引越し業者に罪はない。
大家さん④
プルプルプルプル…
「ふ、フッざけんなぁあーっ!!」
あンのカマ野郎、いつか絞め殺すッ!!
ここで補足説明をしよう。
今の『あンのカマ野郎』=手紙の差出人『あきな』であるが、その全ての厄介事をまことに押し付けて恋人とハワイに行った人物はまことの母方の叔父、つまりまことの父親が「たまに面倒見てやって。」と頼んだあの今は亡き母親の弟である。
そして皆さんもうお気付きだろうが、彼はオカマさんなのである。
ついでにいえば、彼が……いや彼女が経営していたアパートが男子のみの女人禁制な理由は、自分が生物学上、一応『男』であることと、あとは彼女の趣味。
ピピピ……プルルル……ガチャ
「現在、この電話はー」ガチャ
「わかんないことあったら電話しろって言ったじゃん……むしろ、なにがわからんのかさえわからない…。」
ピンポーンピンポーン
「そろそろいっすかー!?」
業者空気読めや……。
手紙にはマンションは既に解約済みと書いてあった。よってもう逃げ道がない為、とりあえず引っ越すしかないのだ。
果てしなくダークなオーラを放ちながら、まことは玄関の扉を開けに行った。
まことにとって、だいぶKYな引っ越し業者にひとしきり八つ当たりをしてみた。念のために言っておくが、引越し業者に罪はない。
そのあと、とりあえず既にキッチリと纏められた荷物をトラックに運びいれてもらっている間に言われた通り男装してみることにした。