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異形はありったけの力をもって、ようやく防火壁を打ち破り、
ゆったりとした足取りで廊下を抜け、校舎を移動する。
刀が突き刺さった肩から、紫色の鮮血が流れ落ちる。
瓦礫を踏みしめながら――――自らの苦しさを知る。
人間から奪った魔力だけでは十全に行動できなかった。
異形にとって、この世界の大気は毒である。
環境に適応できないのではなく、
単純にこの世界には魔力が足りていないのだ。
人間が空気を取り込んで呼吸するように、
異形は魔力こそが酸素と同義であった。
多少の種族や個体差はあれど、
大半の異形は魔力を取り込んでいないと生命活動を続けておくことが困難になる。
この機能は人類にとって、大きな助けとなった。
グラウンド・ゼロにある『扉』から流出され続ける魔力は拡大の一途をたどっているが、異形が一斉に進行できずにいるのはこれらが理由だからである。
いま、異形は望まぬ形で魔力が満ちている第五層よりも外部につれてこられ、弱っていた。
本能が告げる。「魔力を求めよ」――と。
異形は濃密な魔力に惹かれる。
逃げた人間は――後回しだ。
異形はまっすぐ、傷ついた体を引きずりながら向かう。
魔力が満ちている――『特殊エリア』へと。
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