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「私はねぇ、ボスが『弟子をとる』なんて一生ないと思ってたんだ~~~。それなのに、突然弟子をとるなんて言うから驚いて~~。それが貴女よ」
「…………彼女から何一つ学んでいないわよ」
ティナはフフフフッと独特な笑い方をする。
……ちょっと気味悪い。
「なによ」
「貴女が読んでいた本、ぜ~~~んぶ、ボスが書いたものだよっ」
「ぼすがかいたもの……」
「そうッ」
ボスが書いたもの。
私は頭の中でティナの言ったことを文字に並べる。
それと同時に叫びそうになった。ティナの正体に続き、また衝撃を食らう。……もはや、衝撃で私を殺めようとしてるんじゃないかしら。
致死量の衝撃を食らっているわよ。
「あの本を全てジュリアが書いたというの……!?」
「そうだよぉ。王宮図書館以外に模様暗号についての本はあの建物にしか存在しないんだよ~~。貴重なものだからね、そりゃ巷に出回ったら困るし……」
「ストップ! 私まだ追いついていない」
私はティナに手のひらを向けて、話すのを一度停止させた。彼女は表情まで一時停止させたまま固まる。
ティナの発言による衝撃に耐えられていない。頭の中を整理しないと……。
私が読んでいた模様暗号について書かれた全ての本の著者がジュリアだった。…………ダメだ、受け入れられない。
「もういいや、続けて」
私はとりあえず、ティナに話を続けてもらうことにした。
ここまで来たら話を無理やりにでも進めた方がいいかもしれない。もういちいち衝撃に耐えていられない。
「幼い頃に当時ジュリアの師匠に模様暗号の読み方を教えてもらったらしいんだぁ。それを彼女は本にした。ジュリアは一度覚えたものは完璧に覚えているからね~~~」
「まって、じゃあ、ジュリアは模様暗号を習得しているの?」
「習得していないなんて一言もいってないわよ」
突然、違う声が入って来た。
私は勢いよく声の主の方を振り返った。そこには知っている顔が視界に映る。
ちょっと~~~、脅かさないでよ。心臓に悪いわ。
「ボスっ!」
ティナはジュリアを見て、嬉しそうな表情をする。
ジュリアの気配を一切感じなかった。……いきなり現れる前に、いますよって空気を醸し出しておいてよ。




