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第三話 登録

「さてと・・・・・・それでは、今日の会議を始めようか」


「あー、ちょっといい?その前に私、報告したいことがあるんだけど」


ライトが会議を始めようとした時、ユキは手を挙げてそう発言した。


「なんだ、ユキ」


「実は私、廃嫡になっちゃった」


「そうか」


「あれ?そんなに驚かないんだね?」


「当たり前だろ。普段のお前の素行を考えれば、なにも不思議ではない。むしろあれでなぜ今まで次期公爵の立場を保てていたのか、不思議なくらいだ」


「まあ残当ってやつだよねー。それで?なにがバレて廃嫡されたの?強盗?殺人?人身売買?麻薬?」


「水属性は戦いでは役に立たないっていうのと、犯罪組織と繋がってるっぽい噂を聞くからだってさ」


「なんだ、そんなことか。ふーん・・・・・・ま、とりあえず残念だったね」


「いや、むしろこれは好都合だよ。今までより自由に動けるってことだからね」


ユキは、エリーに向かってそう言った。ライトは顎に指を当て、考え込むような素振りを見せながら発言した。


「うーん、ユキ、お前がより自由に動けるようになったっていうのは確かに喜ばしいことだが、しかしそうなるとまた別の問題も生じるぞ。お前が次期公爵の立場を利用して横領していた諸々の金が手に入らなくなったってことじゃないか。どうするんだ?我らの組織の資金源のところは」


「そこなんだよなー。差し当たってはサクラにもらったこの金があるわけだけど、これが尽きれば資金難になるな」


「あー、あのちょろちょろチョロ子ちゃんのお金か」


エリーは皮袋に入った金貨をつつきながら言った。


「何だそのおしっこの音みたいなあだ名は・・・・・・」


ユキはそうツッコんだ。ライトはそのやり取りには口を挟まず、腕を組み瞑目して考えていた。


「んー、本当にどうしようか・・・・・・・」


「心配するなライト!私に考えがある!!」


「・・・・・・何だ、ユキ。一応聞いておこう」


「冒険者になるんだよ!!」


「冒険者・・・・・・?冒険者って、あの冒険者?」


「そう!異世界転生者がなぜか必ずなりたがるでお馴染みのあの冒険者!!」


「いやそれはよくわからないが・・・・・・冒険者か、いいかもしれないな。しかし・・・・・・」


ライトは腕組みをしながらエリーとユキの2人を見ながら、顎に手をあて言った。


「お前ら、絶対ギルドで騒ぎを起こしそうな気がするんだよな・・・・・・」


エリーとユキは顔を見合わせ、 それから笑って言った。


「大丈夫大丈夫!」


「問題ないって!!」


「ほんとに大丈夫かなあ・・・・・・」



「さてと・・・・・・そういうことで、冒険者ギルドに行くことになったわけだけど・・・・・・・エリー」


エリーはユキに向かって言った。


「なあーにー?」


「お前・・・・・・クスリやってから来ただろ」


「そんなことするわけないじゃん!えーっと・・・・・・誰?ハンプティダンプティ?」


「違うわ!ユキだユキ!てめえやっぱりクスリやってんな!」


「だからあーそんなことないって!!」


「どこにしゃべりかけてんだ!!そっちじゃねえそっちじゃ!!もうお前ロリっ子じゃねえよ。ラリっ子だよラリっ子」


「まあまあ、ユキにもあげるから、やってみなって」


「おっ、いいのか?じゃあやってみようかな」


和気藹々とし、見た目だけなら日常系みたいな雰囲気を醸し出すユキとエリー。


「ほんとに大丈夫か?あいつら・・・・・・」


ライトはそんな2人を見ながら呟いた。



さて、所変わって冒険者ギルド。


朝も早いことながら、ギルドの中は数多くの冒険者で賑わっていた。


ギルドに併設された酒場で、朝早くから飲んだくれる者、受付で受付嬢に、何やら聞いている者、依頼書が貼り付けられたボードを眺めて、仲間と何やら相談している者。本当に様々な冒険者がいる。


そして、そんなギルドの扉が急に勢い良くバンと開かれて、2人の少女が元気良く躍り込んできた。


「いっえーい!!!来たぜ来たぜー!!!」


「私が来た!!!やっほー!!」


ユキとエリーである。肩を組みながら、扉を蹴破って躍り込んできた。大分アッパーになっているみたいだ。


「はあ・・・・・・こいつら、早速・・・・・・」


そして、その後ろではギルドに入るや否や、早速騒ぎを起こした2人に、ライトが頭を痛めていた。


と、そんな2人の前へ、立ち塞がった者がいた。


「おうおうおう、何だお前らは?」


「ギルドのドアを蹴破るなんて、礼儀の良くない子たちだねえ」


男と女の2人組が、ユキとエリーが騒いでるのを聞きつけて2人に絡んできたのである。


それを見て、周りの人々はコソコソと囁いた。


「あれは、有名な新人潰しパーティの『青き赤』の2人じゃないか」


「終わったな、あの2人」


しかし、エリーとユキの2人は、それを見ても毛ほども恐ろしさを見せなかった。まあ、当然であろう。かえって指を差してヘラヘラ笑いながら言った。


「出た出た。ギルドで絡んでくる上級冒険者だ」


「わー、すっごい。テンプレの産物だねー」


「てめえら、何ヘラヘラ笑ってやがんだ・・・・・・!」


「どうやら、仕置きが必要なようだねえ」


二人組の冒険者はそれを見て額に青筋を浮かべて、エリーとユキに手を出そうとしてくる。それを見て、今まで笑い細めていた目を開き、血のような赤い目で二人組の方を見た。


「仕置き・・・・・・仕置きだと?お前らみたいなもんが、この私に仕置きか」


ジロジロと新人潰しと言われた二人組を見て、ユキは鼻で笑った。


「笑わせるな」


そして、二人組の視界から消えた。


「「え?」」


次の瞬間、二人組の男の方が、鎧ごと袈裟懸けに斬られていた。


「な、何だ?」


「あいつ、今何したんだ!?」


いつの間にやら抜いていた刀を鞘に納めながら、ユキは言った。


「お前らに、私に仕置きなんか出来るものか。私が血を流すことは絶対にない。血を流すのは、お前らだけだ」


「あ、あ・・・・・・」


二人組の女の方は、自分の仲間である男があっけなく斬られてしまったのを見てへたり込んでしまった。


「あー、ユキ、見て!この女の人、おしっこ漏らしちゃってるよ」


「本当だ、大人なのになー・・・・・・なあ、こいつおしっこサーバーとして特殊なマニアに売り払ってみようか?」


「いいねー!それ!」


「ひっ・・・・・」


「お前ら、油売ってないで行くぞ」


ライトの言葉に、2人は素直に従って受付へと冒険者登録をしに向かっていった。


男の方は一命を取り留め、女の方も別に何もされなかったわけだが、もう新人潰しをすることはなくなったらしい。しばらくして、冒険者も引退してしまったそうだ。


公衆の面前で、冒険者を斬ってしまったのは、少しまずかったが相手の方が先に手を出そうとしていたというのと、公爵令嬢パワーで誤魔化せた。


こうして、ライト、エリー、ユキの3人は冒険者として活動することになったのである。


この一件があり、ユキは冒険者たちの間で『血葬』なる二つ名をつけられ、畏怖されることになるのだが、これはまた別の話だ。

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