斎京 露範、復活はまだみたいですね。まぁ、帰ってきたら一瞬で世界撲滅されますけど。
今日の名言。 名東「カス」
檻姫 摩訶。
折句 撫頼。
斎京 露範。
虚詩 戯曲。
葛葉 初裏。
不動 匚コ。
そして――
この最強であるはずの7人の中、最も恐れられた存在。
――今譟 眞骸。
第・煮話目
「……そんだけか? 絶対不可止軍団のメンバーは」
「ええ。この7人ですよ、名前を出すだけでもぞっとしますけどね……あの時、世界が一番平和じゃなかった時代、宇宙掌握する勢いだった7人ですからね」
「宇宙掌握な。よく言ったもんだぜ」
「……。名東さん、あなた彼らのこと何も分かっちゃいないでしょう?」
「全然知らないね。だからこうやって手前に訊いてんだろうが。頭を使え、間抜けが。あと俺のことを名東さんとか呼ぶな、うっぜえ」
「そこ、よく拘りますね。前から気になってましたけど、何でですか?」
「俺は苗字よりさ、逸新って名前の方が好きなんだよ。逸して新、正に俺だろ? だから名東とは呼ぶな、下の名前だったらどうとでも呼んでいいからよ、ボケカス」
「じゃあまず僕のことカス呼ばわりすんのやめてください……」
今日も名東のナルシストは絶好調のまま――大体、何故この僕がこの人にこんな話をしなきゃいけないんだ。
名東にはこれから色々世話になりそうだが、せいぜいこの部屋の中での付き合いだろう。まあ、その報酬として今のうちに僕の知ってることを吐いとくのも悪くはないか。どうせ、危ない目に遭うのは聞いてしまった方だ。
だが――この話、している方も結構辛いんだけど。
「で、今はどうしてんの? その、絶対不可止軍団『paradox』って奴ら」
「活動停止中みたいですよ。派手な動きは聞きませんね、最近……平和が帰ってきただけいいんじゃないですか?」
「はん。俺は平和なんていらねえんだがなぁ……」
多分無意識だろう、長く伸びた赤い綺麗な爪を、がりがりともう片手の爪で削る名東。
……今日は手袋外してんのか。
「ほんとに分かってないんですね……斎京 露範なんか。帰ってきたら一瞬で世界撲滅されますよ」
「んだそれ? プロレスラーか何かか」
鼻で笑われた。
「そんな野蛮なもんじゃないですよ。見れば分かりますけどね」
僕も段々適当に喋りつつ、既に名東の方は向いていなかった(彼は最初から僕など見ていなかった)。
「へえ――気になるな、斎京……何て言った、露範か? ふ、いい名じゃねえか」
「斎京 露範は絶対不可止軍団の中でも最強の部類でしょうね。まあ、名前にも因んでね。奴は格闘技の神です。腕でも脚でも体そのものでも自由自在に使いこなしますが、そんな野蛮なもんじゃなくて……流麗というか、流れるみたいに綺麗な動作なんですよ。ま、それを良い方向に使えば本当の神なんでしょうけど」
「は……絶対不可止軍団、つまりはどうせただの殺人鬼の集団だろ」
「……斎京は素手で人を殺せます。このくらいなら熟練した人じゃなくても出来ないことはないかもしれませんが、斎京は素手で地球を潰せます。お世辞抜きでね」
「そりゃ、また……凄そうだな。会ってみたいもんだぜ、この俺も素手で車潰したことくらいならあるけどさ」
……。
名東のも十分伝説だが、斎京 露範、素手で地球の話を聞いた後じゃどうも目立たない。やはりこれが絶対不可止軍団だったか。
「一目見るには、普通の……どっちかって言うと華奢な方の男なんだけどね」
僕は独り言のように呟く。
名東に絶対不可止軍団の詳細を教えてしまった以上、この後の名東の行動なんて分かり切っている。僕の置かれる位置は決定した。
傍観者。
「名東さん……うーん……逸新さん? 絶対不可止に手ェ出したりしないでくださいね」
「馬鹿。手は出すが、おめえの関わるところで喧嘩売ったりはしねえよ」
さすが名東、分かっている。
だけど僕にはこれを止める義務があるだろう。斎京に手を出したりしたらブラックホールにまでふっ飛ばされるのは確かだ。これは斎京もそうだろうが、名東も細身な方だし……。
「あんた、……そんなことしたら、本当の意味で死にますからね」
「だっから……本当に馬鹿だな、無能無能。俺ァね」
チッと舌打ちしつつも、にやりと満足そうに笑む名東。
僕はその笑みに、何だかぞっとするような妖艶さを感じた。……いや、ホモ的な意味じゃなく。
「生まれた瞬間からずっと、死んでんの。死に続けてるわけよ」