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ワッグ家の者だという自覚ははっきりとまだない。
まだデニッシュ・クロワッサンだと思っている自分が少しいる。……早くワッグという名に慣れないと。
武器庫がギギギッと音を立てて、重々しい扉が開く。
……これがワッグ家の武器庫の中身!
私は目をキラキラさせながらじっと見つめた。
…………凄ッ! これは、王家は絶対に何があっても、天と地がひっくり返ってもワッグ家を敵に回さない方が良い。
「やばすぎぃ」
「デニッシュ様、言葉遣い」
「あ、ごめん。……なんて素晴らしい宝石箱ッ。今日からこの武器庫をジュエリーボックスと呼びましょう」
「それはちょっと違います」
「そう?」
アンバーは冷たく私に突っ込んでくる。
遠回しに褒めると変な空気になる。セスも思わず眉間に皺を寄せてるよ。
「入るね」
「どうぞ」
セスはスッと手を武器庫の方へと向けて、軽く頭を下げた。
……ここまで丁寧な扱いを受けると、逆に怪しんでしまう。……セスは私のことを快く思っていない。顔には出さないが分かる。人の小さな感情を読み取るのは得意だ。
どうせなら、嫌悪感丸出しで対応してくれてもいいのに。……大人だ。
私は武器庫の中へと足を進めた。
「団長! 俺、やっぱり納得いかないでです。武器庫は機密のはずなのに……」
「ジョゼフ公爵が決めたことだ」
「あいつ、ちょっと前まで平民だったくせに! 俺達軽く見られているんですよ。そんな安い騎士団じゃないんだっ」
「早く帰ればいい」
「え?」
「興味本位で見学にでも来たのだろう。騎士団とはどういうものか、その気迫を感じて怯えて帰ればいい」
後ろでセスと兵士の会話が聞こえていた。
私ってば、地獄耳なもので。……それに、そう簡単に帰るわけないでしょ。私も譲れないの。
騎士団、というより、「戦」がどういうものか嫌というほどしっている。それに関してはセスよりも知っているかもしれない。
それぐらい私はサジェス国で戦の渦に巻き込まれていた。
「ずっと居座ってやる」
「意地にならないでください」
アンバーは私の言葉に呆れたように呟いた。
どうやらアンバーも彼らの会話を聞いていたようだ。
「それにしても、本当に圧倒されますね。私もワッグ家の武器庫の中に初めて入りました」
「暗殺者ならこういうのに惹かれるんじゃない?」
「私は騎士のような剣は使わないので」
「……こういう小型ナイフとか?」
私は近くにあった刃の鋭い小型ナイフを持ち、彼女に向けた。
彼女は一瞬で目を輝かせながら「はい、そういうのです」といつもより少し高い声を出す。
……テンション上がってる。
アンバーを見ながら思わず顔が綻んだ。




