ピンポン
慎ちゃんが引越し業者に荷物のことを話しに行ってしまった。
そういえば、あきちゃんの駆け落ちした相手聞いてないや。てか、やたらとこの部屋とか詳しかったな。戻ってきたらいろいろ聞かないと!
とりあえず、慎ちゃんが戻ってくるまで部屋をみて何をどう置くか決めることにした。じゃないと物置部屋行きの家具とか荷物とかわかんないし。
部屋を物色していると奥まったところにあるベットの上に、小さな箱が置いてあった。開けて中を見てみると、ディスクとメモ。「あとを頼むね。」と書かれていた。
「あとを頼む」って、どうすればいいのさ?不意に感じた心細さに、なんだか泣きたくなった。
ピンポーンピンポーンピンポンピンポンピンポンピンポン……
突然チャイムが鳴らされた。最初の二回は普通だったのに、次から連打。慎ちゃんならチャイム無しで勝手に入ってくるだろうし…一体誰なんだろう?
ったく、感傷にも浸れないのか…今日は厄日だ、マジで。
ピンポンピンポンピンポンピンポンガンガンガンガン……
ついにチャイムが激しすぎるノックに変わった。借金の取り立てみたいなんですけど。いずれ、扉が破壊されるんじゃなかろうか。しょうがない、出るしかないか。
ガチャ
真「どちら「あきさん、店の鍵あいてないんだけど⁉」…ですか?」
玄関を開ければ、茶髪の明らかに『遊んでます』的なチャラ男がいた。
真「……どちら様ですか?」
チャラ男「アンタこそ誰?あきさんは?」
真「あきさんは居ません。朝っぱらからチャイム連打した上に、扉壊れるんじゃないかってくらいぶっ叩いてくれた貴方こそ誰ですか?」
チャラ男「いや、あの、その…ゴメンなさい。えっと、俺はこのアパートの住民の佐々木です。」
真「そうですか。今日から此処に住む浅倉です。よろしくお願いします。」
佐々木「ああ、こちらこそ。だから引っ越しのトラックあったのか。俺、5号室。アンタは?」
真「此処です。」
佐々木「此処?」
真「この部屋。」
佐々木「この部屋って、あきさんは?」
真「居ません。駆け落ちしました。」
佐々木「エェェエェー!?」