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5.作戦会議・2



 会議内容まとめ。

 ベルは眠ったままだけどとりあえず俺たちパーティは大丈夫!

 あのダンジョンは早いところ駆除しないと、このあたりが危険だからどうにかしよう!

 あの幼女は『魔法・ルーチェリエル』の擬人化だったよ!


「……ってことなんだけど」

「あぁ」

「わけわからんね……」

「まったくだ……」


 はぁと、アリスと俺はため息をつく。

 あの幼女まわりのことが判明したところで、その日は一旦お開きとなった。


「さすがに俺とアリスの脳が限界だった……」

「うむ。あれ以上会議が続いたら、理解が追い付かなかっただろう。絶対どこかでパンクしていた」


 一夜明けて、その日の朝。

 俺とアリスはとある任務のため、郊外の森に出てきている。

 あのダンジョンとは真逆の方向。

 本来ならBランク以上の上位冒険者しか入れないようなクエスト場所である。

 ちなみに、街と拠点(ホテル)に何かあってもいいように、今日はヒナがお留守番だ。


「今更なんだけど。今回は何でヒナにお目付け役って要らないんだっけ?」


 ヒナとベルは『魔なる者』のため、俺かアリス(にんげん)のどちらかが見張っていなければならないはずだ。

 しかし出立前に、アリスは何やらヘリオスちゃんとごにゃごにゃ交渉をしていた。


「まぁ簡単に言えば、『重荷になるからそちらで見張っていてくれ』という旨を伝えたんだ」

「そんな簡単なことでいいのか?」

「いや、だいぶ粘ったよ。流石に今回は、何度か言い回しを試したりした」

「あはは……。オッケー出す側も大変だよなぁ」

「ヘリオスちゃんの優しさには痛み入るばかりだ」


 ここでおさらい。

 女神はこちらの味方だが、強すぎるが故に『人間界のこと』においそれと手助けは出来ないのである。

 だからアリスやヘリオスちゃんは、半ば出来レースみたいな進言や助言を繰り返しながら、活動をスムーズに行えるようにしてる。


 ハバールの街からパガラの森への移動もそうだ。

 勇者活動の一環の中で、

『移動にそこまで労力をかけさせるのは天界側の落ち度では? ご配慮してくれないと困るんだが? おぉん?(意訳)』

 という進言をアリスがしたことで、ヘリオスちゃんも、

『そうでしたねえ。こいつは天界側(わたし)の落ち度でしたわい。いや~うっかりうっかり★(超意訳)』

 とてへぺろをキメ、ある程度の場所までは空間転移(ワープ)をしてくれるようになったのだ。


 まぁこれも、ヘリオスちゃんがこちら側に完全協力の意志があるからこそできる、抜け道のようなものなので。どんな神・女神にも通用する手法ではないということだけは覚えておかなくてはならない。

 おさらい終わり。


「――――しかし。昨日のヒナと言いヘリオスちゃんと言い、色んなアイテムから色んなことが出来るんだなあ」

「そうだね。流石は神代を知っている者たちだ」


 綺麗な緑の中を俺たちは進む。

 ヒナが作ってくれた察知薬草を身体に振りかけているので、のんびり会話しながらでも進めるのはありがたい。


「まぁ『魔法の擬人化』って分かった直後は、ヘリオスちゃんも困惑したとは言ってたな」

「分かりやすく説明をするため、自身の困惑度合いを薄めていたのだろう。さすがは女神だ」


 困惑を我慢することを女神のスキルみたいに言うなよ。


「しかしまぁ。二度あることは三度あるとは言うし、アリス自身も似たようなことを俺に言ってたけど……、なぁ」

「こうも立て続けに起こられると、頭を抱えたくもなる……」

「だよな」


 眉間に皺を寄せながらも、前方を見てアリスは「止まれ」と合図を出す。


「コカトリスだ。倒すか? それとも迂回するか?」

「そうだなぁ……」


 鶏と蛇が合体したようなモンスターだ。

 普段通りなら、アリスの一撃で終わる。何故か魔力が高くなっている俺でも、楽勝かもしれない。

 だけどいつ俺に不調が起こるか分からないし、その影響がアリスに流れて行かないとも限らない。

 なのでここは――――


「無駄に戦っても仕方ないし。避けようぜ」

「了解した」


 こういうとき。ベルと違って、アリスはこちらの提案を汲んでくれるからありがたい。

 まぁあいつは、俺の思惑を伝える前に攻撃しに行っちゃうからなあ。


「よし……、抜けたね」


 無事に迂回し終えた俺たちは、再び森を行く。


「しかし……、きみの身体」

「ん?」

「やはり、意味が不明だね」


 まじまじと上から下までを見ながら言うアリス。

 意味不明と言われてもな……。


「いや、外見を乏しているのではなく、『敵の意図が』不明ということだ」

「ん? あぁそういう意味ね。……そうだよなあ」


 今のイケメンの姿は、俺の意志ではない。敵からの攻撃によってこうなったのだ。


「しかも言葉的には、明確な敵意があったよね。つまりあの幼女にとっては、コースケをイケメンの姿にすることは、攻撃、あるいは弱体の意図があるということなのだが……」

「今のところ、プラスにしか働いてないよなあ」


 イケメンになって女の子にもモテるし。

 その分どこかが弱体化したのかと思えば、そんなことはない。むしろ魔力はパワーアップしている。


「バニーを付与してるお前らとの繋がりも問題無いし……」

「だが……、あのダンジョンで感じた罠のエグさを考えると、絶対に何かがあると思う」

「そうだよなぁ」


 あの銀髪幼女。

 下品な言葉遣いとは裏腹に、用意周到すぎる罠の敷き詰め方だった。

 ベルたちへの殺意ある攻撃もそうだし、去り際に攻撃されるとき、明確に殺意も感じた。

 俺をこの姿に変えたのは、絶対に何かしらの意図があるはずなのだ。……が。


「今のところ異常は起こっていない。だが、遅効性であることも否定できん」

「そうだなあ。だからこそ、無用な戦いは避ける方向で」

「了解した」


 俺たちのパーティは、悲しいかな、俺を中心に回っている。

 ベルとヒナが地上で戦えるのは、天界からの魔力を持つ俺がいるからだし、バニーの力を使うのであればアリスも同様だ。


「アリスだけは元がニンゲンだからな……。仮に俺が死んで魔力が無くなっても、バニー以外の方法で戦える」

「それは考えたくないな。

 恥ずかしさは置いておき……、やはりあのバニー姿でいるときの全能感は異常だ」

「やっぱそうなのか」

「あぁ。だからコースケ。絶対死ぬな。

 悲しいとかそういうのは抜きにしても、きみのバニーの力が無ければあの幼女には対抗できん」

「……分かった!」


 ぐっと俺は頷く。

 あのダンジョンで、最奥にたどり着いたとき。

 俺たちの戦力は、最大状態だった。

 ベルと俺は言わずもがなだが、アリスもヒナもバニー状態で攻め込んだのだ。

 だけどそれをいなされた。強制脱出するしか生き残れなかった。


「ベルが起きたとして……。それまでに俺たちの戦力をダウンさせるわけにはいかないもんな」

「あぁ。だからこそ、ダウンさせるのではなく、むしろアップさせに行っているのだ」


 さて。

 俺とアリスが進んでいる、パガラの森というこの場所。

 なんでもここには、とある『武器』のパーツが眠っているらしい。


「でもここって、大昔からある場所なんだろ?

 上級ランクって言ってもBランクだしさ。既に誰かが回収してるんじゃないのか?」

「おそらく物理的に存在しているわけではないのだろうな」

「というと?」

「推測だが……。パガラの森の指定場所。ここで『何か』をすれば、武器のパーツとやらが現れるのだと思う」

「あぁそういうギミックか……。だから女神しか知らなかったんだな?」

「おそらくね」


 なるほどと思いながら再び前を向く。

 けどヘリオスちゃんの言い回し的に、なんか引っかかるんだよなあ。


「……『今の』俺になら任せられるって、どういう意味なんだろう?」


 呟きながらも俺は、アリスと共に森を進んでいった。

 Bランクとは思えないほどに穏やかな風が、木々の間をすり抜けていく。

 目的の場所までは、まだまだ遠そうだった。






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