第0日 私と俺の約束の日
――風が木々を揺らして吹き抜ける。
さわり、さわり、木の葉が囁き穏やかな陽だまりの中、人気の無い花畑で笑い合うのは二人の子供。
『約束――あなたの夢はわたしの夢よ』
『分かった。おれの夢はお前の夢、そして――お前の夢もおれの夢だ』
『『だから、一人で諦めるのは許さない』』
約束。と互いに絡めた小さな小指。
クスクスと二人だけの世界で満ちる笑い声は優しく世界に響いた。
『忘れないで、わたしの願いを』
『忘れるな、おれの願いを』
互いのおでこに優しく落とす口付け。
こつりと合わせた互いの額。
陽だまりの中でも感じる互いの温もり。
『約束だからな?』
『約束だからね?』
それが二人の別れの言葉だった。
――少女は故郷を離れ、辛く険しい旅に出た。
幼い手を師と仰いだ男に引かれて……。
旅のお供は両親の形見の耳飾りと少ない荷物。
そして幼馴染の少年と交わした約束。
――少年は辛く厳しい鍛錬に励んだ。
夢を語るその言葉を違えることが無いように。
学べるものは貪欲に、知識を、技を、生き残る為には何でもした。
彼の心を支えたのは両親の形見の耳飾りと少女との約束。
やがて、時は流れ――約十五年の月日が経った。