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ロイヤルチェンジ  作者: 大木戸 いずみ


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 私は去っていくセスの騎士団を見送る。

 ……私のせいでかなり時間を食わせてしまって悪かったなぁ。

 団員たちにとって、長い休憩をだったと思えばいっか。

 ジュリアは騎士団たちのおかげで売り上げ上がって喜んでいたし、騎士団たちも良い商品を購入できたと喜んでいたから、プラマイゼロだということにしよう。


「本当に一緒に行かなくて良かったの?」


 私は隣にいるライルに向かってそう投げかけた。

 私が残ることを知って、彼もここに残ると決めたのだ。セスは私を一人にすることを懸念していたのか、ライルがこの場に残ることをあっさりと許可した。

 ジュリアも働き手が増えるのは良いことだ、と言って彼を残してくれた。


「もちろん。……それに、デ、……シナモンが言ったんでしょ。メリアから色々と弓の扱いを教われって」

「まあねぇ」

「なにその曖昧な返事。俺に残られて迷惑そうに見えるんだけど」

「そんなことないわよ。ただ、貴方に弓の才能があるのかしらって思って」

「……努力はするよ」


 ライルは口を尖らせる。 

 鍛えたらそれなりの弓使いになれるだろう。……多分。


「がんばって私を超えてね」

「また無茶なこと言うね。……あんな人間離れした技を俺にできるわけないだろ」

「たしかにそうかもね」


 私は笑いながらそう言った。

 ライルは私の隣で「なんかその勝ち誇った態度むかつく」とブツブツ言っている。


「見送りは済んだでしょ。シスターは私のところへ。そのガリガリはメリアのところに」

「ちょっと、ガリガリって」


 ジュリアの言葉にライルは不機嫌そうに反応する。

 ジュリアはライルのことをじろじろと暫く見つめながら、声を発する。


「増量しないと強くなれないわよ」

「…………分かってる」

 

 不服ながらもライルはそう答えた。 

 少しすると、メリアが私の方へと近づいてくる。彼女は暫く私と目を合わせた後、ゆっくりと口を開いた。 


「まさかここを出て行くことになるとは思わなかった。…………まだ分からないけど。……貴女の素性も知らないし、怪しいシスターとしか思っていない。さっきの弓は見事だった」


 ……なんだか不思議な人ね。

 なんの信頼関係も築かずに私の元へと勧誘してしまった。

 時間をかけて私のことを知ってもらえればいっか。関係を築くのには労力と時間が必要だもの。


「実力者の元に行けるのは光栄なことだから…………、貴女がただの変態なシスターじゃないってことが分かって良かった」


 メリアはそう付け足した。

 変態だと思われていたのか。……確かに振り返れば不審者だったかもしれない。

 この変態シスターを庇っていたセスはもっと変態に映っていたのかも。……あの場である程度の実力を見せておいて良かった。セスの顔を潰さずに済んだ。

 ふぅ、と私は額の汗を拭うふりをして胸を撫で下ろした。

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