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<3>-4

 エリィと遙佳の二人と別れ、トイレから出た谷原真結良は、

 綺麗にセットされた髪を撫でつつ、上機嫌で学科エリアの廊下を歩く。

 幾人かの生徒とすれ違うたび、好奇を含んだ視線を受ける。

 ――ねえ、あの人、谷原って人?

 ――異形倒したとかいう? 本当なのかな?

 ――例の問題の班に入ったのは知ってるけど。

 ――メンバーと一緒にいるところ見たことがあるから、それに関しては本当だと思うよ。

 ――へぇ。意外……何考えてるんだか。

 笑い合う中に、嘲笑じみた会話が聞こえてくる。

 自分の選んだ道は、間違いでないと胸を張って豪語できる――まあ、偉そうに主張することでもないが。噂になるなら、噂に任せるままで良い。自分に必要なのは、他者からの高い評価でもなく、好感を持たれるような立ち振る舞いをすることによって得られるイメージでもない。

 欲しいのは強さ。異形と対等に渡り合うことの出来る強さと、誰かを守る事のできる本物の実力だ。


「受け入れられないとは思っていたものの……やはり幸先は明るくないか」


 班に入ったからには、できるだけ強調性は持っていきたいし、仲間とも親しくなりたいという思いがある。少なくとも蔵風遙佳とエリィ・オルタとはやっていけそうだ。

 残りは四人。市ノ瀬、間宮、稲弓、荒屋。彼らに関してはそう簡単には心を開いてはくれないだろう。


「班にいる限りは、私が率先してコンタクトしてゆくしか、ないか」


 そもそも、彼らとの接点は『一年生』を除けば限りなくゼロに近い。彼らはお互いがディセンバーズチルドレンだという理由で、友人関係以上に特別なシンパシーを持っているのだろう。

 どんなに頑張っても、その接点に食い込むことはできない……。

 いつぞや――歓迎会を開いてくれたことがあったが、全く会話が弾まなかった。

 自分自身、士官学校にいた頃の人間関係は非常にドライで、同期は居ても親密な友人というものはいなかった。


「うーむ……」


 歩き、腕を組みながら、ついつい唸りこむ真結良。

 面白い会話なんかできないし、流行なぞ無知。自分が他人に好かれる性格ではないことなど、自分が一番良くわかっている。いいところなし。



 ――結論から言うと、私は友達を作るには適任ではない人間、ということだろうか?



 辿り着いた思考の終点に、思わず虚しさが心の中を駆け巡る。

 …………いっそのこと。誰かに、聞いてみるか。蔵風とか?

 口元が気持ちに反して、笑いへと変わりそうになり、慌てて片手で隠す。


「――ハゥ」


 公然の廊下で一人笑いなど、流石にマズい。

 面白いからではなく、あまりにも滑稽な発想がゆえ。

 友達の作り方を、他人に聞くとは――そこまでだったか私。もし違っていたとしても、思考してしまった時点で……いかがなものだろうか。人間関係を重要視せず、ただひたすらに鍛錬を積み重ねてきた結果がコレか。馴れ合いなど不必要であると排除し、役に立たないと思い込んでいた反動は、中々に手痛いしっぺ返しだった。



 廊下は途切れ、開けた空間に出る。

 ベンチと机が設けられていて、各々の生徒が雑談や読書などをして自分の時間を過ごしていた。

 特に当てもなく歩いていたので、空いている席に座り『今後の友好的な友人関係(プラン)』を、どう組み立ててゆこうかと思っていたところ。


「……………………」


 数ある生徒達の中で、ちょっとした違和感を発見した。

 六人組み――いや、正確には『五対一』と言った方が正しいか。

 風貌の悪い男子三人と、やたらスカート丈の短い女子二人。

 それらに囲まれ、潰れた粘土みたいに背を丸め、何もない地面を一点に凝視する男子が一人。

 男子二人に挟まれ、彼らはその場を移動し始めた。

 友達を作るのは得意ではないが、最低限人を見分けるだけの観察眼は持ち合わせているつもりだ。

 ――あの六人はこれから(ろく)でもない状況を作り上げる。

 ()()(おく)(そく)ではあるものの、自分の中にある第六感が信号を発していた。

 ぐずぐず一団を視線で見送っていたら、

 自分が座ろうと思っていた場所に、他のグループが陣取ってしまった。


「……プランか、トラブルか」


 口に出して見たものの、比べるべくもない。

 ――コレも、一つのきっかけとして受け入れ、

 真結良は、すでに消えてしまった彼らの後を追いかけた。


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