2 「香織」
子供の頃から同じ顔触れで学校生活を送っていた為に刺激が無く田舎暮らしに飽き飽きしていたので、高校卒業とともに都内に引越し看護学校に入学。
無事に卒業し、子供好きな事もあり通勤も楽で給料も良かった近くの比較的規模の大きい産婦人科で看護師として働いていた。
仕事ではあるが、出産に立ち会える事が嬉しく産まれてきた赤ちゃんを見ているだけで毎回嬉しい気分になっていた。
しかし、最近の産婦人科で問題になっている訴訟問題には、少しどころかおおいに憤慨していた。
最近は臨月になって産婦人科に駆け込み散々面倒を掛けた挙句、出産後に理不尽な訴訟を起こす若い女性と旦那さんに加えて、その両親達も多い事には呆れてしまう。
明らかな医療過誤には同情もするし理解も出来るが、些細な事柄で訴訟されては産婦人科医にとっては迷惑な話である。
最近のニュースで、産婦人科医を目指す学生が減っているとの報道があったのも頷ける。
余りに理不尽な訴訟ばかりが続き、大好きだった看護師の仕事にも多少嫌気が差していた。
この辺りで見切りをつけ実家に帰り、ノンビリと暮らしながら地元の産婦人科で仕事するのも良いかと思い退職して地元に戻った。
首都圏の産婦人科院とは違い、此方は隣接する県の妊婦を一手に引き受けており、ただでさえ少ない産婦人科医を訴訟しようなどと考える輩は居ないので気が楽である。
その分、日々を忙しく過ごしているが、毎日やり甲斐を感じていた。