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ポキー&プリーツ・デイ・ストーリー

「じゃーん」

「………どうしたの、急に」


 11月、雨が降る放課後、文芸部の部室での会話。


「わからない? ポキーだよ」


 たった二人しかいない文芸部、部員の男が言う。


「あー、そういえば今日、ポキー&プリーツの日か」

「そそ。というわけでポキーゲームしようよ!」


 そう提案する彼は、いつも楽しそうに微笑んでいる。




「ね、ねえ、ほんとにやるの……?」

「なあに、はずかしいの?」

「あ、当たり前じゃん……」


 普段は小さな部長の少女が、大きな部員の少年の膝に座りダラダラとしているのだが、今日は違った。

 椅子を2つ、向かい合うように並べ、2人は見つめ合いながら座っているのだ。


 カーディガンの袖からのぞく指をにぎにぎとし、俯きがちに顔を染める少女。

そんな少女を可愛がるようににやける男は、ポキーを1本取り出した。


「さあさあ、男なら覚悟決めなさいよ」

「も、もう女だし!」


 クスクスと笑う彼氏に、少女は必死に反論した。


「はい、あーん……」

「ん……」


 しかし、チョコ側の端を差し出せば素直に口に咥える。

 それを確認した彼氏は、生地側を咥える。


 チラチラと少年の目を見たり、恥ずかしそうに逸らしたりと忙しない少女に、彼氏は「よーい、ふぉん」とスタートを告げた。


 ──カリカリカリカリ


 結果、少年の顔ではなく、2人の間のポキーに目線を落とし、小口にかじり始める少女。

 一方の彼氏は、それをにやにや眺めるまま動かない。


(うわー、毎度の事ながら、本当に元男だったのか信じられないほど可愛いなぁ)


 そう思いながら、リスのようにカリカリと食べ進める少女を眺めていると、その動きが鈍くなった。

 どうしたのかと思ったら、少女の目線はポキーから、その先で待ち受ける少年の口に移されていた事に気が付いた。


 少女の顔は、ゆでだこの様に真っ赤になっていた。



 プチン



 はたしてそれはなんの音か。

 頭の中で何かが切れる音がしたかと思うと、少年はパクりパクりと一気にポキーを口に収め、そのまま少女の口に吸い付いた。


「〜ッ!?!?」


 声にならない悲鳴をあげる少女。そんな彼女の顔を両手で挟み込み、舌を伸ばす彼氏。


 んっ、んっと高い声をあげる少女は、いつしかとろけるような表情に変わっていた。



「っふぅ……ごちそうさまでした」


 つやつやとした顔でそういう彼氏。

 一方の彼女の顔は────彼氏によって、そっと隠されてしまった。

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