再会
引越し業者の存在を忘れて、ひたすらワンコ達と戯れていると、門の中から声がした。
「……………もしかしてマコ?」
顔を上げれば背の高い男の人。誰だコイツ?でもこの声は聞き覚えがあるような……
真「慎ちゃん?」
慎「やっぱマコだ!!久しぶりだなー。大きくなってたからわかんなかったよ。」
真「慎ちゃんもボサボサの髪でわかんないよ。てかまず髭を剃れ。」
慎ちゃんはあきなさんの幼馴染み。慎ちゃんの他にもう一人、晴樹くんという幼馴染みがいる。3人はよく小さい私の面倒をみてくれていた。
慎「ところで、お前こんなところで、どうしたの?」
真「慎ちゃん聞いてよー。あきちゃんが、経営してたアパートとカフェを私に託して駆け落ちしたしたー。」
慎「えぇぇえぇーー⁉」
懐かしさと知り合いに会えた安心感で、思わずあきなさんをむかしの呼び方にしてしまった。
真「朝起きたら荷物纏められてるし、頼んでない引越し業者いるし、マンション解約してあるし、手紙と鍵2つと通帳とカツラとサラシ置いてあるしー…。」
慎「マジかよ?ちょっとその手紙と鍵2つ見して。」
ささっと手紙を読むと頭を抱える慎ちゃん。顔を覗き込めば、何故か頭をナデナデされた。
慎「大変だったな。驚いただろ?俺もまさかあいつ等が本気だとは思わなかったから、ちょっと動揺してるわ。」
真「ほんっとにビックリした。寝起きなのに一気に目覚めたわ。……ん?あいつ等って、慎ちゃん、あきちゃんの駆け落ち相手知ってんの⁉」
慎「えっ?お前知らないの?」
「すみませーん…荷物どこ運べばいいですか?」
申し訳なさそうな声に、後ろを振り向けば、完全に空気と化していた引越し業者だった。