代わり
ひとしきり驚いたあと、放心している佐々木さん。目の前で手をヒラヒラしても反応がない。
真「おーい!目がいっちゃってるぞー!大丈夫ですかー?」
ダメだ、完全に固まってる。玄関先に放置しといていいだろうかと悩んでいると、慎ちゃんが戻ってきた。
慎「あれ?ノブじゃん。マコ、こいつどうしたの?」
真「ノブ?佐々木さんのこと?なんかチャイム連打されて、扉が破壊されるんじゃないかってくらい叩いてくるから出たんだけど、あきちゃんは駆け落ちしたって言ったら、こうなった。」
慎「なるほどね…。こいつ、アパートの住人で、佐々木信宏っていうの。おーい、ノブー、大丈夫かー?起きろー!」
慎ちゃんが、固まっている佐々木さんのほっぺをぺちぺち叩きながら起こす。慎ちゃん…もうちょっと優しくしないとほっぺ痛いんじゃないか…?
佐々木「っは!痛い…痛いって、慎さん!起きてるから!」
慎「そっかそっか?おはよう。どうかしたのか?」
佐々木「って、そうだよ!あきさんが駆け落ちしたって!マジなの?店とかアパートとかどうすんの⁉」
慎「ああ、マジだよ。でも大丈夫。こいつ居るし。」
我関せず、といった状態でぼーっと二人のやりとりを見ていると、頭をポンとされた。
佐々木「へ?こいつ?今日から此処に住むって言ってたけど。」
慎「そう、こいつ。今日からこいつがあきの代わりね?」
佐々木「え?」
真「叔父であるあきちゃんの代わりに、本日よりまことに不本意ながら大家さんになりました。浅倉真です、よろしくお願いします。」
挨拶したら、佐々木さんがまた固まった。