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ログホライズン関係:考察・短編集

雪を切り裂く銀の一閃

作者: みずっち

シルバーソードの面々のキャラがイマイチ掴めて無い・・・


言い訳ですすみません

(1)













―――はあ、、はあ、、、―――




もうすぐだ…





ススキノ…




あの人たちなら…冒険者の人たちなら、きっと…




くそっ、雪が纏わりつく…




この峠を越えれば、後一息の筈だ…



何とか…あそこ、まで…




―――アウォーン―――




…この遠吠え…?




――グルルルルルル――




まさか?!


ここまで来て<雪原狼>(ホワイトファング)の群れなんて冗談じゃ無い!

くそっ、折角ここまで来たのに!

行商人のおじさんに聞いた話では、今の私の強さ(レベル)では敵わない…後もうちょっとなのに…!


ぐっ、積もった雪に足が取られる!



囲まれたか…



せめて数を減らさないと…!




フレン…村長…皆…





「ガルルル!」

「ぐぅっ!」




だめだ…足に噛み付かれた…





――ぜはぁ、ぜはぁ…はぁ、はぁ――



振り払ったけど……はぁっ…

息がっ…上がる…




ごめん…村の宝剣までくれたのに…ここまで…みたいだ…








「ラピッドショット!!」

「ギャン!」






――えっ?




「おい、大丈夫か?え~と、アーシェ?」




エルフ、だろうか…弓矢を持った人が私と狼たちの間に割って入った…



ついでにポーションをくれた…




助かる…の…?





<雪原狼>(ホワイトファング)、六匹、レベルは…30中盤か…あんたじゃ無理だな…ちょっと待ってろ、直ぐに片付ける。それ飲んでじっとしてな」

「あっ…はい…」




何が何だか分からない…何が起こってるんだろう…



…凄い…たった一人で、あの狼の群れを次々に葬って行く…






もしかして…この人が…






「ふぃ~、おい、大丈夫か…え~と、嬢ちゃん?…何ポカーンとしてんだ?」

「へっ?」

「ポーション。要らねぇのか?」



あっ…忘れてた…








お蔭で助かった…けど、一つ不思議な事が有る…




「あの…冒険者の、方ですよね?」

「おう、それがどうした?」

「自己紹介してないし、男物の鎧とコート着てるのに、何で名前とか性別とか分かったんですか?」

「あぁ、それか。俺たちゃな、相手に意識を集中するだけで簡易ステータスが見えるんだよ。名前、性別、職業、レベルぐれーはな」




開いた口が塞がらない…そんな能力が有るなんて…




しかも、冒険者全員、そんな能力が有るらしい…そんな馬鹿な







「あぁ、大地人を一人保護した。北東側の峠だ。このままススキノに連れて行く…ん?女だけど…ばっ、ちげえよ!誰が事案だ!デミじゃあるめーし!」




この冒険者の方は、頭に手を当てて、独り言を呟いているように見える…




『事案』って何だろう…?大地人との遭遇とかかなぁ?






「…今聞いたが、ススキノに用が有るらしい。あぁ、じゃあ、途中で合流だな」






<念話>と言うらしい…遠く離れていても会話が可能だそうだ

これも冒険者は全員出来るらしい…






―――やはり、私たち(大地人)とは違う―――




















(2)





















はあ、はあ、もうすぐだ…ススキノ城砦の壁が見えて来た…



それにしても、この人たち、足が速い…いや、体力が私と違うのか…




「おいウィリアム、アーシェちゃんちょっと疲れてんぞ」

「ん?おうわりぃ。お前、馬に乗れるか?」



一応乗れるけど…って答える前に馬が召喚されちゃった…




でもこれ、かなり上等な召喚笛だし、呼び出された馬も<ユニコーン>だし、見た事無いような逞しい体つきだしナニコレ…



「アーシェ、一人で乗れるか?」




いや~、流石にこれはちょっt


「きゃっ!?」



こ、腰をお尻をがっちりあわわわわわわわ




「あ、ギルマスがセクハラしてる」

「ば、ばっきゃろー!手伝っただけだろうが!」

「顔赤いなぁ照れちゃって♪」

「うっせー!神殿送りにすっぞこらぁ!」

「あ、あの、すみません、ウィリアム様、有難う御座います」



この方、ほっそりしてるのに力が強い…どうしよう、ちょっとドキドキしちゃったよぅ




「あの、処で、『ぎるます』って何ですか?」

「あぁ~、なんつーの?俺らの指揮官、みたいな?」

「そうなんですか!」



びっくりした…そんな方が私を助けてくれたのか…何とも幸運な話だ




「あぁ~、あのよ、その、『様付け』は何とかならねえか」

「えっ?」

「いや、なんかくすぐったくてよぉ」

「ウィリアムは女子に慣れてないしねぇ~♪」

「ちっ、どうせ俺は引き籠りの廃人だよ」



言葉の意味は良く分からないが、どうやらウィリアム様は初心な方らしい

指揮官なのに意外だと思ったが、冒険者の方々はほとんどが恋愛経験に乏しいそうだ…ますます分からない…




「そういやよ、おめぇ、ススキノに何の用だ?」

「あ、えっと、冒険者の皆様に村を助けてほしくて…」

「ほう、クエストか」

「行商人の人に聞いたんですが、<シルバーソード>と言う家紋の方々なら、戦闘も大丈夫だろうと…お聞きしまして」

「何だ、丁度いいじゃねーか」





…えっ?









「俺たちが<シルバーソード>だぜ」

















…何ですとぉ!?



わわわわ私そんな方々にお世話になってその指揮官の方に助けられて馬まで乗せてもらってうわああああああああああああああ



「ああああのあのあのあの、先ほどは助けて頂いて馬にまで乗せて頂いてあの、あの、アリガトウゴザイマス」

「あぁ、別にいいさ。帰るついでだったしな」

「まぁ、この辺のモンスターは俺たちに取っちゃ雑魚だからな。ススキノに着くまで、アーシェちゃんは俺たちが守ってやるよ」

「は、はい!よ、宜しくお願いします!」





この方たちなら…村を助けられるかも知れない…




何となくそんな気がする…






処で…










「ウィリアム様、常に眉間に皺寄せてますけど、何か考え事でも?」

「ぶっ!」

「くっくっくっ」

「ウィリアムの顔はいつもこんなんだぜ」

「てめーら笑うんじゃねー!はっ倒すぞ!!」




















(3)





















…ここがススキノかぁ

城壁おっきいなぁ

人もいっぱい居て賑わってるし…






やっぱり凄いなぁ




「そんな珍しいか?」

「あっ、はい…村からあまり出た事無いもので…」



あちこち見てたらしい…ちょっと恥ずかしい…




「まぁ、エッゾでは一番デカい街ですからね」

「プレイヤータウンだしね♪」



な、なるほど…




「そういやおめえ歳幾つだ?」

「あ、今年で十六になります」

「女子高生!女子高生ですね!!きゃ~♪」



何故かピアニシッシモ様が喜んでらっしゃる…




『じょしこうせい』って何ですか?



え?同世代…?



へぇ~…





え、ウィリアム様も同世代!!?



そんな風には見えない…




なんか膝から崩れ落ちそうだ





それにしても、冒険者の方々は色んな種族が居るなぁ



狼牙族、法儀族…あ、狐尾族の方も居る…



ヴォイネン様はドワーフだし、浮世様はエルフだし

そう言えばエルフとドワーフって仲が悪いって聞いたのだけれど、冒険者の皆様はそう見えない…




「あはは、僕たち冒険者は種族なんて気にしないよ」


はぐぅ!心の声が出てた!



えんかーたんと様が笑う…この太鼓も装備品か…




うぅむ…価値が分からない…





















(4)




















「たっだいまぁ~♪」

「おや、皆様お帰りなさいませ」



出迎えてくれた店主さんは大地人らしい…




ここが、この方々の拠点?





数階建ての神代の建物…へぇ…一階は酒場か…





「バーって言うんだよ」

「ばあ、ですか?」


ボロネーゼ親方様が教えて下さったけど、『ばあ』って何だろう?お店みたいだけど…?

まさか『婆』じゃないよね…



取り敢えず酒場の一種らしい…う~ん…分からない事だらけだ



「げっ!お、お前何でここにいやがる!?」

「あら、私がここに居ちゃいけないの?」

「い、いや、別にダメとは言わねえけどよ…」


おぉ!デミクァス様が狼狽えてる!



あの強面で熊みたいな大男のデミクァス様がっ!!




言いにくい癖に『()』と発音すると怒るあのデミクァ(・・)ス様がっ!!!!





「んで、お前何しに来たんだ?」

「お料理少し作り過ぎちゃって、皆さんにおすそ分けしに来たのよ」

「ほぅ、こいつぁ美味そうだなぁ、デミが羨ましいぜ」

「良かったら皆さんで食べて下さいな」

「おい何言ってやがる!全部俺が食うんだ!」



ウパシさんかぁ…綺麗な人だなぁ…え?元貴族でデミクァス様のお嫁さん?







似合わない





えっ、元人攫い?なるほど…道理で…





でも何だか、手玉に取られてる感じが…ちょっと笑ってしまう…




「今じゃもう手懐けられてて、頭上がらないらしいわよぉ♪」

「へ、へぇ~…」




浮世様、あの、そんなに盛大にお腹抱えたら失礼な気が…





いや確かに笑えるけど…






あの、デミクァス様がこっち睨んでくるのがとても怖いんですけど…




――ペチン!


「いてっ!」

「ちょっとあんた!他人様をそんなに睨まないの!」



おぉ!ウパシさんが頭をはたいた!



「いやだってアイツらこっち見て笑ってんじゃねーかよ」

「何言ってるの、大地人の方もいらっしゃるんでしょ?とても怯えてるじゃないの」

「うっ…」




あのデミクァス様が子供みたい…






だ、だめ、我慢しろ私…耐えろ、耐えるんだ腹筋…





「だーっはっはっはっはっは!おめー相変わらず尻に敷かれてんじゃねーかよ!」

「おいデミ、いつもの威勢はどうした!」

「デミちゃんはまだお子ちゃまだもんねぇ~♪」

「ぐっ…お、お前らいつかぶっ殺すからな!」



あのデミクァス様が顔真っ赤にしてプルプル震えてダメ!ムリ!誰か助けて下さい!!




「てめーも大地人の癖に笑うんじゃねー!くそが!!」

「こぉら!女の子相手にそんな威嚇しちゃダメじゃないの!」

「うぐぅ…」







ダメだ…明日は筋肉痛になりそうだ…




















(5)





















私の村は、ここから幾つかの山を越えた所に有る

そう、シュパロの防壁の遥か向こうだ


場所が場所だけに、巨人たちの動向には敏感なのだけど、今から一ヶ月ほど前、村の近くを帝国の騎士様たちが偵察したら、巨人たちの一部が進攻して来ているらしい

どうやら、数が例年より多いそうだ



去年までは、時々冒険者の方々がここまでやってきて、巨人たちを討伐してくれてたんだけど…




今年は冒険者の皆様も大混乱で、それどころでは無かったと聞いたけど…




それが仇になったそうだ


村の近くに巨人たちが巣を作って、周囲を荒らし始めたんだ…




村で一番強いのが私だった

村長はレベル鑑定が出来るので測定してもらったら、村で一番強いのは私で、24ぐらいだった

帝国の騎士見習いと同じくらいらしい…いつの間に



自慢じゃないけど、昔からお転婆で男勝りだったのは認める

父と母が巨人たちに殺された二年前から、大人たちに交じって魔物討伐手伝ってたし




そりゃあ、女の子らしい恰好とかも、それなりに興味有るけどさぁ…キラキラしたアクセサリとかカラフルな服とか…





ウパシさん綺麗だったなぁ…いいなぁ…





…いやそんな話じゃ無くて!

つまり、冒険者様たちに依頼に行くのに、村では私しか居なかったんだ

帝国の騎士様たちも防衛任務とかに掛かりっきりで、一緒に付いてくるとかは流石に無理だった








「なるほど、そいつらを倒して村を守るのが依頼か」

「は、はい…」



難しい顔をしている…やっぱり無理なのだろうか…いやでもウィリアム様は元からこういう顔って言ってたしなぁ…




「出来れば、周辺の巨人たちも一掃しておきたいですね」

「あぁ、アイテム採取や生態調査もしておきたいな。シロエにも頼まれてるし」




んん?なんか皆さんやる気満々に見えるんですけど?



「問題は補給拠点ですね」

「そうだな…村に着いたら、村長に聞いてみるか」

「腕が鳴りますねぇ」

「血が滾るぜ」






…流石は冒険者の方々、皆さん燃えてらっしゃる…




















(6)





















「ここがあたし達の部屋よ」

「通称『女子部屋』ですぅ♪」

「…男子禁制…だ」



お、おぉぅ…エルテンディスカ様、何時の間に側に…ちょっとビックリしたんですけど…




というか、部屋が凄いんですけど!

見た事無い家具ばっかりで、田舎娘の私でも分かるぐらい豪華なんですけど!

クローゼットが一杯でキラッッキラッした服とかアクセサリとか数えきれないぐらい有るんですけど!!!






ていうか…




「あれがいいかなぁ」

「こっちはどうですかぁ?」





あの…




「私は…これ…」






えっと…





「ワタシハイッタイナニヲサレテルンデスカ」




何時の間にか服をひん剥かれ、豪華な服やドレスを宛がわれている…





『ぷちふぁっしょんしょー』とか言うらしい…






いや、あの、私、着せ替え人形じゃ無いんですけど…





「アーシェちゃんには何が合うかなぁと思ってさぁ♪」

「こういうの、ワクワクしますよね」

「女子の…楽しみ…だ」




戦闘中は自信なさげだったピアニシッシモ様はおろかほぼ無口だったエルテンディスカ様までそんな…





…まぁ、楽しいのは認めますけど、ね?






「処で…」

「ん~?」

「先ほどの報酬ですけど、あれで良かったのでしょうか…?」




バンザイをさせられ、ワンピースを被せられながら、お店での話を思い出す





村から持ってきた銀製の宝剣を報酬にと見せたら、鑑定の結果、レベル20~40までの人間しか装備出来ない物だったらしい



つまり、私しか装備出来ず、レベル90を超える皆さんのお役には立てない事が判明してがっかりしたのだが…




「そうねぇ、ウィリアムと店主さんが承諾したんなら良いんじゃない♪」

「…まぁ、私としても、働き口が見つかったのは有り難い事では有るんですけど…」



働き口…そう、ウィリアム様の提案で、ここで働く事になったのだ




店主さんも、冒険者の皆さんのお蔭で繁盛し、人手が欲しいとの事で、即決だった






何だかとんとん拍子に決まり過ぎて後が怖いような…





「処でさぁ、ウィリアムも言ってたけど、『様付け』は()めない?」

「えっ?でも…」

「『さん付け』で良いわよ」

「そうですよ♪『様』とかって、なんか堅苦しいじゃないですか♪」

「えぇっ!?いや、でも皆さん冒険者様ですよね。そんな畏れ多い事…」




なんたって伝説的な強さを持つ人たちだ



畏敬の念を込めて『様』を付けるのは当然だろうと思うんだけど…




「じゃあ…間を取って『お姉さま』で…どうだ」

「エルちゃん、全然()取って無いよね」

「お、お姉さま…なんかいいですぅ♪」

「え、あの…」



わ、私の意見は…?





なんか決まっちゃった…







浮世姉さま、ピア姉さま、エル姉さま…逆に呼びにくい気がする…




















(7)





















「へぇ~、中々似合うじゃん」

「見違えたよ~」

「はぁ、あ、有難う御座います…」




スカートは何だか照れ臭い…足元がスカスカするし…



普段ズボン穿いてるからかなぁ?




「あの~、ウィリアム様…」

「あ?何だアーシェ?」

「この服、本当に頂いても宜しいんでしょうか…?」



若草色に様々な刺繍が施してあるワンピースを浮世姉さまから頂いた

胸にはエル姉さまが選んで下さったコサージュ

頭にはピア姉さまから頂いた髪留め



他にもお三方から色々頂いてしまった




どれもこれも、素材からして大地人では手に入りにくい物なんだけど…





「あぁ、アイツらが良いって言ったんだから貰っとけ」

「は、はぁ…」

「あとな、『様付け』はヤメロ、背中が痒くなる」




うむぅ…この方は本当にこういう扱いに不慣れであるらしい…




「じゃあ、えっと…ウィリアム、さん?」

「おう、それでいいさ」



お水を渡すとフッと笑ってくれた




冒険者って…普通の人間みたい…?





「処でよ、お前さんの村だが…」

「あ、はい」

「どのくらいの規模なんだ?」

「規模?」

「人数とか、商店の品揃えとか、荷物置けるスペースが有るかとか、そんな感じだよ~」



良く分からないので聞いてみたら、前線基地というか、周辺の活動拠点にしたいらしい





…なんか恐ろしい話になっている気がする




村の大きさかぁ…それほど大きくないなぁ…





このススキノにすっぽり収まるくらいだし、人数だって三桁居ないし…





「あ、でも村の中央には広場が有るし、使って無い倉も2つぐらい有りますよ」

「ふぅん、じゃあ一応置けるには置けるのねぇ」

「そこは交渉次第だな」

「よし、てめーら準備しとけ!明日にはアーシェ連れて飛ぶぞ!」

「「「おー!!!」」」





あの…聞き間違いですか?




明日?飛ぶ?








…えっ?




















(8)





















「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」



なななななななななにこれなにこれなにこれなにこれなにこれなにこれ




わわわわわわわわわわたしそらとんでるそらとんでるたかいたかいたかいたかいたかいたかいいいいぃぃぃぃああああああああああああああああああああああああ!!!!!




グリフォンとかドラゴンとか沢山居るんですけどおおおおおおおおおおおおお!!!




私がドラゴンに乗ってるとかどういう状況なのこれえええええええええええええ!!!!





しかも貰った鎧が軽すぎて不安なんですけどっ!!!




体のラインが鮮明で恥ずかs目が眩むぅぅぅぅぅぅぅ向かい風キツイぃぃぃぃぃ寒いいいぃぃぃぃぃぃぃわあああああああああああああああああ!!!!







浮世姉さま…タスケテ…








「あはははははは!風キツイねぇ~!」




笑い事じゃないんですけどおおおおおおおおおおお!!!





飛ばされる!飛ばされるうううううううううううううううう!!!!!!!



「だいじょぶだいじょぶ♪あたしが持っててあげるからさ♪」



だいじょばないです!だいじょばないです!



自分で何言ってるか分かんないけどっ!




お姉さまにしがみ付かないと飛びます!飛びます!凍り付きますよおおおおおおおおお!!!



「ちょっとスピード落とすか?」

「そうねぇ、あ、ついでに」

「ゆ、指輪…あれ、寒く無い…?」



浮世姉さまに青い指輪を付けてもらった瞬間、寒さが激減した…




…どうせお高いんでしょ?



「とか思ってるんだろ?なんか懐かしいな」

「あ~、テレビショッピングねぇ」




あの、こっちを向いて良く分からない話をするのは良いんですが、飛ばされ…あれ?





「さっきより…ゆっくり…?」

「済まない、ちょっと急ごうと思ってな、あんたが大地人なのを忘れてたんだ」

「急ぐ…あっ」

「アーシェちゃんが村を出てからススキノに着くまで一ヶ月掛かったんでしょ?だったら、状況が変わってる可能性が有るし…フレン君…弟さんの事も心配でしょ?今九歳だっけ?」



浮世姉さまもこのドラゴンを呼び出した細雪さm、ん、も、真剣な表情になった





そうか…最悪の場合も想定してるんだ…






だから空を飛んで…速度を出して…






なんか、鼻がツンとしてきた…




「ねぇアーシェちゃん、ちょっと周り見てみなよ」

「えっ?」

「景色。上からなんて見た事無いでしょ?」

「けし、き…?」





…あっ…






山の尾根があんなに小さく…ススキノの城壁もあんな後ろに…






一面真っ白…ていうか、エッゾの端っこまで見える…






あれが…海…







凄い…








行きはあんなに苦労したのに、狼に襲われて死にかけたのに、その狼があんなに小さく…







太陽が近い…あったかい…









冒険者って…やっぱり…凄い、なぁ…




















(9)





















地上を歩くと一ヶ月掛かったのに、一日で着くなんて…シンジラレナイ…






でも…この状況は…




「ちっ、遅かったか」





村が…瓦礫に変わってる…




「でも、まだそんなに時間経って無いみたいよ」

「うむ、まだ微かに煙が見える」

「生存者の確認と周辺警戒だ!けが人の救出と治療を最優先しろ!中央広場が臨時拠点だ!!!」

「おい、急ぐぞ!!」




体に力が入らない…





視界が歪む…





地面が目の前に有る…






全身の震えが…止まらない…





村が…






…フレン…村長…みんな…






そんな…








「アーシェちゃん!?大丈夫ですか?!!」







――ぜはっ、ぜはっ、、――





胸が苦しい…




息が…出来ない…





ガチガチと音が響く…あぁ…自分の歯が鳴ってるのか…






遠くの方で声が聞こえる…






――アーシェちゃん――






ピア姉さま…?







――おい、アーシェ――





バチーン――!



頬が痛い……ウィリアム…さん…?



「まだ襲撃されてから時間が経って無え、だから諦めんな!最初に俺に出くわしたてめーの運を信じやがれ!」

「ぜはっ…ひぐっ…ぁ゛ぃ゛…」

「私は…信じるよ…まだ…負けた(全滅した)訳じゃ無い、から」

「…あ゛いっ…!」



気が付けば、エル姉さまに支えられて、ウィリアムさんと三人で中央広場に来てた…いつの間に…




生存者がいれば、ここに集めて治療するらしい…誰か居るのかな…





「一人居たぞー!」

「具合は!?」

「重傷だがヒールは掛けた!もう大丈夫だ!」





生存者!?



「あっ…」

「おぉ…アーシェ!アーシェじゃないか!!」

「おじさん!!!」




向かいに住んでたおじさん…




手を握った私を、昔みたいに抱きしめてくれて…あったかい…




「無事だったか!そうか、良かった、良かった…!」

「みんな、ぼうけ、んしゃの、人たち、だよ…助けに、来て、くれ、たんだ、よ…」



声が掠れる…上手く話せない…でも、おじさんは頷いて聞いてくれてる…本当に良かった…




「ノイマンさん、か…一体何が有ったんだ?良かったら教えてくれないか」

「は、はい、実は…」





おじさんの話だと、二~三日前から巨人たちの活動が活発になり、とうとう今日になって村が襲われたらしい

皆、あらかじめ話してあった避難場所に向かって逃げたそうだ



「避難場所?」

「あ、はい、こういう事態に備えて、村の隠れ家みたいな所を幾つか作ってあるんです」

「多分ですが、皆分散しているかと…」




それを聞いた途端、ウィリアムさんが念話を掛け始めた…多分、捜索とか情報共有とか?してるんだろう…








結局、壊滅した村で生き残っていたのはノイマンおじさんとヘラおばさんだけだった…





皆無事だといいけど…






避難場所は、村の近くに幾つか有る洞窟だ

村から見ると、北、南東、西の三か所



でも数時間前なら、まだ着いてないかも知れない…




丁度三人居るので、三班に分けてそこに行く事になった

私は南東の避難場所を案内する

まだそこに到着してない可能性が有るので、歩いて行くそうだ




フレン…無事で居て…お願い…




















(10)





















「あれは…!」

「洞窟だ!」




見えた!

こっち側の避難場所!




途中には誰も会わなかった…




皆無事だと良いけど…






雪が深い…足が取られる…もっと、速く歩きたいのに…




「大地人…が、居る…」

「本当ですか!?」



エル姉さまの呟きに胸が高鳴る




フレン、皆…!





「アーシェ!」

「お姉ちゃん!」

「村長、フレン!」



フレンが飛び込んで来た!



しっかり受け止めよう…




弟の温もり…




あ、ダメだ、涙が止まらない…




「こっちは全員()るでな、一人もはぐれたり死んだりしておらんから大丈夫だ」




良かった…こっちの人たちはみんな無事みたい…





「あぁ、こっちは見つけた…脱落者は無し、取り敢えず周辺の警戒に当たる」



ウィリアムさんが念話をしている

多分、他のチームと連絡を取り合っているんだろう



「あの方々が…?」

「はい、冒険者の方々です。<シルバーソード>という家紋の方々で、今回、私たちの依頼を引き受けてくれました」



私の話を聞いた後、レベルを確認したらしい村長が言葉を失っていた




まぁ、全員レベル90を超えてるしなぁ…




レベル95の人も居て、村長の話を聞いた大人の何人かが腰を抜かして拝んでさえ居る…




いや、あの、神様じゃないんだけど…



だから土下座とかしなくていいから!皆困ってるから!




「これからどうするの?」

「うむ…ほとぼりが冷めるまで待機だな…他の皆が無事なら良いが…」



フレンと村長の会話が聞こえてくる…言われてみれば、一体どれくらい掛かるんだろう…




取り敢えず、ウィリアムさんたちが安全を確認して、巨人たちを討伐してくれるまでかな?



再会を喜んでいる間、ウィリアムさんやエル姉さまたちがあちこち立ち回って何やら忙しそうだ

聞けば、周辺の偵察とか他のグループとの情報交換などをやっているらしい



何も手伝えなくて恐縮だが、これは仕方無い部分も有るのだろう




流石に力の差が有り過ぎる





私もレベル上がったら色々手伝えるのかな…?




「巣を見つけた?何処だ!」

「ギルマス…行くか…」

「レベルは40~60、ランクはソロかパーティレベルだけらしいが…そうだな、俺たちも行くぞ」




冒険者の戦闘…ちょっと興味有るって言ったら怒られたりするだろうか…




足手まといなのは重々承知している…



けれど…好奇心は有る…




「あの、場所は何処ですか…?」

「あぁ、あそこの盆地だ」

「アーシェちゃんもしかして興味有りますか?」

「へっ?…あ、いえ、えと、その…」



顔に出てた…あぅ…



「あ、わ、私、足手まといですし…」

「じゃあ、これあげます」

「へっ?」



何だこれ?軟膏?


「フェアリーパームって言って、夜目が利いて、暗闇でも見通せる様になるんですよ♪」

「な、なんとぉ!?」



効果は24時間!?


そ、そんな物が有るなんて!?



ついでに双眼鏡も渡されてしまった…




因みに双眼鏡(これ)が有ればここからでも見えるらしい

位置的に障害物が少ないそうだ




色々持ってるんだなぁ…本当に冒険者って凄い…





「何人かは各拠点の見張りだ!巣を叩くメンバーは現地で合流!行くぞ!」

「はい!あ、えっと…アーシェちゃん」

「何でしょう?」

「ススキノに帰ったら、またお洒落しようね」

「は、はい!是非!…あ、お気をつけて!」




ピア姉さまに手を振ったら振り返してくれた…




私は信じる…あの方たちなら、絶対に勝てる…








処で、『ふらぐ』って何だろう?

ピア姉さまが笑われてたけど?




うーん…やっぱり冒険者の方たちの文化は良く分からない…後で聞いてみようか…




















(11)





















頂いたアイテムで盆地が良く見える…




あっ、皆さんが合流した!





ディンクロンさんや羅喉丸さんが光った…巨人たちが殺到してるーーー!!!




でもそれをものともしない…凄いなぁ…





デミクァスさんがあちこち跳び上がってエル姉さまたちが斬りつけてウィリアムさんたちが弓矢を放って召喚獣やら魔法の光やら





目まぐるしい…もう何が何だか分からない…




まるで作業の様に敵を倒していく…





これが…







冒険者の戦い…







あれよあれよと言う間にモンスターの数が減って行く…



巨人も、凶暴な怪物たちも、どれもこれもが、泡となって消えていく…





一方的な蹂躙…やっぱりあの人たちは凄い…



まるで、敵と雪原を切り裂く巨大な剣みたいだ…




「お姉ちゃん、何見てるの?」

「あぁ、冒険者の方たちの戦い振りを見てたのよ」

「えっ、見えるの!?」



ピア姉さまに頂いた軟膏と双眼鏡を見せたらせがまれた…




戦を見たいだなんて、全く男の子はこれだから



「何だよ、お姉ちゃんだってめちゃくちゃ興味持ってんじゃん!」




ちっ、ああ言えばこう言う

クソガキめ、そういう年頃かやれやれ



五月蠅い弟は村長に預けよう、今は戦況の方が気になる…





それにしても、皆さん凄いなぁ…



誰かが下がった所に魔法を放ったり…




これが連携と言う物か…私たち大地人とは丸っきり違うなぁ…






あっ、感心している間に残り一体になってしまった…何時の間に…




でもあの巨人、他のより一際大きい…あんなの倒せるのかな…




















(12)





















…心配無かった…




流石に他のモンスターよりは苦戦したみたいだけど…





それでもあっという間に倒してしまった…






す、凄い…としか、言い様が無い…







「すげー!かっこいー!!」




フレンも、時々見せた所為か、興奮しきりのようだ

言っておくが、連れて来たのは私だぞ



「お姉ちゃんは連れてきてもらった(・・・・)んだろ」

「何だと!?」


本当に生意気なガキだ、一体誰に似たんだか



「アーシェとフレンは本当に似とるのぅ、やっぱり姉弟(きょうだい)じゃな」


村長、傷つくから()めて下さい



あああああああああ皆も笑ってるうううううぅぅぅぅ…




「アーシェちゃん!」



あっ、ピア姉さまたちが戻って来た


「ピアお姉さんもすげー!」

「えっ?そ、そうですか?」


フレンがピア姉さまの周りを回る…


気持ちは分かる

私も正直興奮している



「はい、とても凄かったです!」

「なんか照れちゃいますよぅ、えへへ…」



たった十数人であんなモンスターの大群を倒すなんて…



なんか憧れてしまう…





「連中は排除したぜ。一応周りを探索してるがな…まぁ問題は無いだろう」

「有難う御座います!有難う御座います!」



村の人たちの感謝が凄すぎてウィリアムさんがタジタジなのはなんか笑えてくる




「処で、報酬はどうしたら…?」

「あ?報酬?」



ん…?




「今回村を助けてくれた上に巨人討伐までして頂いて…」

「あぁ~、その話か…」




ウィリアムさんがこっちを見る…まぁそうですね…




でもそう言えば、皆には事情話して無かったな…突然だったしな…




ちゃんと説明しないとな…






「…と言う訳で、報酬については解決しましたよ」

「お、お前…」

「はい?」

「いかがわしい事なんぞやってないだろうな!?」


いやしてませんから村長!


そんな涙目で手を握らないで下さい!



酒場で働くだけですから!




皆いい人たちですから!







……多分…






「姉ちゃん、いかがわしい(・・・・・・)ってなぁに?」






……フレンは知らなくて良いのよ、うん…食べ物じゃないから…





合流した浮世姉さまたちが笑ってる…あ゛~恥ずかしい…全くフレンと来たら…




















(13)





















村はウィリアムさんたちのご厚意で復興出来る事になった



正確には、ススキノの冒険者の方々に話をして協力を取り付ける算段らしい

その代り、村の倉庫に物資を運んで、周辺地域防衛の拠点にしたいとの事だ



そしてフレン()は一緒にススキノに連れてってくれると言う



何ともお優しい方々だ…




『あふたーさーびす』とか言うのは良く分からないけど…





まぁ、私も奉公先見つけたし、村も復活するみたいだし、一応大丈夫かな…





「済まねえ、もっと早く来てりゃあ、助けられたと思うが」

「…それは…仕方有りません…」




村長とウィリアムさんの会話から察するに、どうやら今回の襲撃で死んでしまった人たちが何人か居るようだ…



けど私たちは『大地人』だ

大地と共に生き、大地に抱かれて死ぬ…





モンスターに襲われて…嵐が来て…ふとした怪我、病気…





それでも、私たちは生きていかなきゃいけない


だって、私たちは大地人で冒険者じゃないから…





それでも…この方々の強さを見たら、やっぱり思ってしまう…






私も…強くなりたい…





あんな風に…まるで雪を切り裂き、魔物の絨毯を細切れに引き裂いて行く様に…







大切な人たちを守るために…







「んじゃあ戻るか」

「うっす」




「あの…」

「…ん?アーシェちゃん?どうかしましたか?」









「ススキノに戻ったら…ご相談が有るんですが…」






――終――

あぁ長かった・・・orz

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