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「まさか本当に当ててしまうなんて……」
アンバーは目を見開いたまま赤い点に刺さった矢を見つめていた。
……まさか私もこんなに綺麗に当たるとは思っていなかった。……ただ運が良かったのかもしれない。それでも運も実力のうちだ。
「おい、当てたぞ」
「何かズルでもしたんじゃないか」
「どうやってズルするんだよ。今、彼女が矢を放ったのをちゃんと見てただろ」
「それでも、あんな真ん中に当たるなんて信じられないじゃないか」
「それもそうだ。……初心者じゃないんじゃないか」
「馬鹿、女であそこまでの実力があったら、とっくに噂になってるはずだろ」
段々と周りが騒がしくなってくる。
悪目立ちじゃないだけ良かったと思っておこう。……だけど、あまり目立つと動きにくくなってしまう。
なんの特色もない令嬢を演じることはもう難しいけど……。
今からでも遅くない。これを周りにまぐれだと思いこませばいいだけのことだ。
私はそのまま矢を箱から取り出し、弓にセットした。「おいっ」とマイクが止めるまえに私は矢を放つ。……超適当に。
矢は見事に当たらない。それでも私は矢を取り出し、弓にセットしては放ち続けた。
赤い点どころか木にすら当たらない。
ここまで外せるのかと自分でも驚く。騒がしさはさっきと比較にならないぐらい色々な声が飛び交う。
……外せば外すほど当てたくなってきてしまう衝動を必死に抑える。
というか、実際に今、どんどん外してむきになって矢を放っているが、この気持ちのまま本気で当てようと思っても当たらないだろう。
冷静になって、集中することをしないかぎり、目標に当たることは無理だ。
「おい、見ろ! めちゃくちゃ下手くそじゃねえか」
「さっきのは本当にまぐれだったんじゃないのか?」
「全部外れてるぜ」
「一番最初に奇跡を起こすなんてある意味もってる女だな」
周りの言葉にほっとしている反面、悔しく思っている自分もいた。
目立たないでおこうと思っているのに、自分の実力がこの程度なのかと思われることは嫌だ。……自分の天邪鬼さに呆れてしまう。
「やっぱり、偶然だったんだ」
「なわけないだろ」
マイクの言葉にセスが苛立った様子で返答する。チッとセスが舌打ちする音が聞こえた。
「え?」
「あいつ、わざと外しやがった」
箱の中の矢を全て放ち終わり、セスの方へと視線を移した。
セスは物凄い形相で私のことを睨んでいた。…………それは乙女に向ける顔じゃないでしょ。




