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「とりあえず、こいつは預かる」
リヴァは私の腕からライルをひょいッと奪った。彼を肩に乗せて軽々と持っている。
想像をはるかに超えた軽さだったのかリヴァは目を見開いてライルを見つめた。
……そうだよ、この教会で育つとまともに成長することは絶対にない。
それぐらい皆が栄養失調になりかけている。
私は一瞬ライルを奪い返そうと思ったが、止めておいた。今、彼を公爵家へと連れて帰ってもライルを救える保証はない。
ここは王子の力に任せておいた方が良い。
なんとなくだけど、彼は信用できる気がする。今はライルの回復を優先しなければならない。
「ちゃんと診てくださいね」
「ああ。こいつのことも、教会のことも後は任せておけ」
「……この教会をどうするんですか?」
私はリヴァを見据えながらそう聞いた。
この教会は腐りきっている。今さら環境改善なんて不可能だ。
こんな所、早く壊してしまった方がいいのだろうけど、そうすれば子どもたちが行き場を失う。それは避けないといけない。
当時の私は、彼らを救うことを出来なかった。だから、せめて……。
「なんて顔してるんだよ」
リヴァは人差し指を私の眉間にグッと押し付けた。
私そんな悲愴に覆われた表情してた?
「安心しろ。お前が悲しむようなことはしない」
「どうしてそこまでしてくださるんですか?」
お礼よりも先に疑問が口から出てしまった。
私に良くしても彼にはなんのメリットもない。それなのに、ここまで優しくしてくれるのはおかしい。
素直に人の好意を受け取れないのは、この貴族社会があまりにも汚いことを既に知っているからかもしれない。
「俺にもよく分からない。……お前のことを気に入ったのかもしれないな」
なんでだ?
私は王子に気に入られるようなことを何一つしていない。というか、私と王子の関係はさっき出会ったみたいなものだ。
素性の分からない女にそこまで肩入れするなんてありえない。
「私たち昨日会ったばっかりですよね?」
「ああ。まぁ、気に入ったっていうのは嘘なんだがな」
「この教会と一緒に王子のことも一掃しちゃいましょうか」
思わず満面の笑みで不敬罪になるような発言をしてしまった。
「それは楽しみだ」
「殿下、やはりこの女に礼儀というものを一度教えてあげましょう」
ハリーがとてつもない形相で私を睨みつけている。
リヴァは「お前も短気だな~」と呑気に笑っている。
「こうやってわざわざ殿下が教会に足を運んだのは、お前が怪しすぎるからだ。デニッシュ・クロワッサン」
怪しまれてたんだ!!
……まぁ、そりゃそうか。いきなり公爵令嬢になった女を放っておくわけないよね。
怪しくて私の行動を監視するのは分かる。……ただ、こうやって助けてくれる意味が理解出来ない。
ただの優しさなのか、それとも腹黒いのか……。
今はまだ深く考えないでおこう。




