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「それなら良かったわぁ」
……なんか変。
私は訝し気にティナを見つめる。彼女は「どうしたの~~?」と気の抜けるような口調で私を見返す。
「ねぇ、貴女一体何者なの?」
私の質問にティナは目を丸くした。
あの建物の中で過ごしてるってことは、ただの平民ってわけじゃなさそうだもの。
「ただのティナよっ!」
彼女はニコッと私に笑顔を向けた。
……小さな違和感をずっと抱いている。それが何かが明確には分からない。
彼女はきっと私の味方…………、だけど、どういう人間なのか掴めない時がある。
「あ、シスターシナモン! これは何?」
彼女は大きな葉を軽く握りながら、私に手招きをする。
……話、変えられた。
私は心の中でため息をついて、彼女の近くへと向かい、葉の模様を見る。
まぁ、ティナなら暗号について少しぐらい話しても大丈夫よね……。ここに連れてきてくれたんだし……。いつもご飯持ってきてくれてるし……。
「…………老人って意味」
私はボソッとそう答えた。
彼女は私の言葉にフッと嬉しそうに笑みを浮かべる。
……どういう反応だ、これ。
「じゃあ、これは~~?」
彼女はまた違う葉を指さす。
「……これは、……死? かな……?」
そう答えた後、暫く沈黙が流れた。
……どういう反応だ、これ。
二度目の感想を心の中で抱いてしまう。急に黙り込んで、彼女は葉を真剣な眼差しで見つめて、私へと視線を移す。
「これは『旅立ち』だねぇ」
彼女は確かな声でそう言った。
「え」
たびだち……?
ティナに訂正された? ……彼女もこの模様暗号を知っているっていうの?
固まる私にティナは口を開く。
「『死』はこの線がないもの。これだと『旅立ち』って意味なんだぁ。良い線までいってたよ~~」
ティナから説明を受ける。戸惑った状態が更に戸惑う。
彼女は……、本当に何者なの。おかしい。訂正なんてできっこない。
これが『旅立ち』だなんて。だって、だって……。
「どうして貴女が解読されていない模様の意味を知ってるのよ……」
私の擦れる声がこの場に小さく響いた。




