ー 夢幻の回路 ー
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「ここからは君だけで進んで」
急に案内屋は立ち止まる。
目の前は薄暗くて、夢の中だと分かっていても一人で歩くのには少し抵抗がある。
「え、でも……」
「大丈夫、怖いものはないよ。ただこの道を真っ直ぐ行った先にあるドアを開けるだけ、ね?」
夢の中の暗闇って現実のよりも暗くて怖い。
でも彼女の声と笑顔は、そんな暗闇に灯るランプのように優しくて明るかった。
彼女の手を握る力が強くなる。
「……わかった、ありがとう。 えっと……」
「ん? ああ、僕は案内屋だよ」
「そう。 ありがとう案内屋」
私は彼女から手を離した途端走り出した。 その温もりが消えぬ内に、そこへ辿り着くために。
「……案内屋は色んな所へ案内するよ☆」
彼女が何かを呟いたが、振り返ることはしなかった。
夢だからか、走っても息切れがない。運動神経が悪い私でも夢の中では早く走れる。
ギィ……
大きな扉が、私がそこに辿り着く前に独りでに開いた。
──明かりだ!
私は走り抜けた。
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その先にあったのは、いくつもの扉。
気がつくと先程入ってきたドアが消え、360°ぐるっと私の周りにドアがある。
そのドアの上に、本や時計などのイラストみたいなものが彫刻されている。