6
……お城だ。
気付けば王宮の中を私は歩いていた。
おっきい! 豪華! って思っている間に、私は王宮の埃一つないピカピカの廊下を歩いている。
ロイヤルチェンジ制度を詳しく知らないけれど、選ばれた者は皆王宮に一度行くのだろうか。
王様と謁見してから、どこの貴族の家へと属すのか決まるってこと?
適性検査的な感じ……?
ロイヤルチェンジのルールを全く知らないまま、私は王子の後ろをただついて行く。
「ここで着替えろ」
暫く歩いて、たどり着いた部屋に私を入れた。
大きくて可愛らしい部屋だ。ぐるっと部屋の中を見渡した。
豪華な女の子らしいベッドがあり、上品な雰囲気が漂っている。
この国にプリンセスなんていたかしら?
私はそんなことを思いながら、中で待機していた侍女たちに服を脱がされそうになった。
「ちょっと待って!」
私がそう言うと、侍女たちは「え」と驚いた表情で固まった。
彼女たちに脱がされれば、体型を偽っていることがバレてしまう。バレても命は取られないだろうけど、気まず過ぎる。
「自分で着替えれるから」
私は愛想笑いを浮かべながらそう言った。
侍女からしたら、客人であり、もうすぐ貴族になる私が一人で着替えるなんてありえない話だろう。
侍女たちが「ですが」と、困惑した表情を浮かべている。
ごめんね。でも、私は自分を守ることに必死なの……。
「お願い」
私は懇願するように頼むと、一人の侍女が口を開いた。
「大丈夫ですよ」
その返答に、私が驚いてしまう。
まさかこんな簡単に承諾されるとは思っていなかった。私はその侍女へと視線を移す。
黒い髪をピチッと一つにまとめていて、聡明な顔つきだ。
女の子のキャピキャピ感がまるでない。私は彼女をついじっと見つめてしまった。
「本当にいいの?」
別の侍女が彼女にそう尋ねると、彼女は「何か事情があるのでしょう」とだけ答えて、それ以上私のことを詮索しなかった。
……とても良い侍女だ。
この貴族の世界で生きていくには、彼女を味方につけたいけれど……。悲しきかな、彼女は王家に仕えている侍女なのよね。
「ありがとう」
「いえ」
「あの……、ここは誰の部屋なの?」
黒髪の侍女以外皆、目を逸らし、少し気まずそうな表情を浮かべた。
あ……、もしかしたら、聞いてはいけないことを聞いてしまったのかもしれない。何とも言えない空気を壊すように黒髪の侍女は口を開いた。
「王家のことには、あまり首を突っ込まない方がいいです」
私はそれ以上何も言えなかった。
だた、ここがきっとプリンセスの部屋であろうということしか推定できなかった。
この部屋の雰囲気は姫の部屋に違いないもの。ただ、この国に姫様はいなかったはず……。
私が腑に落ちない顔をしていると、黒髪の侍女は口を開いた。
「察しが良いのは、時には災いを招きます」