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19.光と闇



 切り刻まれていく。

 魔法体も、建物も、木々も、全て。

 ヘリオスちゃん曰く、このあたりの住民の避難は全て完了しているとのことだったけれど、それにしたって容赦のない破壊っぷりだ。

 被害を全く考えない。

 まるで最初に会ったばかりのベルみたいだ。


「こっちから動くとかねーから。さっさと来なよ」


 気だるげな構え。しかし周囲に魔法体が襲い掛かった瞬間、周囲を飛び交っていた魔剣が瞬時に飛来する。


「ガン萎えだわマジ」


 まるで指揮棒のように魔剣を振るう黒ギャルのヒナ。

 僅かな呼吸と共に剣が敵を指し示すと、今しがた魔法体を貫いた魔剣たちは、更なるターゲットを求めて疾駆した。


「これがヒナの……、もう一つの人格」


 ベル曰く。

 今のヒナには、そもそも二つの特性が内包されていたという。

 元々の残虐性を帯びていた、魔剣としての闇の人格。

 そして。勇者の愛剣として世界を救った、光の人格。

 俺たちが接していたヒナは。光の人格。つまり、後から出来たほうの人格であると。


『本来ならばあり得んことじゃが、勇者とやらのテキトーさのせいで、世界を救ったという光の側面が生まれてしもうた』

『つまり……、二重人格ってことか?』

『いや。ワシの推測が正しければ――――』


 そこまで言い残して、ベルは今度こそ戦場へ駆けて行った。

 でもそこまで言われればもう分かる。

 二重人格で無いのなら……。


「ん~~~………………、あ~、だっる…………。ナカから出るわコレ~…………」


 闇の瘴気が膨れ上がる。

 そして大きくカタチを歪ませたかと思うと――――その中からもう一つの身体が現れた。


「うぉッ!?」


 人格が変わっただけじゃなく、増えた!?


「っぷは! あ~、やっと出れたし~~~~ッッ!!」

「あーマジ。身体おもかったわ~」


 魔法の光に包まれて、まるで細胞分裂のように、ヒナからヒナが生まれていた。

 黒ギャルの中から白ギャルが出てきやがった……!


「ヒナっ! ……ヒナで良いんだよな?」

「……あ~コーにゃん。おひさ? いや、さっきぶり? はじめまして?」

「はじめましては違うっしょ。くそばかじゃね?」

「はぁ!? こちとら新生した(うまれた)ばっかで頭混乱してんですけどー? もうちょっと気ぃ使うとかねーの?」

「ウザ絡みすんなしー。そっちこそ、あーしから魔力持っていくとかねーから。性格終わってンわマジ」

「終わってんのはおめーだし!」

「はぁ!? ず~っとあーしの(えもの)借りパクしてたヤツに言われたくねーんだけど?」

「パクってねーし。返してんじゃん!」

「勝手に持ってくなつってんですけどー」

「お、おいおいケンカすんな……あっ! 来てる! なんかまた援軍来てるから!」


 またまたまたまた現れる。

 そこには更なる魔法体の、数、数、数。そして、――――サイズ。

 敵もだいぶ本腰を入れて来たのか、先ほどまでの魔法体に加え、家程もある幼女が出現していた。


「あーもー……」

「めんでぃー……」


 しかし二人はそれぞれ、荘厳な武器を振りかざす。

 白ギャルのヒナは鎌を。

 黒ギャルのヒナは剣を。

 そして、二人は一斉に振り抜いた。


「「――――静かにしてろッ!!」」


 一閃。が、二つ。

 縦と横、十字の斬撃が飛んだと思ったら――――全ての敵が両断されていた。


「すげ……ッ!」


 今の威力を半分にしたとしても、これまでのヒナでは考えられない破壊力だ。

 頑丈な北の壁すらも、斬撃により抉れている。


「はーマジで……。マジ無理だっる」


 殲滅後、黒ギャルの方のヒナはぺたんと地面に座り込んだ。

 それに対して白ギャルのヒナがため息をつく。


「文句ばっかじゃん。も~ちょっとニンゲンのためにがんばろーとか無いん?」

「ねーし。ニンゲンとか、コーにゃん以外興味ないじゃんね? ね~?」

「え、俺?」


 ダル気な視線と共に、ひらひらと手を振られた。

 もしかして……、これまでのヒナと感覚や感情も共有してる?


「ちょ……! コーにゃんって呼ぶなし! アタシの呼び方だし!」

「は~? あーしの身体使って呼んでたんだからコーにゃんでいいじゃんね。ソクバッキーとかはやんね~から」

「う、うっせうっせ!」


 ……なんか。

 厳つい武器を持っていなければ、なんだか仲の良いギャル姉妹みたいだった。

 二人の勢いに圧倒されていると、白ギャルの方のヒナがため息をつきながら肩に寄りかかってくる。


「コーにゃんさぁ……。マジ無茶すんじゃん……」

「ヒナ……」


 ひんやりとした、けれど熱を帯びた体温が、服の上からでも伝わってきた。


「アタシ()のためを思ってくれたのかもしれないけどさ~……。マジ、なんかあったら悲しすぎるから、やめて」

「……悪かった。俺には身体張る事しか出来なくてさ」


 ぽんぽんと肩口を叩く。

 ぎゅ、と、彼女の小さな手が俺の服を掴んでいた。

 後ろから黒ギャルの方のヒナも、「そ~そ~」と同意する。


「あーし的にも、コーにゃんは気に入ってっし。つーかだから出て来たし。

 会って即ばいばいとか、出て来た甲斐ねーから」

「おう……。そっちも、すまなかったな」

「コイツ思ったいじょ~にコーにゃん好きみたいだしさ~」


 突っ伏したままの白ヒナの頭をぐりぐり撫でる黒ヒナ。

 そこにいるのは、魔剣ということを忘れるほどに、小さな女の子だった。


「むしろ何があってもあーしらが守るし。だから、死なんで」

「……だよ、コーにゃん。次こんなことやったら切り落とすから」


 ……どこを?


「……っ。おしっ! 切り替え完了! 戦いに戻るから☆」

「急にアゲんじゃん」

「いやいや、戦いはアゲてナンボだし!」

「まじでか~。こっち変わったばっかでメイクもねーからアゲ要素ないんですけど。くそダルすぎ」


 なんだかマイペースな二人である。

 ただ、元の調子に戻ったんだったら、やってもらいたいこともある。


「二人とも頼みが。大丈夫なら、アリスのところに行ってくれ!」

「アリしゅんとこ?」

「説明は省くけど、ルーチェリエルの狙いはアリスなんだ!」

「マジか」

「アリぴ大変じゃん。なんか魔竜にも寄られてなかった?」

「なんか引きつけんのかもね」


 なんかバタバタな状況だけど。

 今はもう、この二人に頼るしかない。


「ならコーにゃん、そっこー行くね!」

「あーしらのことは、また後で説明すっから~。んじゃ」


 元気よく手を振る光のヒナと、気だるげに手を振る闇のヒナ。

 よく分からんが、俺の捨て身の行動で事態が好転したなら良かった。


「……………………」


 嵐が去った後、冷静さの波が頭に押し寄せる。


「…………あれ? 冷静に考えればおかしくない?」


 二人に増えた! ヒナ増えてたよな?

 ……増えた。……え、増えるとかあんの?


「………………、……、……?」


 そんなこともあるよね!

 …………あるよね!


「よし……。じゃあ次! 次だ……!」


 もういい! 敵ではないわけだから!

 超常な奴らと付き合うには、現象の理解を諦めるのが一番早い。

 俺は宙に四角を描き、再度ヘリオスちゃんと連絡を取る。


『コー……ケさん……。……わりま……か?』

「うおめっちゃ聞こえ辛い! 空飛ぶ洞窟からの妨害か!?」

『こ……らも…………んね』


 どうやらこちらの声も向こうには届きづらいらしい。

 下手したらこの通信が最後になるかもしれないな。


『アリ…………には、何故……二体の……ヒナク……向かってる……すね!』

「あぁうん。ヒナが二体になったんだけど、両方味方だから問題無くて」

『わ……ました!』

「ベルの方はどうなってる?」

『ベルア…………が現在、一人…………戦って……』

「まだ向こうも片付いてないか……」


 ベルの援軍に行くか?

 でも本丸を叩かないことには、この魔法体の増援は止まらないかもしれない。

 いくら何でも無尽蔵というわけではないだろうけど……、こうしてる間にも街に被害が拡大していくし。


『コー……ケさん。ベル…………の元へ急いで……い!』

「え、ヘリオスちゃん?」


 途切れ途切れの音声でも分かるくらいに、彼女の声色は切羽詰まっていた。


『…………アイン……周りには、大量……一般人が……ます!』

「――――」


 俺は即座に通信を切って。

 ベルが戦っている――――南の門へと走る。


「人が大量に居る空間……!」


 その報せは、俺を急がせるには十分だった。







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