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 代表戦の事件は誰にも知られず事を終え、

 数日後、エリィ・オルタの提案で『祝勝会』をやろうとの提案が上がった。

 見事勝利を収めた達成感はあったものの、何故か喜びはなかった。相手側のメンバーは逃走した班長を除いて、誰一人として真相を知らない……。どこかあとあじの悪い終わり方。

 そんな心情が背景にあったものの。祝勝会の件に対して、問題児達は誰も否定的ではなかった。



 場所は校内。『技能エリア』にある一角。

 そこは部活動のための部室があるほかに、学年事に振り分けられた『班部屋チームルーム』なるものがある。

 班専用の部屋で、定期的に行われる代表戦の上位者に提供される部屋だ。

 祝勝会として初めて使う班部屋は、思っていた以上に広く。簡易な机を中心として七人が座ってもあまりのスペースができるほど。

 部屋はまっさらな空き部屋だと誰もが思っていた。……いざ見てみると内部はガラクタのような物がそのまま残って倉庫同然の状態。不定期に使用者が変わるため、不必要になった荷物が残されて部屋が明け渡されるのはよくあることなのだと知ったのは、随分と後になってからだった。



 みんなで役割分担し、あらかた片付けを終えて、

 ようやく会が開始されたワケなのだが……。



 ――谷原真結良は、絶望のどん底に居るような表情で縮こまっていた。

 公開処刑とは、正に今のような事を差すのだと。

 彼女は身をもって味わっている真っ最中。


「……………………………………………………あの、そろそろ。着替え、たいのだが?」


 恐る恐る……彼女は問うが、相手の答えは否定。

 がっくりと項垂れながら肩を落とす。

 その姿には、彼女が持っている独特の強さやオーラのようなものが失われていて。

 貫禄の大部分を奪い去っていたのは、彼女が身につけている一式にあった。

 ――谷原真結良には、耳が生えていた。人間の耳ではなくカチューシャに取り付けられた獣の耳。フリルの付いた短いスカートに白と黒……そして朱く染まった顔が見事な可憐さとコントラストを演出していた。

 ソレはいわゆるメイド服……メイドならば誰しも着るであろう正式な制服。

 ――――だが、真結良はメイドではない。

 なのに制服を着ていると言うことは即ち、コスプレにおいて他ならず。



「……着替えですって? そんなものダメに決まってるわよ。啖呵切ってアタシを引っ張り出しておいて、当人であるアンタは無断で欠席。しかも吾妻なんて男を勝手に出場させる始末。随分と斜め上を行くことしてくれたじゃないの。…………ホントだったら着てるものひん剥いて『紐』でも着せて校内を練り歩いてもらいたいくらいだわ」


「ほう! 『紐』って着れるのか!? そこの所を詳しく話すのじゃ!」


 完全に悪乗りなエリィは絵里からちょっとした説明を受けて、

 爛々とした瞳を湛えて振り返った。


「マユラン、『紐』でいくのじゃ! そっちの方が見てみたい!」


「バッババババババッカかッお前は!?」


 膝上までしかないスカートから手が離れない。両手が自由であったなら手刀チョップの三発や四発はお見舞いしてやりたいくらいだ。

 この仕打ちは、代表戦を勝手にさぼった真結良に対する『処分』だった。

 提案したのは市ノ瀬絵里。先ほど言った『紐』は冗談などではなく、本当に紐レベルの罰を執行させようとしたのだが、そこは問題児たちの良心である蔵風遙佳がいさめたのは双方しか知らない裏話。


「は、遙佳ぁ……」


 こんな仕打ちには、もう耐えられないと。涙ぐんで首を振り、

 救いの命綱である遙佳に、弱々しい目線で助けを請うものの……。


「そんな顔で見られたら困っちゃうなぁ。……でもごめんね。本当にごめんね。わ、私は真結良ちゃんの味方だよ? でも――でも今回は助けてあげられないよ。本当にごめんね。――でも、凄く似合ってると思うよ。これはホント」


 最後の望みである天使は、申し訳なさそうに笑顔で両手を合わせ有罪宣告ギルティ

 終わった、と。潤んだ目を拭い……。

 自分の心がついに諦めに向かって、鈍重な歩みを始めた。


「にしてもハルカ。よくこんなのもっておったなぁ。――ハルカは部屋で着ちゃったりしてるのか? コレは趣味か?」


 もっとも(ミステリー)な部分にエリィが、ズイズイ切り込んだ。

 とんでもなく正論にして、誰も気がつかなかった着眼。

 何を隠そう、服を提供したのは遙佳だった。

 そのとおりだな、と全員の視線が遙佳に注がれる。


「え!? いや……これは、……そう友達から、友達から借りたやつなんだよねぇ。裁縫が上手くて服を作るの趣味にしている友達がいて――そこから……友達が貸してくれたやつでぇ」


 何故か血の気引いた顔を引きつらせ、汗を浮かばせて力説する遙佳。


「でも、すごくかわいい。わたしも、着てみよっかな……でも、似合う、かな?」


「なっつんよ。謙遜謙遜。きっとなっつんが着たら破壊力バツグンじゃ。男どもが月まで吹っ飛ぶのじゃ」


 女子の盛り上がりに便乗するかのように、誠は自分の携帯端末を取り出した。


「なあなあ、写真撮って良いか!?」


「駄目に決まってるだろうが! ととと撮ったらそれ壊す! 漏れなく貴様の記憶も消えるまで殴る! 撮ったことを後悔しても遅いぞ! ずっと殴打するからなッ! わかったか!?」


「…………は、はーい。調子にのりすぎましたー。すんませんしたー」


 赤くなった顔をずっと維持したままで凄まじい剣幕。よほど精神的に追い込まれてるのか……さすがの誠も、これ以上茶化しては生死に関わると判断し、素直に退く。

 絵里はジュースを飲みながら、なんとも陰湿な笑いを浮かべていた。


「ほら、怖い顔してないで、もっと愛想振りまいて笑いなさいよ。外界のエリートな准尉さんってのは、そんなこともできないわけぇ?」


「う…………ヘ、……ヘヘ」


 真結良は精一杯、笑おうと努めるが、どうやってもその表情は歪んでいた。


「よよ、よし。もういいだろう? ……じゃあコレで終わりということで良いんだな市ノ瀬」


「ええ。もちろん――…………まだよ(・・・)。それに〝市ノ瀬〟じゃないでしょ。ちゃんと〝お嬢さま〟って言いなさいよ。この駄メイド」


 とんでもない屈辱だ。この部屋のどこかに穴はなかろうか。

 あるいは乱心のままに全員切り捨てて、私も死にたい気分。

 すり切れてゆく自尊心の中。なんとか自分を保ちつつ。


「――お、おじょう……さ」


「はぁぁぁー? 聞こえないわよ。ハロハロ。その耳ちゃんと機能してる? もっとちゃんといいなさいよ。はいワンモア」


「お嬢さ、ま」


「ぷ、アっハハハハハ。最っ高ぉ! アンタみたいな世間知らずの人間をカマすの本当に最高。クセになりそうだわ!」


 久方ぶりに、年相応の笑いを上げながら、心底楽しそうにしている絵里。

 お菓子を口に放り込んでいる那夏は、

 自分の事のように目を細めて、うんうんと何度も頷き。

 影ながら温かく見届けつつ、満足していた。



 ――絵里が上機嫌なのは良いことであるが、いかんせん彼女を歓喜させている内容がどす黒い。

 男子二人は椅子に座り、振りまく純粋さに背筋を氷らせる。


「マジでたち(わり)ぃ。市ノ瀬のあの笑顔見ろよ。アレ……ドSとかの次元超えてんな。あそこまで行けば性格超えて、天性の領域だよな。……聞いたか? 自分のこと『お嬢さま』だってよ。……確かに、雰囲気見た目は、お嬢さまっぽいが――とんだお嬢さま(悪魔)だぜ」


「……………………その意見には、賛同せざるを得ない。寒気のするような光景だな。もしオレが執事なら死んでも仕えたくない部類(タイプ)の人間だと断言できる」


「ハぁ? ちょっとそこの男子二人、何か言ったかしら?」


 楽しそうに笑っていたが、目は笑っていなかった。


「「べ、別に……」」


 見事に二人の声が重なった。



 温度差の激しい盛り上がりの中――部屋をノックする音。


「やっときたようじゃのー。まってろー。開けるからのー」


 扉の向こうにいる人物が何者かを知っていたエリィは扉を開けた。


「おぉ。遅いぞ。ザコヅマ!」


「――あ、吾妻、です」


 ひしゃげた笑みで自分よりも背の低いエリィを見て、軽い挨拶をした。


「ぅあ。……た、谷原さん!?」


 制服を着ている面々とは、明らかに異質なソレが式弥の目に飛び込んできて、驚きのあまり声が裏返った。


「――――言うな。解っている。だから何も聞くな。できれば忘れてくれ。永遠に」


 喋り方は谷原真結良だったが、びっくりするほど可愛いと、心の中で思った式弥は自分の顔が一気に熱くなっていくのを感じていた。

 導かれるままに椅子に座らされ、お菓子とジュースが振る舞われる。

 式弥はしばらく体を動かさずこともなく黙っていたが、

 意を決して話し出した。真剣な雰囲気に、全員の視線が集中する。



「あの……今日はみんなに、お話があって」


 もじもじする式弥は、肩をすくめたまま話し出した。


「ボク、班が見つかったんだ……」


 その報告は、一同を湧かせた。


「本当に、みんなにはお世話になりました」


 心からの感謝を述べる式弥。

 自分一人のままだったら、何も変える事はできなかった。こうやって一歩を踏み出すことさえも出来ず、膝を抱えて思い悩む日々を送っていたに違いない。


「……これで終わりじゃ無いぞ。吾妻」


 十河は手に持った飲み物を一口。彼を見た。

 うれいを帯びた瞳は、今まで彼に対して見せたこの無い表情で話す。


「お前はこれから仲間ができた事によって、自分以外も助け、気遣わなくてはならない。……時にはお前が悩んできたこと以上に難しいことも直面するだろう。……作り上げてゆくのは大変だが、失うときは一瞬だぞ。……お前が望んで、やっと得た環境だ。せいぜい取りこぼさないようにする事だな」


 一言一句がとても重く響く。式弥は噛みしめるように頷いて見せた。


「まぁったく、トウガはかわいくないのぉ。素直にオメデトウっていえばいいのじゃ」


「………………あと、これからはなるべく表だってオレらに関わらないようにしろよ」


「え、どうしてそんなこと」


 冷たく突き放す十河に思わず遙佳が割って入った。


「オレ達は疎まれる問題児ノービスどもだ。関わるだけで同種だと思われる。コイツの仲間がオレ達と関わり合いになることを望むと思うか?」


「で、でも間宮君たちは、良い人だよ! ボクがそれをちゃんと説明すれば……」


「言葉だけで全てをいっしょくに変えるなどできない。世間ってのは簡単にいかないものなんだよ。噂だけが先に走って、あの試合もオレ達が不正を働いたと思われている始末だ。お前が自分の力で勝ち取った物まで汚したところで、なんの得も無い」


 納得せざるを得ないその説明に全員は、ばつが悪そうに黙り込んだ。


「お前が大切にするべきはココじゃない。――わかるな?」


 心の裏に潜んでいる優しさ。十河の気持ちを汲み取って、式弥はゆっくり「はい」と答えた。


「…………なんだよ。今生の別れでもあるまいし。その程度で泣くなよ。班としては会えないだろうが、個人的に会いたければ人目を避けて来ればいい」


 自分でも無意識に泣いていたことに、式弥は気がついた。

 拭えど拭えど、その優しさに感極まった彼の涙は止まらなかった。


「ありがとう……みんな……ほんとに、ありがとう。ほんと――うに、……ありが、とう」



 足を組みながら絵里は、わざと雰囲気を壊すように、


「あー。なんか湿っぽくなったわ。…………ほら、罰の続きよ駄メイド。なんかやってちょうだい。盛り上がるヤツ」


「そんなのできるわけないだろ」


「……もぐもぐ。水なしで、クラッカーを、は、早くたべる……とか? へ、えへへへ」


 今までずっと喋らなかった那夏は急に提案。絵里は指をパチンと弾く。


「それ面白いわ。じゃあ対戦させましょ。相手はエリィ・オルタで」


「クッハハハハ。ついに来たか、やっときたかその指名が。満を持してこのスキルを見せつける時がきたようじゃの。われはこうみえてもクラッカー食わせたら右に出る物はいないのじゃ」


「クラッカー食べさせたらって、そもそも右から出てくるヤツがいるものなのか?」


 無意識につっこみをする真結良。

 これ以上の恥はもうないだろう……もう、どうにでもなれと決意を固める。


「わたしも、やろう、かなぁ……」


 珍しく積極的な那夏が手を擦り合わせた。



 男子そっちのけで、女子三人は勝手に盛り上がり、

 絵里の合図で、クラッカーの早食いを始めた。

 慎重に食べ進める真結良。

 いきなり四枚重ねて、その小さな口にねじ込む那夏。

 偉そうな前置きをしていた割には悪戦苦闘するエリィ。


「ボバッハ! なんじゃこら!? く、くちがパサパサじゃ! 恐るべし吸水力。口の中全部もってかれるのじゃ! こんなの人間の食い物じゃないわ! クラッカー怖いのじゃ! …………な、なななななっつん、お前あげパンの時から思ってたけど、こと食べることになると貪欲にしてクレイジーすぎじゃなぁ!?」


「もくもくもくもくもくもくもくもくも。っもっもっもっもっも…………」


「う、っぐ……そもそも、だ、だれだ。こんなにクラッカー買ってきたヤツは」


 手を止めて那夏はチラリと真結良を見た。

 真結良も口を押さえながら、那夏と視線がかち合った。


「…………………………」

「…………………………」

「く、クラッカーは栄養、満点……――もっもっもっももおもももももも」

「お前か。稲弓…………」


 応援しながら、まるで運動会を観戦する母親のように携帯端末で写真を撮り続ける遙佳。

 苦戦する姿をさかなにジュースを飲み、高らかに笑ってあおり立てる絵里。

 そして、それらを傍観して男子三人は平和に祝勝会を行っていた。



「なんだかんだ言って、真結良ちゃん……馴染んできてるよなあ」


 何気ない誠の感想に、十河は顔を険しくさせた。


「…………………………」


 ――いや、馴染んでもらっては困る。オレはまだコイツを認めたわけじゃ無い。今回は市ノ瀬が敗北したことによって失敗したが、またチャンスがあれば……次こそはオレが。

 まだ諦めてはいない十河は、谷原を見つめながら、自らのもくろみを静かに潜行させる。



 ようやく一息ついて、三人は水で口を潤す。

 勝者は言わずもがな那夏である。

 口を拭きながら、もう自分の仕事は終わりだと言わんばかりに真結良は式弥の隣に座った。

 何度か式弥は真結良を盗み見て、ポケットに手を入れた。


「あの、谷原さん……コレ、返します」


 ポケットから取り出したのは、京子のミサンガだ。


「助かったって言い方は、すこし変かもしれませんが……でも、これがあったからこそ、助かった気がします」


 少しばかりそれを見つめた真結良は、式弥の手を取り、受け取ることなく握らせた。


「吾妻……君が持っていてはくれないか?」


「…………え。でも」


「いつか、どこかにそれを埋めてあげたいと思っていたのだが、京子はどこに運ばれたかすらもわからない。……もしかしたら、墓なんてものは無いのだろう」


「…………」


「彼女はサイファーになろうと、強く望んでいた。そして……異界に行って世界を救うのだと。君がサイファーになって、異界に行けるようになったら。それを埋めてあげてはもらえないだろうか……」


 式弥は黙って手に収まっているミサンガを見つめる。


「向こうの班でも、いろいろな困難に直面するだろう。……でも、諦めないで欲しい。君は代表戦であれだけの事ができたのだ。きっと乗り越えていけるはずだ」


 最初の頃に出会った式弥の姿はもう、そこには無く。


「ボクも同じ世界に立てるように、努力します。…………約束します」


「――ああ。約束だ」


 式弥は名残惜しそうにゆっくり立ち上がって、


「それじゃあ、ボクはそろそろ行きます。ありがとうございましたっ」


 強い足取りで部屋を出て行く式弥の背中を全員が見送る。



「吾妻の件はめでたしめでたしだな………………だけど、こっちはまだ、めでたくない話があるんだよなぁ」


 誠は腕を組んで独りごちに話し始めた。


「なんの話よ?」


 絵里も話の芯が掴めずに問いかける。


「真結良ちゃんが班に入ったのを、俺たちは知っているが……問題はアイツ(・・・)がまだ知らないってことだよ。受け入れるかどうか、微妙だぜ。……そういえば、アイツ……そろそろ帰ってくる時期じゃねぇかな?」


「……もう、ずいぶんとたつよ、ね」


 困惑した那夏は俯きつつ、クラッカーで汚れた指をずっと拭き取っていた。


「それにしては、かなり長く居ない気がするよね。ちゃんとご飯食べてるかな?」


 遙佳は携帯端末の写真を確認しながら満足そうな表情。そして、ここにはいない誰かに対して心配そうな言葉を送る。


「ヤツは強い人間じゃからな。どこに行っても図太く生きてるはずじゃよ。あ、居る場所はまったく変わらずか。クハハ」


「――? いったい誰のことを言ってるんだ?」


 口の渇きに違和感を憶えながら、真結良は彼らの話に切り込む。


「あれ? 言わなかったっけか? ウチの班って俺と十河と、那夏ちゃん、委員長、ミニ子、市ノ瀬……えーっと、――今は六人なんだけども、本当は七人班(・・・)なんだよな。真結良ちゃん入れたら八人」



 ――――たぶん、初耳だ。〝空席の問題児〟だと?



「事件起こして懲罰房に連れてかれてた人間が一人いるのよ。本当の問題児ってのは、ああいうヤツのことを指すのじゃないかしら」


 絵里は呆れ混じりに語る。その表情には先ほどの楽しさとは打って変わった、わずらわしさに似た気持ちを表す。

 他の誰もが知っていて、自分だけしか知らない……人間。

 真結良の中で、彼らとの間に、またもや溝が開いた気がした。


「戻ってきたときには、否が応でも顔合わせなきゃならねえけど、……極力、ヤツとは関わらない方が良いぜ、真結良ちゃん」


「――ま、アタシにはどうでも良い話だけど。谷原にとって面白くない話になりそうだから、アタシは彼の帰りは大歓迎よ……」


「……ム」


 あからさまな嫌味も、隠れて言われないだけまだ良い方か。


「帰ってきたら、また十河に突っかかるんだろうなぁ……なッ! 十河!」


「――――ハァ。かんべんしてくれ」


 思い当たるところがあるようで、十河は心の底からの嫌気を込めて、

 周りの人間がうんざりしてしまうような、溜息を吐いた。


「………………?」


 みんなが言う『ヤツ』とは一体何者なのか、

 謎ばかりが増える話に、真結良は小首を傾げた。


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