さった特級薬師は一人、上級は片手で足りる程の人数なのです」



 支部長であるヒースの言葉にアイビーは素で絶句する。


 ガルシア王国は女神が降臨したと言われる聖地を有する国だ。

 戦争の煽りに聖地は無くなってしまったが、戦前は特級も、上級も医師や薬師はそれこそ数えるのが面倒臭いくらい数多くいた。

 それが今や片手で数える程とは……。



「現在、ガルシア王国に居を構え店を持つ者の大半は中級の方々のみです。本来ならば店の開店許可は上級からが規定となっておりますが、殆どの医師薬師が国を離れた為、特例として階級を下げたのが現状です。そして……この国に残って下さった上級の方々のその殆どが……欲流者なのです」


「それは……」


「勿論、全てとは言いません。この国を憂い、支える為に残って下さった女神ルーデルトルワの敬虔な信者の方もいらっしゃいますが、残念な事にお年を召して引退なされる方が多く、我が国唯一の特級の方も先日正式に引退なされる事になりました」



 ヒースが告げる国の内情に言葉が出ない。


 ロイドが教えてくれた情報とシャルルが愚痴混じりに告げた言葉が脳裏に蘇る。


 シャルルは言っていた。

 自分の店を引き継ごうとした者は皆、己の為に薬を売り、貴族に擦り寄ろうとする者だと。


 その者達がヒースが言った欲流者たちなのだろう。



 その時のアイビーの心はとても色んな感情が吹き荒れ、荒ぶっていた。


 その時、その場に居られなかった悔しさ、己の欲望を優先する者達に対する怒りと悲しみ。

 そして何よりも心に強く感じたのはこの国の現状に心を痛めているだろう“あの人”を憂う気持ちだった。


 アイビーが医薬師を目指す事になった原点。

 ただ曖昧に思い描いていた夢を確固たるものにした人――


 特別な生まれであり、特別な立場に立つアイビーが唯一膝を折り、頭を垂れ、敬愛する己の主君と定めた人。


 その人の為にロイドと共に夢を掲げ、邁進してきた。



 ロイドが側にいるが、今あの人はどうしているのか。



 そんな思いを馳せるが、今は目の前の問題をどうにかしなければとアイビーはその思いを振り払った。




 ヒースは対面に座するアイビーを見つめ、改めてその若さに驚きを隠せなかった。


 チョコレートブラウンの艷やかな髪と蜂蜜の様に濃密な黄金色の瞳。肌のハリも瑞々しく、見た目からその歳は十代の後半頃だと予想する。


 しかも言ってはなんだか、地味めな色彩なのにも関わらずつい目を惹くその容姿。

 先程までは気にするものでも無かったが、いざ対面で目の前にいるとより感じた。


 万人の目を惹きつける華やかな美しさとは反対の静かな美しさは凛とした立ち姿と相まってついつい目を向けてしまう。


 まだ少女とも言える年齢の女性にはとても言いづらいがヒースはこれから彼女が受けるだろう問題を考え腹を括った。




「……正直カードを確認させて頂いた時、とても驚きました。こんなお若い方が特級薬師の方だとは思わず、失礼な態度を取りましたこと深くお詫び致します」


「そんな……お気になさらないで下さい。私はたまたま師に恵まれました。その師のお陰で、今の私が居りますので」


「そうですか……」


「?」



 ふと目を伏せ陰る表情にアイビーは疑問符を浮かべた。

 今の言葉のどこにヒースが暗い表情を浮かべる原因になったのか分からず首を傾げた。


 しかしヒースは何かを振り払うように少し頭を振ると改めて顔を上げアイビーと目を合わせる。



 ――そうして告げられた言葉はアイビーに怒りの火種を抱かせるには十分なものだった。


















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