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ParALyze~パーアライズ~  作者: 刻冬零次
第3話 【後編】
179/264

<14>

「ハッハハハ。考えたな。まさか協力して体勢を立てるとは…………なかなかどうして良い統率者がいるようだ。混乱した所を狙えば、あっというまに皆殺しにできると踏んでいたのだが――やるな。全滅は大いに結構だが、すんなり出てきて貰っては困るんだ」


 男は目を閉じ、地面に描かれている魔法陣に手を置き続ける。



 …………男は見ていた。目を閉じながら、異界の中を見ていた(・・・・・・・・・)



 人間の目は二つしか無いが、昆虫にはふくがんと呼ばれる膨大な数の目が集合した器官をもつ。複眼は外敵からの攻撃に対応できるため、視覚野の広さを確保しておくためにあると言われている。

 ――いま、男が見ている二つの目には〝三十以上の視界(・・・・・・・)〟が確保されている。それも全てバラバラの視点で、だ。

 目ではなく脳で見る。人間離れした業を使い、異界の内情を把握していた。



 異形『スウォーム』は、とにかく性能が低い。

 じゅんたくではない魔力。中途半端な異界。そこから作り上げ、召喚した異形はオリジナル(・・・・・)の比較にはならないほど劣化した生き物となった。安定した同じ個体の連続召喚などまともにできず、身体能力の低さが際立ってしまうのは仕方のない事であった。

 個別の性能が悪いならば『じんかいせんじゅつ』で行くしかあるまい。

 男は異形である『スウォーム』を操ることができた。ただし操作できるのは二体程度。異形にも本能的な意識があるので、完全に意識を乗っ取ることはできない。

 必要なのは情報。外部でも内部でもいい。この異常事態において、ブラックボックスの人間がどう動くか。男の目的は一点にのみ集約されていた。

 スウォームは洞窟の中心点で、絶え間なく生み出される。

 生み出せる数には限界があるものの、男が魔力を供給し、術式を維持し続ければ多数のスウォームが生成可能だ。

 男が懸念していたのは、洞窟の中心にある〝儀式場〟に向かわれることだった。

 もし生徒たちが一丸となって、準備が整う前に特攻を仕掛け、儀式場を破壊していたら、スウォームが数を揃える前に生徒たちは安全が確保できていただろう。

 ……そこまで行動できる生徒はまずいない。見知らぬ不気味な洞窟に放り込まれて、内部がどうなっているかも判らない状態で、異界を支えている〝核〟までたどり着けるとは思っていなかった。全ては順調。計算通り。

 後はこの状態を維持し続ければ良い。もし内部の人間達が全滅しようとも、外部の人間は何も知らない。最初の時点で大手を取られなければ、こちらの勝利が確定するのだ。



 脳内視界は、彼らが天地に展開した結界の視覚情報が送られてくる。

 スウォームたちは結界を力任せに叩いたり、体当たりで突き破ろうとする。

 闇雲な行動しかできず、壁の向こう側では男子生徒の引きつって硬直した表情が見えた。


「…………どれ、ちょっと驚かしてやるか」


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