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11.作戦開始!



「復活じゃ!」

「「「おぉ~」」」


 黒く長い耳飾り。色白で、メリハリのありすぎる身体つきをぎちりと締め付ける黒のビスチェ。

 エグいくびれ。柔らかな尻の上に乗る、ちょこんとした丸尻尾の飾り。

 赤いピンヒールはどっしりと地を踏む。長い髪はばさりと宙を舞う。

 燃えるような獰猛な瞳に勝気な笑み。


 こうして翌日の早朝。

 魔竜・ベルアインは、無事復活を果たした。


「感謝するぞみなよ」

「あぁ。息災で何よりだ」

「よかったよ~ベルりん♪」

「うむうむ」


 ベルは二人にハグをしつつ礼を言う。


「小女神も、尽力してくれたようじゃのう」

『お礼を言えるようになったとは驚きです』

「じゃろう? 日々進化しておるんじゃ」

『ふふ。そうですね』


 どことなくだけれど、ヘリオスちゃんに対しても物腰が柔らかくなっている気がする。

 新しく仲間が出来たことで、思うところがあったのかもしれない。


「……とか、ようわからんことを思っておるんじゃなかろうなァぬしよ?」

「うぉ!? 心を読まれてる!?」

「当たり前じゃ。顔カタチが変わったくらいで欺けると思うたら大間違いじゃ」

「別に欺こうとしたわけじゃないけど……うぉ!?」


 ぼふんと、乱雑に顔を掴まれ胸の谷間に誘われた。

 これまでは目線の高さにあったベルの爆乳だが、今は腰を曲げた高さにあるのが不思議だ。


「戻ったぞい」

「……おう。おかえり」


 まったく。これからうるさくなるなあ。……でもようやく安心できた。

 俺自身、少し身体が軽くなった気がした。


「ベルきみ、前みたいにから元気じゃないだろうな?」


 横合いからのアリスの問いかけに、ベルは俺の頭を胸から引き抜きながら答えた。


「余裕も余裕。全快じゃよ。小女神の保証付き……じゃろう?」

『はい! ベルアインの力は、前と同じく百パーセント発揮できる状態になっています!

 限界を超えて魔竜状態になったのが、かえって良かったみたいですね!』

「異常魔力の影響はどうなんだ?」

「うむ。抗体として取り込んでやったわい」

「荒療治すぎる……」


 弱体化していたとは聞いてたけど、どうやらそれすらも克服したみたいだった。


「それじゃあベルも復活したことだし、三手に分かれるか」

『えぇ、そうしましょう!』


 あの幼女――――光魔法・ルーチェリエルを不成立にするための作戦。

 三か所の封印を全て破壊すれば、消滅ないし弱体化させることが出来るというものである。


「もう一度確認なんだけど、この街を手薄にしても大丈夫なんだよね?」

『はい、一日・二日なら問題無いかと』


 ヘリオスちゃんが言うには。

 あのダンジョン内にいた幼女は、あの場所から出られないということだった。

 厳密には、出ることはできてもすぐにパワーが出せなくなる。

 やはり予想した通り、限定的な空間のみの最強状態ってことか……。


『ただ、今のところは、です。

 それに何を仕掛けてくるか分かりません。できるだけ迅速に行きましょう』

「そうだな……。ダンジョン内で襲ってきた魔法生物をけしかけてくるかもしれない」

「それに周辺の魔物もヤババ化してんでしょ? ニンゲンらもぴえんじゃんね」


 というわけで早速行動に移る。

 組み分けは、

 西・オーネットの森:アリス

 東・ヘリドの遺跡:ヒナ&ヘリオスちゃん(お目付け役)

 北・グラウス鉱山:ベル&コースケ(お目付け役)

 となった。


「久々だからといって、イチャイチャしないように」

「おっ、お前こそ! 一人なんだからしくじるなよ!」


 厳しい言葉ながらもからかってくるアリスに、俺はやや狼狽えながら返した。


「大丈夫じゃ。コースケはそこまで長持ちする方ではない。その代わり回数が……わぷっ」

「余計なコト言わなくていいんですよベルさん……」


 慌てて口をふさぐも遅かったみたいだけど。

 アリスは何故かその事実を知っているかのように赤面していた。不思議なことだ。


「攻撃の話してんの~?」

『ある意味そんなところです』


 ヘリオスちゃんはヒナからの質問に、珍しく分かりやすく返していなかった。ナイス判断です女神様。


「それじゃあ行くぞ! タイムリミットは――――明日の朝までだ!」

「「「『おーっ!」」」』


 みんなの掛け声と共に、ミッションはスタートした。


「……自分で掛け声しといてなんだけど、だいぶ無茶なミッションだよなこれ」


 これからそれぞれが挑むのは、危険度的には超上位。

 ハバールの街の周辺では危険区域と言われている三か所。

 上位冒険者が複数人で挑むこと前提の、Aランクの難所である。







「……と。到着と」

「うむ。味気ないが、便利は便利じゃわい」


 ヘリオスちゃんの空間転移(ワープ)により、俺とベルはグラウス鉱山の近くへと到着した。


「この近くに鉱山がある。……そして、」

「うむ……。見えるぞい。

 逆方面に見えるのが、この間煮え湯を飲まされたダンジョンじゃ」

「こえ~……」


 ヘリオスちゃんの言葉を思い出す。


『コースケさんたちは特に気を付けてください。二人が向うグラウス鉱山は、幼女の住まうダンジョンの、すぐ近くなのですから』


「ここから五分も走れば、リベンジに行ける。それくらいの距離じゃ」

「大爆弾が眠る近くで、違う爆弾処理するみたいなもんだよなコレ……」


 近くに俺たちが来ていると感づかれたらどうなってしまうんだろうか。

 何かの刺客を差し向けられたりとか……あり得る。


「まぁ出たとこ勝負じゃ。これまでもそうじゃったじゃろ?」

「お前は男らしいなあ……」


 ぶるんと形の良い胸を張るベル……って、なんかこのカンジも久々な気がする。


「では行くぞい。くれぐれも死ぬなよぬしよ」

「加減してね……」

「大丈夫じゃ。ぬしとのまぐわい中に、力加減を覚えたでのう」

「むしろそれまで覚えて無かったのかよ!?」

「昂りすぎて危うくもいでしまうところじゃったわい。クァハハハハッ!」

「……なにを?」


 日常会話を交わしながら、鉱山へ入る。

 前情報によると、ここは年中何かしらの鉱物が取れる場所らしく、中は薄暗いため何かしらの光が必要とのことだったのだが――――


「……なんだこりゃ!?」

「フム。これは驚いたわい」


 中は。

 見渡す限りのクリスタルまみれだった。


「……うぉぉ」


 足場も壁も天上も、奥の方に見える通路や脇道に至るまで、全てがぎらぎらと光り輝いている。

 曇っているから今ははっきりと見えないが、磨けばすぐにでも自分の顔を映せすことが出来るだろう。


「これは……、明らかに異常事態ですね……」

「ヤツの異常魔力が伝播したか。もしくは、封印とやらを埋め込んだことで影響を与えたか」

「何にせよ、一筋縄ではいかなさそうだな……」


 ゴツ、と、クリスタルの地面へ一歩を踏み出す。

 こうして久々の、二人きりのクエストが始まった。

 俺たちに与えられた任務は一つだけ。この地に植え付けられた封印の破壊だ。


「…………、」


 そして、秘密裏に俺に与えられた任務が、一つ。

 ベルの更なる可能性。

 それを探ることである。






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