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<13>-3

 ――誰もが勝利を確信していただけに、衝撃は大きい。

 倒れ込んだ異形は、荒い呼吸をくり返し、のっそりと起き上がる。

 ズタズタに切り裂かれた足をかばうため、背中の両腕を足代わりにして。

 溢れ流れる血が、ばふを紫色に染める……。

 動きが止まった地上三人。

 誰よりも先に、判断し指示を送ったのは絵里だった。


『――――まさか、魔術障壁(・・・・)だと!? チっ……あのたいでッ! 全員後退! 敵は魔術を使用する。距離を取ってッ! 体勢を立て直せ!』



 限定された魔術を使用できるのは、固有刻印を持った人間だけだ。

 そして――魔術を使えるのは人間だけではない。

 魔術の源である魔力は、向こう側の世界に存在する要素。

 ――もともと魔術とは、奴らの力(・・・・)なのだから。



「おいおいおい、猿みたいに突っ込んでくるだけの奴かと思いきや、普通に魔術使えるじゃねえかよ」


「………………障壁か。異形で言えばうえくらいに属するレベルだな。知識を持たないだけまだマシな方か……あれは実弾共々、物理攻撃はほとんど届かない。先に障壁を砕かなければ」


『少なくとも、食い散らかした人間から魔力の供給は行っているけど微々たるもの。持久戦に持ち込めば勝手に消耗して勝てると思うけど――得策とは言えないわね』


『い、今の銃弾じゃ、障壁は貫通できない。でも、あの障壁さえ取り除いてくれれば……わたし、――やれるよ』


 思わぬ隠し球を展開した異形に、かすかなあせりが全員から生まれた。




「お、やっとるやっとるー」

 一階校舎の窓から中庭を確認するエリィはうれしそうに言った。


「……………………」


 改めて光のもとさらされた異形を見た真結良は、その異質な形状に思わず、ロッカーから持ち出していた刀を強く握った。

 窓の向こうで、異形と対峙する間宮十河と荒屋誠。

 その少し後方では蔵風遙佳がライフルを構えて制止していた。

 全身を傷つけられてもなお、強靱な生命力で立ち上がる異形からは、

 オレンジ色の発光体が何枚も現れ、鱗のように表面を覆っていた。


「くー。魔術障壁かぁ。ありゃあ物理攻撃が通らんな……よくもまあズタボロの状態であれだけのもん展開できるのぉ」


「だが魔術的ななものに対してこそ、魔術兵器が有効なんじゃ……」


「あの武器ね……確かに人類にとっちゃ画期的なものだろう。しかし、われが見た感じ、あの魔術兵器は自らの武器に物理的な強度や威力を補強させるないてきな魔術が組み込んであるというだけで、刃や弾丸に魔力を練り合わせるだとか、対象の魔術を打ち破ったり干渉したりできるがいてき魔術の武器ではないと思うんだよなぁ……マユランが言っている魔術兵器ってのは、中でも特別製(オーダーメイド)のものだろうな、士官学校にだったらいくらでも置いてあるんだろうが、スタンダードな武器ってのは大体あんなもんだろうよ」


「すると……魔術には魔術を…………『固有刻印』か」


「そのとおり。あの防壁をなんとかできるのはそれくらいじゃろうな」


「でも、授業でもまともに魔力の制御ができないでいた。……刻印の扱い方なんか知らないはずなのでは……」


「別に自転車に乗るための勉強会に参加しなくても、元々乗ることが出来てたら、自転車は乗れるだろう? 知ってるか知っていないかの違いだけで、できるかできないかには直結せんもんだ。それに刻印訓練なんて誰が定めたのかも解らん基礎なんか、出来る人間にとってはわずらわしい以外の何者でもない。アイツらは勝手に学習して使えるようになってるんだからなぁ…………ちなみにわれは自転車に乗れん。絶賛練習中だぞ?」


「人には得手不得手があるものだ…………私も乗れない」


「お! 初めてマユランと意見が合った気がする。うれしいものじゃ。機会があったら今度、いっしょに練習しようなぁっ!」


 窓の向こうで命を賭して異形と戦っているというのに……なんだこの会話は。

 京子が殺されてしまったいうのに、確かな憎悪があるはずなのに、

 私の感覚は完全に狂ってしまっている。

 乱された感情の中には、恐怖と憎悪と――――。

 胸からこみ上げてくる言い知れぬ感情。

 いつの間にか、彼らの戦いにせられ、

 握りしめた刀に……更なる力がめられた。



 まさに戦いの渦中の彼らも、

 悩む時間なく、やらねばならぬ事が導き出されていた。

 障壁を展開したまま異形は距離を縮め、鋭い爪で責め立ててくる。

 人間の筋力と異形の筋力。大きさの比率からして、パワーに差があることはれきぜん

 直接攻撃を受ければ、瀕死級のダメージは確実。

 遙佳は絶対的な距離をキープしながら、攻撃の機会をうかがう。

 十河と誠は、的確な動きで攻撃を回避し、二人で常に挟み撃ちの立ち回りを行うことによって、それぞれ回避の邪魔にならないようにてっする。

 爪は空を切り裂き、地面をえぐる。

 回避の動きには無駄がなく、同時に相手を絶対に逃がさないよう立ち回る。

 時折、中距離から針の穴を通すかのような正確さで、遙佳の銃が単発で放たれる。

 しかし、障壁によって弾丸は弾かれる。


『跳弾の危険がある。遙佳は待機して』


「……了解」


 特に呼吸を合わせているわけでもなく、常日頃からチームプレイを模索しているわけではない。経験上の動きから洗礼されると、ごく自然と形になっていたが、端から見ても、明らかなぎこちなさ(・・・・・)が十河と誠の両者にはあった。常に二人が距離を開けながら戦っているのは、近づけば相手にぶつかって巻き込んでしまう危険があったからである。



『…………とにかく。このままじゃ、なにも進展はない。刻印をつかって障壁を破壊するしかないわよ』


「…………だな」


「しゃあねえな。じゃあ俺の刻印をぶっこんでやるぜ。十河、委員長。サポート頼んだ!」


「――な。ちょっとまて、クソっ」


 誠は勝手気ままに単独行動を宣言。ステップを踏みながら、敵へと突進した。

 慎重に戦いを運ぶつもりだった十河はタイミングを逃し、一足遅れてついじゅうする。



 誠が握った両拳には――血管のように二の腕まで這い回る、緑色の発光。

 まるで鼓動をしてるかのように、ゆっくりと明滅するそれは、まさしく誠の固有刻印だった。

 異形が確かにひるんだ。本能が誠から発する輝きに恐れをいだいたのだ。

 彼らを避けて、べつかくから遙佳の援護射撃。相手を直接狙わず、地面に向かって撃ち放つ。思惑通り、異形は気を取られて動作が鈍くなる。


「ココまでくりゃあ、小細工なんていらねぇ。まどろっこっしいの抜きに。最後は強いか弱いかで勝ち負け決まるもんだろうが! ――んじゃ、いっくぜええええ!」


「ウガアアアアアアアア!」


 誠の殺気にてられたのか、異形もまた銃弾を無視し、

 誠を攻撃範囲に捕らえ、未だ衰えない拳をもって迎え撃つ。


「シャっ!」


 ――息を吐き出し、

 ――回避もせず。

 ――怯みもせず。

 ――(おそ)れもせず。

 あろうことか、圧倒的な力の差にも関わらず、

 誠は真っ向から敵を打ち抜きにかかったのだった。

 拳と拳の衝突――爆発。

 大気を押しのけて衝撃波として空気を震わせる。

 誠の拳は砕けることも。折れ曲がることもせず。

 しっかりと、形を保ったまま、一歩も退くことなく。

 異形の拳と接触させていた。

 ――ただ、異形の拳に展開させていたオレンジ色の障壁が……。



「こっからだぁあああああ! ウォラアア!」


 ――――気合一閃。

 腕から放たれている輝きも、呼応するように強く。

 誠は更なる踏み込みを行って、付け合わせていた拳を力任せに押し込んだ。

 すると、障壁はガラスを割るかのように砕け散り、

 むき出しの拳に、誠の拳が届いた。

 固有刻印によって強力になった誠の一撃は、さながら一本の槍。

 異形の突起に包まれた角をへし折り、さらに奥へと食い込んで、相手の指を破壊した。


「グギィィィァァアアアアアア!?」


 確かな苦痛をもって悲鳴へと変わり、

 折れた骨が露出し、紫色の血液を噴き出したは、確実なるダメージの証。

 異形は三歩、四歩と後ろへ引き下がる。

 ひるんだ相手に休みなど与えず。

 誠の追撃は休むことなく、止まることなく――容赦なく(・・・・)

 弾丸のような打撃が障壁に包まれた胴体を無数に打ち抜いた。

 そのたびに、あれほど堅牢であった無数の障壁は、

 透明な破片となってバラバラになってゆく。

 体に届いた彼の拳は、異形の表皮の下にある、内臓に強い衝撃を与え続けた。



 ――似たような光景を、真結良はかんとして思い出す。

 訓練の時に見せた、荒屋誠の戦い方。

 剣を持っていたからこそ、よこがみやぶりのような、肉を斬らせて骨を断つスタイルに見えていた。

 しかし、本当は彼にとって剣すら必要(・・・・・)が無かったのだ(・・・・・・・)

 拳による格闘戦。普通に考えれば異形との戦いに、拳を持ち込む発想自体が浮かばない。

 刻印の特徴を捉えたが為に、訓練ではあのような不器用な戦い方になったのか。

 己を知り、それ相応の覚悟と経験が無い限り、

 真っ向勝負で異形と向き合うことなど出来はしないだろう。

 この勝負、行けると真結良は確信する。



 破壊された拳と、剣によって貫かれた腕。

 突き立てられた刀でほとんど機能しなくなった背中の片腕。

 片足はズタズタで、立っているのもやっと。

 残った腕一本で、異形は抗い続けるが、

 さながら暴風のような誠の勢いについて行けるはずもなく。

 慌てて背中を追いかけたものの、両者の間に踏み込める余地は一切ない。

 真結良と同じように十河も勝利が見えていた。

 ――だが、目に見えぬ勝利は、例え確実であろうとも現実の物とならない限りは、為違しちがえる可能性も視野に入れておかなければならない。

 十河は気持ちを改め。

 万が一に備えて、いつでも踏み出せるよう剣を構えていた。



 ――オレの場合。……〝狩り〟と呼んではいなかった。

 戦い始める前に言っていた誠の言葉。

 どんな生き方をしてきたのかは知らないが、

 進んで異形を相手にしてきたような言い方。

 いくら自分の刻印が接近戦に特化してるとはいえ、

 人外の生物相手に、肉弾戦を仕掛ける人間を初めて見た。



 破れかぶれになった異形は、

 口角を裂けんばかりに大きく開けて、

 誠に食らい付こうと迫る。

 素速い身のこなしでかわしつつ、握りしめた拳があごを捉える。

 障壁の一部ごと下顎の牙が吹き飛び、骨を砕く。



 ――そして、この猛攻はあまりにも唐突に終わりを迎えた。



「あ、やべえ。ガス欠……」


 呟くようななげきが無線機から聞こえた。


「…………あの馬鹿野郎ッ!」


『は!? ちょっと仕留めなさいよッ! な、那夏……とどめをッ!』


 自身の中にある魔力のペース配分を考えずに戦っていたのか。愚かにも程がある。

 一本残った剣を握り、十河は走り込んだ。

 逃げる誠と入れ替わり、十河はがら空きとなった胴体へ。

 誠が取り除いた障壁と障壁の隙間に、切っ先を付き入れる。

 とげを砕き、肉を突き破り、刃が骨の奥まで達した確かな手応え。

 どんな常識からかけ離れた異形といえども、生物には変わりない。

 十河が感じた確かな手応えとは、致命傷に至る感触だった。

 顔に飛び散る、異形の血。


「なんてしぶとい。――――ッ。はやく……くたばれっ!」


 傷が浅いわけではない。

 決定的であるのに、未だ死にはいたらず、

 強靱な生命力で、塞がらない口から泡混じりの鮮血を吐き出しながらもなお、

 異形は闘争心を失わず、十河の首を跳ね落とさんと爪を闇雲に振るい続ける。

 いま離れたら、間違いなく敵の腕に刈られるだろう。


「――かまわない! ()れッ!」


 つばまで差し込まれた柄を両手で握り、十河は叫んだ。

 障壁を保つ力も失われつつあり、

 ぼんやりとした光に変わっているそれは、

 まるで残り少ない命の灯火ように見えた……。



 ――自分の番は来ないかと思っていた。

 それだけ地上の戦いは圧倒していた。

 楽観視していたつもりもなく、ぼうかんしていたわけでもない。

 余計な射撃を加えて、仲間を危険に晒す真似はしたくなかった。

 体は微動だにせず、瞬きも最低限に。

 戦いが始まったときから、集中は途切れなく続いていた。

 仲間が活路を開いてくれると信じて、

 稲弓那夏は、絵里の指示をじっと待ち続けていた。

 新たに装填してある弾は一発きり。

 最高のタイミングを察し、

 最大の効力が得られると確信し、

 その度に彼女は指先で引き金に触れ続けた。

 …………べ――八発。

 誠が障壁を破壊し……その隙間を射抜いて那夏が異形を殺せた回数だ。



「は!? ちょっと仕留めなさいよッ! な、那夏……とどめをッ!」


 十河が走り出し、彼が剣を突き刺し、

 彼が抑え込んでくれたおかげで、異形の体が留まる。


『――かまわない! れッ!』


 危険の渦中に立っている十河からも出たゴーサイン。

 こちらを見て、必死に叫ぶ口が、ライフルのスコープ越しに見えた。


狙うなら必中(・・・・・・)―― 一発でも外したら(・・・・・・・・)…………」


 那夏は自らへと言い聞かせる呪文のように独り言を吐き出しながら、

 迷わず人さし指にかけられた引き金を強く引いた。

 屋上から放たれ。音速を超えて直進する弾丸は、吸い込まれるように精密に、

 再度…………頭部へと向かい、

 誠が打ち破った魔術障壁の合間を縫って頭部へ直撃した。



 那夏が放った弾丸はてっこうりゅうだん

 それは弾頭が目標を貫通すると、弾丸内部の炸薬が爆発する、いわば射撃できる爆弾だ。

 異形の頭部に侵入した弾丸も、例外なくその効力を発揮し、頭蓋の奥まで埋没した瞬間。

 内側から破裂。のう漿しょうを四方へらした。

 頭がなくなろうとも、しばらく異形は立っていたが、

 やがて力を失ってゆき、巨体は音を立てて地面へと没した。



 爆散して無くなった首からは、白煙が立ち登る。


『…………………………異形のせんめつを確認。でも油断しないで、二度あることは三度あるっていうでしょ?』


「三回も生き返られたら、たまったものじゃない」


 深い呼吸で整えた十河は爆発で被った耳鳴りに違和感を覚えつつ、絵里の冗談を受け止めるが、

 慎重を期す彼の視線は、動かぬ死体となった異形から、しばらく離れなかった。


「やったな十河、委員長!」


 飛び跳ねて喜ぶ誠に対して、十河は厳しい視線を向けた。


「お前、戦ってる最中に魔力不足とか、……笑えない」


『同感。今すぐにそっちに行って、アンタを刺してやりたいわよ』


「いやぁ。ここ異界じゃないんだもんな。考えてなかったぜ!」


 全員……遙佳や那夏までも深い溜息をついた。


「最初から刻印を使っておけば、こんなに長丁場にならなかたんじゃないか?」


 苦く笑いながら、誠は自分の両腕を上げて、


「いやいや。俺のコレってけっこうおおいなんだよな。俺が溜め込んでおける魔力の容量はすげえ少ねえから、魔力で体補強する方が、効率的にも良いかなって思ったんだよ。……だからいきなり使うわけにはいかなかったってわけ。異界以外で刻印使うのなんて初めてだから、ガス欠になったときはかなり焦ったわ――いや、本当は行けるかと思ったんだぜ?」


「………………」


 ――なるほどな。経験者だけあって何も考えていないわけじゃない、と。

 だが、結果的に荒屋は詰めが甘かった…………オレも戦いが始まってもブランクを引きずっていたのだから、人のことを言えたわけではないが。

 両手にはまだ、剣を握っていた感触が色濃く残っている。

 体中に飛び散っている異形の血を見ながら、

 戦いの熱が、醒めてゆくのを体で感じていた。



「やったのぉ。さすがだお前たち!」


 校舎の窓から出てきたエリィは飛び跳ねながら彼等の元へと走り寄った。


「おい。ミニ子。お前なんもしてねえじゃねえか」


「ばかもん! われはマユランを警護するという重要な役割をだなぁ……」


「おおー。准尉ちゃ――――ま、真結良ちゃん。無事でなにより」


「あ、あぁ…………」


 失言しかけた所を誤魔化すため、カラカラ笑う誠。


「トウガもよくやったなぁ。偉いぞ。ご褒美にちゅーしてやるぞ」


「――いらん」


「…………なんか、安心したらどっと疲れちゃったよ」


 戦闘が終わったというのに。新しいライフルの弾倉を装填しながら、遙佳は薄く微笑む。



 一部始終を見ていた真結良は意を決して問うた。


「――――お前たち、ディセンバーズチルドレンだったんだな?」


 その質問に三人の動きがピタリと硬直。

 素知らぬ顔で立っているエリィに冷たい視線が集まった。

 通信で聞こえていた屋上の二人からも、遠距離視線。

 絵里に至っては舌打ちしながら望遠鏡で睨め付けていた。


「えっとー、あれだ。話のつなぎ的な。小話というか。…………別に良いではないか減るもんじゃないし! ……何だ貴様らその目は。も、もんくあっかこのやろーッ!」


 無言の訴えであったが、糾弾しているわけでもないのに、

 勝手に追い込まれ、額に汗をかきながら逆ギレを始めるエリィ。


「…………まあまあ、そんな対したもんではないわな。そうだよな? な?」


 誠は両手を頭に回しつつ、味の無くなったガムを吐き出し、二人に話題を投げる。


『はぁ。もういいわ…………ところでアンタ達。いつまで無駄話をいつまでしてるつもり? 増援の連中が一斉に来てるわよ。全員撤収しなさい』


 真結良とエリィ以外の耳に聞こえてくる絵里の声。


「蔵風……」

「は、はい!」


 珍しく十河に呼ばれた遙佳は驚きつつ。


「銃をくれ」

「……………………?」


 心底わからないといった様子で、特に否定することもなく、

 手に持っていたライフルの安全装置を確認し、十河に受け渡した。

 銃を受け取った十河は、


「………………ほら」

「――え?」


 十河は真結良にライフルを差し出すという謎の行動に出た。


「ちょっと。持っててくれ」


 別に良いが、と真結良はいぶかしげに十河から武器を受け取ると、


「……………………よし――行くぞ」


 十河と誠は別々の方向へと走り出し、

 エリィに押される形で遙佳も闇の中へと消えてゆく。


「マユラ~ン! ちょっとそこで百秒数えててくれーぇぇ!」


 闇の中からエリィの声が響く。


「………い、意味が分からないのだが」


 異形の死体と一緒に、その場で取り残された真結良は、

 百秒と経たぬうちに――フル装備の増援隊に取り囲まれることとなった。


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