微笑みながら
大事な話が始まらない。
ぶっちゃけると、正直私は機嫌が悪かった。態度にはあまり出さないタイプだし、まわりには気付かれにくいが、この時私は機嫌が悪かった。
朝早く(マコト的に)起こされ、部屋にはいつのまにか荷物が纏められ、置き手紙には驚愕の内容、よくわからないままとりあえず引越しさせられた。
いくら大好きなワンコや慎との再会があったり、引越し先の雰囲気やインテリアがどストライクだったりしても、マコトの機嫌はちょーっぴり回復しただけで、完全にはなおらなかった。
そこで今やっと、知りたい事が聞けそうなのに遮られた。しかも、マコトはしつこくされるのが嫌いだ。チャイムの連打なんてもってのほか。そんなわけで、堪忍袋の緒が切れた。
玄関のほうに向かおうとする慎ちゃんを手で制し、今だ鳴りやまないチャイムを聞いて立ちあがる。
玄関扉に手をかけて、深呼吸。素早くそして強く押し開ける。
ガチャ、ゴツっ!!!
呻き声の聞こえる下の方を見ると、先程固まっていたから放置した金髪頭と、もう一つ茶色い頭があった。蹲り悶絶しているふたつの物体。
真「うるっせんだよっ!人様ん家のチャイム連打すんな!こっちは大事な話してんのにさっきから遮りやがって、何様のつもりだ!?今度チャイム鳴らしやがったら、大事なナニかをちょん切ってやるから。」
蹲っているふたつの物体に向かって、微笑みながら言い放つ。
真「……返事は?」
「「ハ、ハイっ!‼!」」
二人がちゃんと返事をしたのを確認してから、私は静かに玄関扉を閉めた。