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あと数段階段を降り、彼女は地下室の扉を開いた。
その瞬間、眩しい光がいきなり目に入ってきて思わず目を細めた。
「ようこそ、私の城へ」
彼女はそう言って、この部屋に私たちを招き入れた。
右壁一面は布で敷き詰められていて、左壁は糸で敷き詰められていた。真ん中にはミシンが四台並べられている。数多くのトルソーが並んでいて、そこに着せられているドレスたちはかつて見たことないほど魅力的なドレスだった。
なんて洗練されたデザイン。このスタイリッシュさが多くの者を惹きつけたのだろう。
私は目を大きく見開きながら、部屋を見渡した。
ここにある材料は全て高価なものだというのは触らずとも一目みたら分かる。
この作業部屋を「城」だと言えるのが素敵だと思った。
デニッシュ様にもこの景色を見せたい。いつか、一緒にここを訪れたいと思った。
「さて、アンバーちゃん、その女性の情報をちょうだい」
彼女のその言葉に私は「はい!」と頷いた。
これでデニッシュ様へとドレスを準備できる。完璧な準備で社交界デビューをすることができる。
なんたって、あの「マリー」のドレスなのだから。
現在。
「本当にお似合いです」
化粧をし終えた私を見つめながら、アンバーは目を輝かせる。
この子は私を女神か何かだと思っているのか?
眼鏡を外した状態で私はチラッと鏡の方を見る。私の顔の造形に合うように綺麗にメイクをしてくれたようだ。
強い女、って感じがする。この赤リップと赤いドレスが見事にマッチして、いつもより何倍も自分が綺麗に見える。
体のラインがでるせいで、ちゃんとスタイルが丸わかりだ。……この夜会のために急激に痩せたことにしよう。
…………が、せめて顔はあまり目立たないようにしないと。
私は眼鏡をかけた。
「え、眼鏡をなさるんですか?」
「そうよ。王宮ではできるだけ空気にならないと」
「その衣裳ではもう諦めた方が良いかと……」
「……この衣裳、本当によくこの短時間で準備出来たわね」
私はもう一度褒める。
このドレスもこのドレスを用意した者たちも最高だ。私の手中にほしい。
「あの、デニッシュ様」
改まってアンバーは姿勢を正し私の方をじっと見る。
なに、と私は彼女を見つめた。
「私はデニッシュ様を全力でお守りいたします。なにがあっても」
「ええ、ありがとう」
突然、どうしたのだろう。
私は少し戸惑いながらお礼を言った。
「……デニッシュ様、赤い瞳とプラチナブロンドの髪を持った方を私は一人だけ知っています」
「…………そう」
私は静かに返答した。
真っ直ぐ私に向けるアンバーの目と向き合う。王宮で社交界デビューする前に彼女は自分の覚悟を私に告げようとしているのかもしれない。
デニッシュ・クロワッサンの姿が初めて貴族の世界で公になる日だもの。
「サジェス国第一王女アメリア様」
彼女は微かに震えた声で私の名を呼んだ。
私と対峙していることに緊張しているのだろう。……王家の暗殺者だというのに、少し可愛いところもある。
「そうよ」
私は彼女から目を逸らすことなく、確かな声で返答した。




