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3.転換点



 俺たちがどういう者なのかを説明するよりもまずは。

 とにかく先に、俺たちの『目的』を説明しておいた方がいいだろう。


「失礼しま~す」

「大丈夫だ。誰も使ってはおらん」


 現在正午過ぎ。レーヴァの街――――の、中央に位置する、軍の小会議室。

 奇異の視線を浴びせられながらも、俺たちはそこへと入った。

 軍というだけあって、廊下も部屋も、どこかお堅い雰囲気に包まれていた。バニーは勿論、一般市民みたいな俺ですらもそぐわない。


「さて……。ここならば、誰にも聞かれることはない。音漏れ防止の魔法札も張り付けてある」

「なんか悪いなぁ、気をまわしてもらって」

「勘違いするな。そうしておかなかったせいで、言葉を濁されたり、説明を省かれでもしたらこちらが困る。

 むしろここまでしたのだ。ある程度のことは話してもらうぞ」

「……」


 さてさて。どこから説明したものかと考えていたところ、窓を背にして立ったままのベルが、「のうニンゲン」と割って入った。


「ぬしはどうして、こちらの事情を聞きたがる? 別におぬしらに危害は加えんぞ、ワシらは」

「……先ほどの説明では、そうは思えんが」

「ま、確かにそうじゃな。一面焼け野原にしたこともあるしのう」

「こ、今回は気を付けますんで……」


 俺たちの言葉に、とてもとても懐疑的な視線を向けるアリス。

 まぁそりゃあね……。

 自分の街が破壊されでもしたら、軍の人間としては嫌だよね……。

 俺がため息をつくと、しかしアリスは首を横に振り、言葉を紡いだ。


「……それだけではない」

「ほう?」


 方眉を上げて聞き返すベルに、アリスは神妙な面持ちで続ける。


「私は……、人々を、この手で守りたいのだ」

「この手で……」

「不安因子が、要因が、目の前にあったとき。目を背けるのは『悪』だと思っている」

「悪……か」


 ベルの声と視線に対し、彼女は真っすぐと見つめ返して、意思を告げる。


「私は、私の衝動のために、目を背けない。背けたくは無い」

「……」


 正直。

 先ほど会ったばかりの彼女の人となりは、理解できていない。

 けれど今の言葉には。とても大きな背景を思わせる、信念のようなものが込められていたような気がする。


「それが、仮に私の手に負えないものでも。

 理解したり、事態の把握をしないまま放置するのは、私の中の信念(いきざま)に反する。それだけだ」

「なるほどのう……」


 ベルは、どこか優しいような。それでいて、やはり舐めつけるような視線を彼女に向けて、パキリと指を鳴らした。


「……ん? 下腹部の、熱が、ひいた?」

「クァハハ。いい答えをもらったのでな。解除しておいたわい」

「きみ……」

「ベルと呼べ。許す。ワシもアリスと呼ぶわい」

「……慣れ合うつもりはないが」

「そうか? ワシは結構気に入ったぞ。コースケの次にのう。寝所(しんじょ)を共にしても良い」

「おいおい……」


 いつものノリになってきたので、ベルの軽口を止めに入ろうとしたところ。


「一緒に……寝るということか? まぁ、それくらいなら別に構わんが」

「「…………」」

「な、何だ……?」


 ついぞ、ベルと目を合わせてしまう。

 いやまぁ、ベルにも時々、人間世界の言い回しの意味が通じないときもあるっちゃあるんだけど(下ネタ的なところは通じてるから、好みと理解度の問題なのかもしれない)。


「いやその、今の寝所を共にっていうのは……はぶッ!?」

「一緒に寝ることじゃ。そりゃもう、昼寝でも何でものう」


 ベルの白い掌で、口をふさがれる。

 コイツ……、『大人な意味』を伝えない気でいるな……?


「は、はぁ……」

「一緒に寝るとキモチイイと思うぞ? せっかくじゃ。ここでの用が済んだら、一緒にどうじゃ」

「まぁ、寝るだけならば構わん」

「くるるるる♪ やったぞコースケ」


 無邪気に喜び、まるで童女のように喜んでいる……が、騙されてはいけない。こいつの瞳の中には、はっきりこう書いてある。

『エサゲットじゃ』

 ……うん。知らぬが花ということで一つ。何にせよベルがやる気を出してくれたのはありがたい。


「と……とにかく。アリスには説明よりも先に、俺たちの目的の方から先に知らせておこうと思うんだ」

「む、きみコースケたちの目的か」

「あぁ」


 頷いて俺は、「そうだな」と切り出した。


「まずはその……、俺たちが『勇者』であるとか、そういったことは一旦信じてもらう。その前提で話を進めるぞ」

「うむ。……にわかには信じられんが、今はそれで話を聞こう」


 アリスもそう言って席に着いた。

 勇者としての責務。

 それは簡単に言うと、この世から不穏因子を取り除くことだ。


「だから簡単に言えば、このレーヴァの街に、不穏な行動をしている奴がいる。そいつを倒し、生け捕りにして、俺たちの上司である女神・ヘリオスちゃんに引き渡す。それが俺たちの、今回の任務だ」

「な……」

「……」


 驚くのも無理はない。

 彼女の話やこの街周辺を見る限り、そういった危険とは無縁の地域だろうと思った。

 俺たちが解決してきた――――例えば先ほど彼女にも話した悪徳城主の一件。

 そもそもあそこは、周囲に生息しているモンスターたちもかなりレベルが高く、だからこそそんな土地の不安定さを利用して、ヤツは悪事を働いていたのだ。

 あのまま放っておけば、神々ですらも、土地を浄化するのにかなりの時間を要することになっていたらしい。


「そういうのを見てきたからか、ヤバいことが起こる(・・・・・・・・・)土地ってのが、なんとなく分かるようになってきたんだ……けど、」


 けど……、この辺りは平和だ。平和すぎる。

 だからそこに違和感を覚えるし、前情報が無ければ、俺も軍が統治したおかげだと思っただろう。


「何?」


 アリスはぴくりと方眉を上げ、怪訝な表情を見せる。


「す……、すまん、怒らせるつもりはないんだ」

「む。こちらもすまん。反射的に怒りを出してしまった。……説明の続きを頼む」


 こほんと一息ついた彼女を見て、俺も「えっとな」と口を開く。


「この街の周りで、ほとんどモンスターを見かけなかったろ? それ、流石におかしいと思わなかったか?」

「ふむ……。そう……だな」


 俺の言葉に、彼女は顎に手を当てて考える。

 僅かに時間を空けたあと、アリスは指の隙間から声を出した。


「まぁ……確かに。中央に居た身からすると、この辺りは元々平和に近かった。

 モンスターの中には、獰猛ではないものもいたりして。下手をしたら、兵士でなくとも追っ払えるレベルのものもいる」


 そして最近では、モンスター自体をほとんど見なくなった。

 アリスはそう続けて視線を上げる。


「しかしそれは……、我々軍が成し得た、一つの平和なのではないのか?」


 彼女の圧が少しだけ強まる。

 俺はやや気圧されながらも、言葉を返した。


「も、勿論、軍の頑張りはあると思うぞ。軍が敷いてる掟もあるみたいだし。それはどうやら、軍の内・外両方に厳しいみたいだしな」


 軍は、平和が乱れないようなルールを敷いている。それに、街からあんな離れた泉にまで調査に来るくらいなんだ。

 少なくともアリスは、とてもこの街に尽くしているってことが分かる。


「だけど。それとは別に。

 モンスターを捕獲して、秘密裏に実験をしているヤツがいるんだ」

「なん……だと?」


 勇者がその土地に出向くのには何種類かあるのだが。

 一つは、俺とベルの上司に当たる、天界・女神サイドが情報をキャッチし、俺たちを向かわせるというパターン。というか、大抵がコレだ。


「詳しいことは分からないんだけど、良くない不穏な魔力の淀みを、天界側がキャッチしたらしい。それに、ベル」

「うむ」


 窓際に立ったままのベルに視線を投げると、彼女は少しだけ窓を開け、鼻をくんと動かした。


「うむ……。良くない匂いじゃの。とてもとても、ワシ好み(・・・・)の匂いじゃよ。それはつまり、ニンゲンにとっては良くないコトが起こっておる。……という意味じゃ」

「そんな……」

「あー、たださアリス。俺たちとしても、こうして軍関係者に事情を説明できるのはありがたいんだよ」


 というか、信じて、聞いてくれる体制になってくれたのがありがたい。

 これまでの街には大きな軍とかが無かったし、そもそも物理的に狭くて分かりやすかったり、後はそもそも権力者・軍側全体が敵だったりしたから、そこまで詳しく説明する必要が無かったのである。


「実は今回は、俺たちにとっても初めてのケース……というか、スタンスでさ。

 信頼できる軍の人に会えたのは、正直運が良かった」


 元々ヘリオスちゃんとの作戦会議で、そろそろ俺とベルの二人だけで事態を終息させるのが難しくなってきたかもしれないと、話題には上がっていたのだ。

 どこまで事情を話すかはさておき、うまいことその土地の協力者を得ることが出来れば、もう少し現地での動き方も幅を持たせられるのではないかと。


「これまでがずっと、『ベルが行ってバーン!』作戦だったからさ……」

「それはもしかして作戦とは言わないのでは……」

「俺もそう思う」


 だからほんとに、アリスという協力者に巡り合えたことはありがたいと思ってるのです。


「クァハハハ。アリスにとっては、運が悪かったかもしれんがの」


 まぁそう言われると否定できないんだけども。

 俺たちの言葉を聞いて、アリスは「そうだな」とつぶやいた。


「だが……、乗り掛かった舟だ。それに、もう私は『知った』からね。

 きみたちのことが信頼できるに足る証拠が揃い次第、協力させてもらうさ」

「アリス……」


 先ほどと比べて、言葉尻は多少柔らかくなっていた。

 少なくとも、こちらの話を完全に疑ってかかるような態度ではなくなったようだ。


「それじゃあ、より信頼してもらえる話に移ろう」


 俺は言って、先ほどと同じ魔法を起動する。

 プロジェクターのようなものが壁に映し出され、その中でヘリオスちゃんが笑みを見せていた。


『どうも! 先ほどぶり! 女神ヘリオスです!』

「ご、ご無沙汰しております、女神」


 俺とベルの上司みたいな立場に当たる、元気な……まぁ、いたく元気すぎる笑顔を持つ女神である。

 さっぱりとしたショートカットの金髪。分けられた髪から覗くおでこが、今日も利発そうに輝いている。

 知性の高さと少女のような奔放さを併せ持つのが、この女神・ヘリオスちゃんなのである。

 ちなみにちゃん付けで呼ぶのは、向こうからの申し出だ。自分の尊敬している人からそう呼ばれているらしいので、そう呼んで欲しいとのことだった。


『さて、それでコースケさん。私は何をすればいいですか?』

「あぁそうだな……。えっと、ヘリオスちゃんの口から、俺たちの事を説明して欲しいんだ」


 俺から説明すると、またどういうパンチが飛んでくるか分からない。

 緩衝材と言うか、女神と言う立場である第三者から喋ってもらった方がスムーズに理解してくれると思ったのだ。

 それに俺からだと、いつ「言ってはならない事」へのストップがかかるか分からないし。


『ふむ、そうですね……』

「ん? どうしたんだヘリオスちゃん?」


 俺はまたぞろ、VR魔法によってアリスに過去映像を見せるのかと思っていた。

 ベルと積雪地帯に赴いたさい、「その格好寒くないの?」って聞いたりしたこととか、「どれ、人肌で温めてやろう」「いやお前基本的に体温低めだろ!?」みたいなやりとりをしたこととか。そんなエピソードを流されるのかなあ、とか。

 そうぼんやりと考えていたところ。しかしヘリオスちゃんは、嫌に鋭い声でアリスに言った。


『アリスさん。ちょっとよろしいですか?』

「何でしょうか、女神」

『あぁ。私のことは、ヘリオスちゃんと、気軽にお呼びください。女神とはそういうものです』

「はぁ、かしこまりました。えっと……、ヘリオス、ちゃん」


 彼女からの呼びかけに、満面の笑みでグッドを返すヘリオスちゃん。

 なんだかとても微笑ましい光景だったが、そこに和んでいる場合ではない。


「あの……、それでヘリオスちゃん。何用でしょうか?」

『はい、そうですね。

 アリスさん。貴女は、この街が大切ですか?』

「それは勿論、大切です。だからこそ、こうして質問に質問を重ね、あなた方との情報・意識の共有を行おうとしております」

『はい、そうですよね!

 でしたら過去のことを知るよりも、まずもって、急いだほうが良いかもしれません』

「は?」


 ヘリオスちゃんの言葉は、強くも弱くもなく。

 ただただ、事実のみを語っていた。


「それは、いったい?」


 先に言っておくと。

 ここから、明日の朝日が昇るまで。

 こういった説明パートに入ることは、もう無かった。何故なら。


『もう既に、魔力の昂りを感じてます』

「は?」


 その言葉と共に、ベルは勢いよく窓を開け、再び鼻を鳴らした。


「クァハハハハ。おいコースケ。なかなか楽しい匂いがするぞ?」

「え……、どういうことだよ?」

「誰だか知らんが今回の黒幕め。もうおっぱじめおったわい。

 すぐにでもこの地下深くから、『合成魔獣(よくないモノ)』が現れるぞ!」

「マジか!?」

「え……、え……?」


 置いてけぼりなのはアリスだけではなく、俺もだ。が、


「じゃあすぐに動くぞベル!」

「何だ? 何がなんだか、分からんぞ!」


 俺は、『分からない状況でもとりあえず動く』ことに慣れている。

 けど、アリスは慣れていないだろう。

 こういうドタバタの状況下で咄嗟の判断をするには、彼女は真っ当な軍人すぎる。

 だから俺は、ヘリオスちゃんとの会話に割って入って、事実だけを端的に伝えた。


「俺たちがここに来た理由は――――軍のお偉いさん(・・・・・・・)を止めるために来たんだ! ここから起こるであろう異常事態を引き起こすのは、アリス、あんたの上司かもしれないんだよっ!」

「な――――」

「突然の情報に戸惑うだろうが、俺たちを信じられるならついてきて欲しい! そうでないなら――――、ッ!!」


 説得もそこそこに。

 突如として、大地は揺れる。

 周囲からは、徐々に民衆の悲鳴や騒ぎ声が大きくなっていっていた。


「クァハハハッ! 出おったぞコースケ! (エサ)の匂いじゃ!」


 震源は、まさしくココ。

 軍本部の地下から発せられていて、どうやら何かが現出したようだった。

 そして。

 ドンドンドンドン! と、勢いよくドアが叩かれる。


「アケロ……! ココにイるノハワカッテイルぞ! 神ノテサキメッ!」


 ドンドン! ドンドン! ドンドンドン! と、音は徐々に大きくなっていく。

 なるほど。遮音の魔法は、内側からの音はロックできても、外からの音は入ってくる仕様なのか。それはともかく。


「何だ!?」


 俺の疑問にヘリオスちゃんはううむと唸り答える。


『どうやら、私たちがここに入り込んだのが、敵にもバレていたみたいですね。むしろだからこそ、計画を早めたのかもしれません』

「なに!? なら、この外から聞こえる声の主は……」

『おそらく、時限式の洗脳魔法ですね。そういう魔力波(ブレス)を感じます。軍の兵士が術者の駒となり、私たちの部屋へ押し寄せているのでしょう』

「そんな……!」


 って、ん? 軍の兵士たち……?

 ということは……、


「うぉッ!」


 ひゅんと。俺の右頬を何かが風を切った。

 俺の思考と体捌きよりも早く、ベルは俺の身体を引き寄せてくれたおかげで、ソレに貫かれることはなかった。

 ソレ。

 俺の元居た位置に突き出された――――銀の剣。

 アリスは、驚いた瞳のまま。

 俺へと、明確な攻撃を仕掛けてきていた。


「ぐっ……、な、何だ……、こ、れ、は……!」

「アリス!」

『おぉ、洗脳魔法に抗っていますね! 人間としてはかなり魔力抵抗が高いです! ですが……、』


 ヘリオスちゃんの関心も他所に、アリスは何とか抗おうと必死になっている。

 歯を食いしばり、どうにか身体に言うことを聞かせようとしていた。


「わ、た……し、は、……こんな、こんな、ものに……、屈しな、い……ッ!」


 しかし魔法の浸食は止まらない。

 ぶるぶると震える手と思考回路は止まっていき、彼女の意識を完全に消し去ろうとしている。


「どうするコースケ? 一度離脱するか?」

「いや……、この状況のアリスを放ってはおけないだろ」

「ぐぅっ……!」


 もう彼女の意識は二割程度しか残っていないだろう。

 剣をこちらに向けたまま、後ろ手で部屋のドアロックを解除する。その瞬間、通路に所狭しと詰め寄っていた兵士が、こちらへとなだれ込もうとしていた。


「あぎっ……!」


 アリスは残った意識の中で、自身で開けた扉を再び閉め、叩かれる扉の衝撃を背中越しに受け止めていた。

 さっきよりも更に大きな音が響き渡る。扉が壊れるのが先か、アリスの意識が消えるのが先か、それとも、――――アリスの身体が壊れるのが先か。


「わた、し、は……、コノ街ヲマモルト、チカッタ……! ワルいコトハ、ゼッタイニトメテミ、セ、ル……ッ」


 歯をぎりぎりと食いしばり、涎と血を垂らしながらも、彼女はうつろな瞳でこちらを見ていた。

 消えゆく意識。

 それでも、強い瞳。

 青い瞳の奥に、燃え滾る情熱が見て取れた。


「緊急手段じゃコースケ! さっきと(・・・・)同じ魔法をかけてやれ!」

「しっ、仕方ないか……!」


 アリス、恨むなよ!

 この状況から脱するには、こうするしか方法が無い!


「ベル! ちゃんとさっきの、解除してあるんだろうな!」

「勿論じゃ。そうでなくては、本物(・・)になってしまうからのう!」


 なら、良かった。

 それじゃあ行くぞ……!


「『仮装着(ドレスアッパー)』!!」


 扉は破られる。

 それと同時。彼女の身体も、それに押しつぶされるはずだった。

 が……、それよりも早く。アリス・アルシアンの身体は、大きく光り輝く。


「――――、」


 そして彼女は。

 俺へと向けていた剣を素早く構えなおし、目にもとまらぬ速さで兵士たちからの攻撃をさばき切る。

 五の斬撃。十の刺突。それらを、身をよじり、剣を舞わせ、まるで羽が生えたかのような身のこなしで、全て受け切ってみせた。


「これ、は……!」


 正気に戻った瞳を確認した瞬間。俺はベルに指示を出す。


「ベル!」

「うむ!」


 ベルはウサミミを揺らしたかと思うと、素早く俺とアリスの身体を掴み、窓を勢いよく破壊して外へと飛び出した。

 飛行。飛翔。……まぁなんでもいいけれど。

 俺たちはそれぞれベルの両脇に抱えられたまま、レーヴァの街の空を舞っていた。


 こうして。

 急転直下。突如として、戦いの幕は上がった。

 今回も勇者としての。

 任務開始である。






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[一言] 調査パートもないぐらい敵がせっかちなのもまた良い ベルが行ってバーン作戦はりにかなってる
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