容姿に自信がない私も、変身帽子でイメチェン!
小説家になろうラジオ大賞5 参加作品。
テーマは「帽子」
なんでこんな顔で産まれたんだろう。
丸い鼻にそばかす。
髪も太く癖毛で縮れてガサガサ。
自分の容姿に自信がないため、内気で引っ込み思案な性格に。
そんな理由で、今の大学生活は地味に目立たないよう過ごしていた。
ある日、私はふとしたはずみで街外れの不思議な帽子屋で、この野球帽を手に入れた。
最初は、この嫌な癖毛や顔を隠せるからという理由だったけど、なんとここの商品は店主曰く、容姿や外見を変えることのできる帽子だったのだ。
実際被ると、
目鼻がキリッとし、そばかすも消え、顔が引き締まった!?
しかも髪の毛が真っ直ぐストレートの艶のある黒髪に伸びた!
凄い!
私がこんなに可愛くなって!
こうして外出時には必ずこの帽子を被り、お洒落もして街中を歩けるように。
しかも有名大卒の、大手企業に勤める容姿端麗のイケメンに声をかけられ、お付き合いすることに!
でもそんな幸せは続かないもの。
帽子を脱げば元の姿に……
彼と会う時はいつも帽子を被り、なかなか自分の本来の姿を明かせない日々。
そして遂に……
「レストランの予約を取ったんだ。ぜひディナーでも」
彼の熱意に負けて承諾してしまったけど、この高級レストラン、ドレスコードがあって、もちろん帽子なんて脱がなきゃ入れない。
当日、店頭で……
「さあ、入ろうか」
「……」
「どうしたの?」
「実は私……」
意を決して帽子を脱ぐ。
本来の姿の私を見た彼の驚いた表情が、目を閉じても脳裏に浮かぶ。
これで私の恋も人生も終わった……
「別に僕は気にしないよ」
「え!?」
「どんな容姿だろうと、この数ヵ月の間一緒にいて、君の内面や人柄に惚れたんだ」
「ホント!?」
「実はこれ、後で渡そうかと思って……」
小箱を取り出すと、中から指輪が!
もしかしてプロポーズ!
「その前に、僕も君に打ち明けないと……」
そう言うと彼は
自分の手で?
髪を引っこ抜いた!?
「僕、カツラだったんだ」
ええー!!
ハゲ!
見事なまでのつるっぱげ!
「受験に就活、業績やノルマ、血も滲むような努力をした結果、ストレスで髪が抜けてしまって」
どうしよう……ハゲだわ。
でもハゲは私を中身で評価してくれ……
私も彼のことは好きだし……
でもハゲ。
どうしよう……
「指輪を受け取って下さい」
「……私でよければ」
「本当ですか!」
「そのかわり……」
私は自分の帽子を彼に被せる。
すると毛が生えフサフサのロン毛に早変わり。
「あ! 毛がはえた!」
「私と一緒に外出する際は、これを被って下さいね」