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侍女たちが部屋を出たのと同時に、私は急いでドレスに着替えた。
なんだか……、質素なドレスね。
質素というか歓迎されていないようなドレス。
名前は変だし、容姿も普通だから……? それとも、ロイヤルチェンジで選ばれた庶民に対しての嫌がらせ?
それぐらい良いドレスとは口が裂けても言えなかった。
まぁ、服がないよりかはましだし、ちゃんと着れるだけありがたかったと思うべき?
それとも、私があまりにも舐められすぎ?
そんなことを考えていると、扉の外からリヴァの声が聞こえた。
「どうしてお前たちが部屋の外にいるんだ?」
「デニッシュ様がお一人で着替えたいとおっしゃっていたので」
「どういうことだ?」
そのまんまの意味よ。
私は侍女たちがこれ以上責められないように、部屋の扉を開けた。
リヴァと目が合う。彼は驚いた様子で私のドレスを見つめた。
「このドレスは……」
「質が良くない?」
私がそう言うと、侍女の一人が小さく笑った。
小馬鹿にするような笑い。
馬鹿にされるのは慣れているけれど、こんな風に目の前で嘲笑われるのは癪に障る。
私は侍女の方へと視線を移した。
「元々平民だったのだから、ドレスの良し悪しなんて分かるわけないって?」
慌てた様子で「いえ」と首を振る。
本来なら、私は彼女よりも身分が低いものね。ただの辺鄙なところで過ごしていた汚い庶民。
それが急に自分より立場が上になるのは心地良いものじゃない。
「触った瞬間、良い素材か否かぐらいは分かるわ」
私はそれだけ言い残した。
「行きましょう」
私は王子にそう言って、足を進めた。
私の小さなプライドを軽く守った。これぐらいの出来事は別に目立つようなことじゃない。
ただ、リヴァが余計に私のことを疑うだけ。
……まぁ、これからリヴァと関わることなんてないだろうからいいわよね。
貴族になっても、こっそりと暮らしていけば良い。
「一つだけ聞いてもいいか?」
「何でしょう?」
「貴族になったら何をしたい?」
私は思わず王子の質問に固まってしまった。
貴族になってからのことなどまだ考えていなかった。未だに心の中では貴族になることを抗っている自分がいるし……。
ただ、貴族になるメリットもないわけではない。少しだけ計画が狂ってしまったけれど、権力を手に入れれば、私の目的に一歩近づける。
「秘密です」