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「連れてまいりました」
服に土が少しついていて、肌も少し焼けている一人の男性がニースの隣に立っている。
ニースは涼しげなのに、どうしてカルロスはこんなに汗だくなのだろう。
ジョゼフ様はニースに「ご苦労、仕事に戻れ」と伝え、カルロスを部屋の中に入れた。カルロスは自分が何か粗相をしてしまったのかとびくびくしている。
……可哀想に。
「さっき、メモを誰かに渡していたな」
ジョゼフ様の低い声が部屋に響いた。
その言葉にカルロスはビクッと体を震わせる。さっきまでかいていた汗とはまた違う汗が彼の額を流れる。
彼は帽子を脱ぎ、ギュッと両手で握りしめている。
それ以上握ったら、帽子が元のカタチに戻らなくなりそうだよ。
別に媚薬を頼むことは違法でもないし、皆していることだ。それなのに、ライルのせいで物凄く悪いことをしたみたいなことになっている。
「は、はい」
怯える声。…………一体どれだけ恐れられているんだ、ジョゼフ様。
「何と書いていた?」
「あ、の、……、その、イリスを一瓶ほしい、と」
たどたどしくカルロスは答える。
その言葉を聞いたのと同時にジョゼフ様は一瞬驚いた表情をしたが、すぐにいつもの強面に戻った。
「そうか」
「す、すみません。仕事中に媚薬の調達など」
「いや、別に良い。手間をかけたな。お前にイリスを渡すように手配しておこう」
カルロスは「へ?」と間抜けな声を出す。
そりゃその反応になるわよね。私がカルロスでも気が抜けてしまう。
咎められると思って来たのに、ただメモの内容の確認をされただけ。さらには、ほしかったものが手に入る。
まぁ、ここにくるまでの気が気でなかった彼の様子に比べるとイリスなんて安いものかもしれない。
「あの……」
「仕事に戻れ」
カルロスが何かを言おうとすると、ジョゼフ様はキツイ口調でそう言った。
もっと優しく接してあげてもいいのに、と思いながら、これが上に立つ者の威厳なのだろうとも思った。
カルロスは「は、はい!」と深く頭を下げて、部屋から退出した。
彼がいなくなったということは、ライルへと焦点が当てられる。ジョゼフ様はライルを品定めするかのようにまじまじと見つめた。
五百メートル先の小さなメモの内容を見ることができるなど常人ではない。…………ジョゼフ様はライルのことをどう判断をくだすのだろう。
私はずっと脳内でガイア族についての情報がぐるぐると回っている。
ガイア族についてはあまり知られていないが、関わった者の証言によると「彼らの目は天からの贈り物だ」と言われている。
もしライルが本当にガイア族なら、手放すのが惜しいはず。
私はジョゼフ様の言葉を待った。




