重層スラウ(4)
暗幕に隔てられた先から太陽のように激烈な照明が点灯したのかと、僕は思ったのである。
渋々眼を開けるというよりは、頑なに閉じていた瞼をペンチか何かで強引に抉じ開けられた感じだった。
無理やり押し付けられた景色では、昼白色の蛍光灯が天井の木目を洗い流すように輝いていた。
それが僕を覚醒へと導いた物体だ。
眩しい、と僕は思った。
実際にそう口にした。すると、右前方で声がした。
「眩しいか……。人が眩しいと感じる光量の閾値はどの程度なのだろう。苦痛に感じるのは、逆に快感を覚える光の強度はどのくらいのものなのだろうか?」
僕は質問をされている。質問には答えを出さなければと思い、まだ明るい世界を受け入れようとしない瞳で声の主を探した。
部屋だ。僕は部屋にいる。家具や調度品は生活に必要な最低限度のものしか見当たらない。小奇麗というよりはある種の信念のようなものを感じる。壁際にはやはり簡素なシングルベッドが設置されていて、蛍光灯に晒されて皺を洗われたシーツの上に一人の男が座ってこちらを見ていた。
「ああ、藤堂さん」
見知った顔を見付けたことで精神的な緊縛は解かれたが、肉体の拘束はまだ結ばれている。僕は背中に回された両腕の戒めをどうにか解こうとしてもがいてみた。タオルのようなものでグルグルに巻かれ一本の腕となった両腕は、必死の抵抗にもまるでビクともしなかった。
「藤堂さん、これ、解いてくれないかな。腕が痛くて仕方がないよ」
僕は甘い猫撫で声を出して彼に訴えた。こう発声すれば彼の良心を揺さぶることができるのではないかという目論見であったのだが、銀縁メガネの裏に潜んだ瞳の鋭さは微塵も錆びることがなく、「うるせぇよ」と、足元に縋り付いてきた野良猫を蹴とばして追い払うような冷たい声で藤堂さんは応対した。
「お前の腕が痛かろうと引き千切れようと、俺には関係がないだろ」
「でも、すごく痛いんだ……」
涙声になった僕の哀訴にも藤堂さんは眉一どころか瞼すら動かさず、唇だけを動かして言葉を吐き出した。
「自分が受けている感覚なんてもんはな、言葉だけじゃ伝わらねんだよ。路地裏で殴られている奴を見たとして、お前はその視覚情報だけでそいつの痛みを正確に理解できるのか? 出来ねえよ。出来たとしても、精々『痛そう』って感想を抱いて、今まで自分が受けたどの痛みに相当するのか想像して置き換えるくらいだ。見ているだけじゃ同じ痛みを共有することは不可能だ。だからお前も俺に腕の痛みを訴えることはよせよ、お前がいくら痛がっても俺は痛くないから」
じゃあ解放してもらうには、僕はどうすればいいのだろう。いいや、そんなことより、僕は藤堂さんに訊かなければならないことがある。
「ねぇ、藤堂さん」
停めた息を舌先で操るようにして言う。
「僕たちの関係はもう、終わりなのかな?」
僕の言葉に鉄面皮を保っていた藤堂さんの表情が初めて怯んだ。フレームの上にある柳眉が傾ぎ、閉じられた唇に僅かに力が籠ったその顔から、僕は自分の発言が当を得てしまったことを確信した。
「そっかぁ」
心のどこかでこの日が来ることをずっと覚悟していたのか、口から零れた言葉は自分でも驚くほど平穏だった。それが唯一の救いだと思った。ここで泣きながら現実を拒み、取り乱してしまうようなことがなくて本当に良かったと思った。
藤堂さんは感情が面に出てしまったことを察知して、ばつが悪そうに僕から目を逸らす。僕はその三日月のように整った横顔に熱烈な視線を向け続ける。眺めれば眺めるほど愛おしく、僕は本当に藤堂さんのことが好きなのだということを胸が焦げるほど痛感した。
という同性愛の少年が心中で行った告白を『僕』は天井から見下ろしている。
『僕』とは、部屋の片隅で拘束されている彼のことではなく、今まで物語の視点を勤め上げてきた『僕』であることは、わざわざ詳述しなくても理解に難くないだろうが、それにしても唐突なので、僕は今一度、情報を整理することに努めようと思う。
書籍を抱えた鳴篠栞菜との会話から、僕はあることを確かめるためにアパートの裏側にある墓地へと赴いた。湧き上がってくる感覚を頼りに目を付けた場所の土を掘り返していたところで、突然僕は後頭部に衝撃を受けて気を失った。そして目覚めると、部屋の天井から先ほどの場面を俯瞰していた。
さて、状況把握をするにあたって何が一番大事であるか。周囲環境の知覚的分析も重要であろうとは思うが、僕は己の立ち位置を可及的に認識することを勧めたい。ここで述べる立ち位置とは、立地や足場といった具象物のことでは勿論なく、その場の状況で己が取るべき立場のことであり、それをいち早く確立することが殊に大事であると僕は思っている。
今現在、僕が取るべき立ち位置とは観測者である。それは外から金魚鉢を眺める側を指し、対象は部屋にいる僕以外の二人の人物、藤堂と拘束されている少年ということになる。
「そういうことだ」
淡白な藤堂の声の裏に、溶解したキニーネの結晶のような苦々しさが滲んでいることは観測者の立場から知りえたが、その忖度はあくまでも推測の域を出ないものであった。
「僕はこれから、どうなるのかな?」
それに対し、藤堂に熱い眼差しを向けたままそう口にした少年の想念は、赤子の感情を読むように理解できた。彼の頭中では、今まで藤堂と過ごしきた蜂蜜のように甘く粘質な蜜月の日々と、性染色体のヘテロの壁を越えた禁断の行いが走馬灯のように繰り広げられていた。
以上のように、二者を通した観察深度の相違は、僕が均整の欠いた観測者であることを告げていると思った。つまり僕は観測者として、あの少年に寄りすぎているのだ。この事実は、僕が形而上からの視野を持ち得ている超自然的な存在に昇華されたのではなく、一人の少年の深層意識を読み進める一読者に過ぎないことを暗に述べている。
読み進める、これも意味合いが少し異なる気がした。言うなれば、本棚に収めた小説の読み返しに近い。そう、これは記憶の想起なのだ。世界の宇宙の惑星の地球の大地の国の人々の人の少年の記憶であり、僕の記憶の想起だ。
僕は藤堂さんの言葉を静かに待つ。あの唇から零れるどんな言葉も受け入れるつもりだった。例えそれが絶縁を表す言辞であろうと、飽食を原因とした嫌悪であろうと、僕は喜んで授受する心積もりだった。
「引っ越してくれないか、このアパートから。それを約束してくれるなら、その戒めを解いてやる」
覚悟していたよりも穏やかな処置が、何よりも平静の刺々しい語調が柔らかな綿に包まれていることが、最悪の対処を想定していた僕の心に隙を作った。このまま緩和な処置に縋れば、またいつの日か途切れた関係は元通りになるのではないか。そんな甘言がぽっかり空いた隙の空洞を衝いて木霊した。
けれど僕は胸に空いたその隙を、虚のようなその隙を、セメントのように硬い愛情で埋めた。好意に甘えていては、同じ過ちを繰り返し、また彼に迷惑をかけてしまう。そうなってしまうのなら、僕は。
「分かったよ、藤堂さん。僕は今すぐに、このアパートから引っ越すことにするよ」
「そうか」
緊張が解けたのか藤堂は鉄のように固めていた表情をやや緩め、音も立てずにベッドから降りる。少年の顔は見ないように目線を逸らしながら背後に回り、腕に巻かれたタオルを外した。少年は立ち上がり腕を擦ってまだそこに接合されていることを確かめ、後ろにいる藤堂にさようならと消え入りそうな声を口にして部屋を後にした。
藤堂の部屋である一〇一号室から廊下に出た少年は、芯の堅い足取りで角を折れ一〇四号室に向かい、扉を開ける。どうやらそこが少年の部屋であるようだ。
室内は僕が入居した際とは異なり、生活用品が片付けた本人にしか分からない法則に則って散乱している。その雑多さこそが正しく生活感の正体であることは言わずもがなである。
注目すべきは、生活の跡が散見する八畳半の部屋の中央に暗黒色の染みはまだ存在していないことだ。そして少年は、これからその個所に黒い染みが着くことを予見しているかのように部屋の中央に立ち、天井で錯綜している老人の骨のよう梁を数秒の間見上げていた。
少年は革のベルトで首を括った。
その動作は瞬きの間に終わっていた。
迷走神経と頸動脈の圧迫により少年の意識は脳から搾り出され、既に憂き世から離れていたが、少年専属の観測者である僕の意識はまだ空に浮くことなく繋ぎ止められており、少年と天井を繋ぐあの革のベルトこそが、僕をこの場に繋いでいるものなのかも知れないと思った。
醜悪な部位も険しい様もなかった少年の面立ちは、細い首を締め付けるベルトによって血流が滞り、農薬で無理やり肥やされたトマトのように膨張し始め、二つの眼球は農薬を嫌って飛び出してきた虫のように眼窩から突出した。血液の行き場がなくなった顔面は今にも爆散してしまいそうな危うい拮抗を保っているが、身体の方はその状態とは相違し、身体中の体液は弛緩した肛門から放水され、まだ体温を宿した糞尿は薄靄を発しながら少年の下着とズボンをしとどと濡らしていた。
足先から滴る搾汁は、衣類の繊維を通過する際に濾過作用を受けたのか固形物が取り払われた完全な液体となって足元の畳に零れ、凸凹に編み込まれた表面を波紋のように伝い、幾重にも年輪を作りながら拡がり、引き絞り出された命の染みを形成しようとしていた。
その染みが僕の知る形状と似通い始めたとき、部屋の扉がゆっくりと開き、アパートを去ってしまう少年に何か最後に言い残すため訪れたのだろう、気難しい顔をした藤堂が部屋に入ってきた。
踏み入った瞬間に藤堂は吊られた少年を発見し、垂直に伸びるそれを茫然と見つめた。茫然と評したものの傍から見れば藤堂の表情は平素と比べて変化のないように思えた。思えただけで彼の心中を探ることはできない。ただ、彼は部屋に充満していた臭いが、扉が開かれたことで廊下へと流れ出ようとして鼻先を掠めていった際に眉尻を少しだけ下げた。
糞尿の臭いが廊下へ漏出してしまうことを懸念したのか、藤堂は後ろ手に扉を閉めて部屋を密閉した。途端、廊下からの明かりが断たれた室内は仄暗く遮蔽され、散らばった生活用品たちは主の消失に不安げな影を畳に落とした。使い手を亡くした数々の物品は生活という装飾をも同時に喪失し、用済みの判を押されたことを知ってさらに肩を落とす。
藤堂は力なく三和土の地べたに座り込み、メガネを外して明瞭な視界を手放してから、もう一度掛け直して吊るされたそれを見上げたが、やはりそれはそれでありそれでしかなくそれであった。
部屋の何処かから時計の音が小さく鳴った。鳴ったのは藤堂の腹の虫も同じであった。それほどまでに時が経過していた。それほどの間、藤堂はかつて少年だったものから目を逸らさなかった。少年の背後にある窓から青い光が射し込んだかと思えば、朱色の光に変色し、鮮血のように色濃くなったかと思えばどす黒い色に変わったと察知した瞬間には再び最初の青色に戻っていた。その繰り返しがもう数十回も起こっていることに藤堂は気付いているのだろうか。彼の顔に苔のような無精髭が目立つようになってから久しく、それは少年が少年でなくなってから経過した時日の長さを物語っていた。
それでも藤堂は瞬きも忘れて時の移ろい眺めていた。生者が死者に、死者が腐体になる様を瞳が乾燥し悲鳴を上げるまで無心に眺めていた。
少年の頭がつるべ落としのように畳に落下したとき、藤堂は始めて双眸から無色の雫を零した。二つに分裂した少年の身体は水っぽい音を立てて畳に横たわり、頭部は転がることなく畳に張り付いた。藤堂はようやく腰を上げ、自分の部屋からビニール袋を持ってきて少年だった頭部を封入し、身体だったものはアパート裏に面した墓地の片隅に埋葬した。
その後、藤堂がアパートの黒電話でどこかに電話をかけると三十分ほどして作業着を着た数人の男が一〇四号室の清掃と荷物の運び出しが始まった。部屋から家具や生活用品が切り取られていく都度、生活感という外観に起因する根拠のない風味のようなものが失われていく。
全て終わった後、少年の気配も名残も匂いもなくなった後、畳には何かの目印であるかのように、これから重ねられていく二人分の血痕の所在を示すかのように、黒い染みが薄っすらと残っていた。
少年が絶えたことで観測者としても僕はもう用無しのようだ。視野から明度が絞られていき、客席から暗幕の内へとフェードアウトした。このまま漆黒の淵へと気絶でもしてしまうのかと思ったが、僕の意識はまるで夢から現実へと直帰したかのように継続していた。
狭い穴蔵に丸め込められているかのように全身が窮屈だった。無理に捻じ曲がった首や膝が可動域の限界を告げ、腕には切り傷でも出来ているのかジクジクとした血の痛みが発せられている。視界はまだ暗転して――。いや、僕は目を瞑っているのだと思い当たり、瞳の蓋を押し退けて開眼する。
それでも視界は不確かだった。まずは首の位置を移動させようと思い、痛みのない楽な方へ移動させる。すると、穴の上方で灯っている光が目に映った。
穴。そうだ、僕は穴に落とされていたのだ、と今更になって現状に至った経緯を想起する。それほど深い穴ではなかったはずであるから、立ち上がれば容易に抜け出せるはずだ。身体の節々を痛苦から解放するために僕は上体を起こして屹立し、穴底から這い出した、が。
僕は何故か部屋にいた。
越してきたばかりで家具も何もないあの質素な部屋だ。
違う、何もない訳ではない。
一つだけあるものがある。
僕は目線を下に向け、あるはずであるそれを探したが、なかなか見出せず不思議に思っていると、自分が立っていた個所が部屋のほとんど中心であることに気が付いて足元を見下ろした。
黒い染みは僕の真下にあった。
まるで、先ほど僕がそこから抜け出してきたかのように、まるで僕を生み出したかのように、黒く塗り重ねられたその染みは、長年連れ添った相棒の影となって足裏に癒着し親和していた。
僕の再来をアパートは軋みを上げて歓迎した。天井の梁や部屋を仕切る壁、隙間なく敷き詰められた部屋の畳と廊下の床板が、再び胃の腑に収まった獲物を味わうように凝縮して喜んでいた。窓は暗黒を描いた絵画となり、本来の役目を放棄したただの装飾に成り下がっていた。それを見て僕は思う。
僕は閉じ込められている。
いや、僕たちは閉じ込められている。
途端、瓶詰めにされたジャムのような閉塞的な気分になる。ただでさえ甘ったるい果物を砂糖で煮詰めて容器に密閉する。その甘さは、好きな果物を自分好みに味付たエゴイズムのような寵愛だ。
きぃ、と蝶番の音がして部屋の扉が開く。来訪してきたのは、メガネの先の目を鋭く研いだ藤堂だった。
彼は「よお」と、街角で旧友と出くわしたかのような軽い調子で口にする。しかし表情は窒息に追い込まれているかのように険しい。それはそうだ。彼だって僕と同じ、瓶に閉じ込められたジャムに過ぎないのだから。
「答えは、分かったか?」
部屋に入った藤堂は何もない室内を懐かしそうに眺め回して言った。
「それは、殺されたのは三人で死んでいないのは一人、という鳴篠栞菜が口にしたヒントに対する答えですか?」
それとも、僕たちがここに閉じ込められている理由ですか? とは口にしなかった。
藤堂は部屋に上がらず三和土で立ち止まっている。そうすることで僕の逃げ道を塞ぎ、現実から逃避することを人為的に防いでいるかのようだ。
「そうだ。殺された三人と死んでない一人、その意味をお前は理解したのか?」
「しました」
「受け入れたのか」
「受け入れました」
「俺が言うのも何だが、信じられるのか?」
「信じられないものを信じることで、先に進む場合もあると思います」
「そいつは、大そう殊勝な心掛けだな」
藤堂は一瞬だけ目尻を緩め、それを隠すように背を返し「それじゃ今日からよろしくな。新しい住人さん」と残して部屋から出て行った。
つい先ほどまで家鳴りを発して騒いでいたアパートは、狸寝入りをしているかのように静まっている。
音もない。
風もない。
静々とした静寂だ。
寂々とした静寂だ。
僕は染みの上から一歩退く。
黒い染みがゆらりと現れる。
今、ここにあるのは、黒い染みとそこから剥がれ落ちた僕だけだ。
僕は痛みの和らいだ腕を上げ、傷口を確かめる。肘の外側に小豆ほどの瘡蓋ができていた。僕はそれを僕のように引き剥がす。傷口に張り付いた瘡蓋と剥がれた瘡蓋は英語では区別されるらしいが、僕の指先に摘ままれた矮小なこれが、瘡蓋であることには変わりない。僕のように変わりがない。
この物語の終結はこれでいいのだろうか、これで正しいのだろうか。
そんなことを真面目ったらしく、考えてみる。
例えば、今からここで首を括った方が幻惑的な余韻を残したまま終われるのではないだろうか。例えば、気が触れたかのように頭髪を掻きむしり、奇声を上げてアパートから転び出て夜の街に溶け込んだ方が、全ては僕の妄想という多少は腑に落ちる形で締め括れるのではないだろうか。例えば、今まで起きた出来事を推理小説のように事細かに説明し、読み手を納得させた方が綺麗な終結と言えるのではないだろうか。
物語の終結は他にもまだまだ存在するだろうが、考え付いた全ての結末は読み手を楽しませるためだけに作られた人工物のように思えて仕方がなかった。意図的に作りだされた美麗で優雅で巧緻に長けたそんな結末は、外側では称賛を浴びるのだろうが、内側から見つめれば、とてもつまらなくて興醒めしてしまうものばかりであった。金魚は金魚鉢の先から眺めている人々を楽しませるために生きている訳では決してないだろう。彼らはただ自分たちの世界で生きているだけなのだ。それを面白おかしく描写する必要性は果たしてあるのだろうか。
それでも進行を務めてきた僕は、この物語をどうにかして終わらせなければならないので、足元に屈み込んで先ほど剥がした瘡蓋を黒い染みに重ね、アパートの傷に蓋をする。そうすることで、一先ずはこの物語を落ち着かせることにした。
取って付けたかのように後日談を述べるなら、翌朝、共同台所で出会った藤堂は気持ち悪いほど親切で、一〇二号室の青年――後に、鏡居双太という名前であることを知った――は、やけに僕に懐いていて、鳴篠栞菜は相変わらず本で顔を隠していて意味深な言動をしていた。
まだ見ぬ住人達も彼らと大差ないのだろうと思うと心労が絶えないのだが、まぁそれはそれで次回の僕に託そうと思うのである。
次回は『幽炭酸クラブ』という物語を練り歩くつもりである。題名は仮称なので変更されることもあると思うが、概ねの流れは決まっている。
大学に行った僕は、友人に唆されて炭酸クラブという怪しげなサークルへ連れて行かれる。そこには、アパートの住人の一人と、何故か佐藤飴子がいる。何か事件が起きる。恐らくは殺人事件で、現場は密室である。今回の流れでご理解いただけたと思うが、この物語のコンセプトは推理小説という体裁を取った不定形で不確かな読み物である。難解な謎を吹っ掛けてそれを平然と無視するようなことも多々あるだろう。それでもいいと言う奇特な人がいるのなら、僕はその人の人格を疑うが、それでも嬉しくは思うので拙いながらも物語の進行を務めさせてもらおうと思う。
それでは、今回はこれで終わろう。
実は、数年前に書いて放置していたものを発見して書き直した一作でした。前半と後半で雰囲気が異なるのはそれが原因かもです。
今後の予定として、これとは別の中編(短編?)を二作投稿した後、この物語の続きを書くつもりです。
感想、意見、アドバイス等ありましたら是非お願いします。