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24.そして再び戦禍へと



『――――判明しました』

「……マジで?」


 あれから三日が経過して。四日目の朝。

 ヘリオスちゃんはいつもの元気さで、俺にそう告げた。

 この街に入ってからというもの、起きてからと寝る前の最低二回。何があったかを(もしくは何もなかったことを)報告するようにしていたのだが。まさかの情報だった。


『それが完全なる原因かは分かりませんが。

 しかし、放っておけない異常魔力であるというのも、事実です』

「なるほど……」

『今、他の方々は?』

「あぁうん」


 俺は何も考えずにヘリオスちゃんに口を開く。

 それが、どれだけ問題発言になるかなど、考えもせず。


「ベルなら俺の横で寝てるけど」

『…………………………わかりました!』

「えっ……? あっ……!」


 今の自分が、とてつもなくプレイボーイな発言をしていることに気づく。

 これではまるで同衾しているみたいで……、


『え、違うんですか?』

「……いや違わないんだ、けど」


 外見的にはしっかり者の中学生女子みたいな娘に、オトナな情事を説明しているみたいである。知らない人が見たら通報しそうな危険性だ。


『まぁ私としては、ベルアインが幸せなら問題ありませんので』


 そう言いながらも、ヘリオスちゃんはやや顔を赤らめつつ口をすぼめていた。

 ……とにかくピンク色な空気を変えましょう。

 俺は「それで」と、力技で話題を異常の原因の方へ戻した。


「どこで見つかったんだ? 場所は?」

『はい。ベルアインとヴァルヒナクトが戦ったというテノーの丘。そこから更に先へ進んだ場所に、反応が見られました』

「なるほど」

『ちなみにあの場所を破壊したのは、異常現象ということで落ち着いておりますので、弁償などの心配はありません!』

「なるほど!」


 良かったです!

 正直心配ではあったけれど。あの後特に言及も無かったものだから、気にするのをやめていたのだ。

 もしかしたら夜間に出るという異常モンスターのせいに出来たのかもしれない。完全に濡れ衣だけど。


「それじゃあみんなを集めるから、近くまで空間移動(ワープ)を使ってもらってもいいかな?」

『分かりました! あまりにも近すぎるとこちらの魔力を察知されてしまう可能性もありますので、分かりやすくテノーの丘へと移動させますね!』


 という流れがあり。

 意外と寝起きの悪いヒナをなんとかアリスに起こしてもらい、街の外へ。

 そこから一気にテノーの丘へと移動して、俺たちは久しぶりの野外戦闘を開始した。


「戦闘間隔四日が『久しぶり』とか、俺の生活も変わったよなあ……」

「クァハハハ! ワシのダーリンにふさわしくなっとる証拠じゃ」

「朝からお熱いことだ」

「鍛冶屋かな?」


 うるさいよ。

 しかして今日は、久々の四人行動である。外のクエストに出るとなれば、初めてのことだ。

 穏やかな風をその身に受けながら、アリスが再び確認してくる。


「出立前にも確認はしたが。魔力の発生源がほぼはっきりしたということだから、街には誰も残らなくていいということだったね?」

「そうだな。

 異常魔力の発生源がほぼ判明したからな。あの街に誰かを残すスタイルは取らなくていいんじゃないかってことでさ」

「なるほど~。ま、あの街には他にもぼーけんしゃ? って人たちもいるしねぇ。

 よほどヤバイことが起きない限りは、対処できるかな」

「そういうこと。それに……」


 ヘリオスちゃん曰く。

 最大戦力で臨まなければ、ヤバイかもしれないとのことで。


「――――ほう」


 そう呟く俺の言葉に、ベルは目をぎらつかせる。

 続いてヒナも、アリスも同じ表情をしていた。なんだかんだ血気盛んだよな、うちのパーティは……。

 穏やかな晴れの中を歩く。

 ベルとヒナが戦ったときも思ったが。この辺りの土地柄なのか、晴れの日が続いている。


「とても異常魔力が発生してるとは思えないなぁ」


 まるで散歩コースを歩いているみたいだ。

 いやもちろん、普段から野生モンスターが現れたりするような道でもあるんだろうけど。それすらも感じさせないような穏やかさがあった。


「嵐の前の静けさにならないことを祈ろう」


 そんなことを言っている間に。程なく歩いて件の場所へとたどり着く。

 緑に囲まれた丘の上。なだらかに続く坂道を登ったところに、ソレはあった。

 岩がむき出しの洞窟。

 確かにこの風景には若干そぐわないかもしれないが……、そんなに危険な場所とも思えない。

 現に、周囲の木々は緑を蓄え、鳥も舞い、空気も良い。

 この洞窟自体も、特別深いわけでもなさそうだしな。


「……っ」

「ヒナ?」


 しかし。

 その感想を抱いたのは、俺とアリスのニンゲン組だけのようで。

 ベルとヒナは少しだけ警戒態勢に移り、纏う空気をひりつかせていた。


「ベルりん。ここ、ヤバみなの分かる?」

「うむ。まさかこんなところでお目にかかるとはのう」

「二人とも……?」


 俺とアリスが首を傾げた直後だった。


「コースケ!」

「え……」


 洞窟の奥底から、ふいにヒトガタ(・・・・)のフォルムが飛んでくる。

 スライムのような、ともすれば液状ともとれる身体。それがヒトの形をしていて。それが一直線に、俺へと――――攻撃を行ってきた。


「フンッ!」


 その飛来を、ベルは高速で打ち払ってくれた。

 俺の目の前で衝撃が巻き起こり、飛来した『何か』ははじき返される。


「女のカタチ……?」


 打ち払われ地面に付す生物(?)を見やると、どうやらそれは女性の形をしていた。

 女性……というか、年齢の低い、幼女?


「ウチのコーにゃんに……、何すんだ!」


 体勢を整える謎の生物へと、今度はヒナが追撃をかける。

 彼女が顕現させた疑似魔剣は、その鋭い切れ味を持ってして、液体生物と思しきものの首をあっさりと跳ねた。


「QQQ、kkn――――」


 不思議な(こえ)を発しながら、幼女大の液体生物は塵になり、消えて行った。

 な、なんだったんだ……。


「今のは『魔法体』だねえ」

「魔法体?」

「うーん……。姿かたちが曖昧な、低級精霊みたいなものかな」


 俺の質問に答えるヒナに、アリスも脇から加わる。


「私も、昔の文献でしか読んだことしかない。ゴーストのようなものか?」

「そんなトコかな~。どうやら、普通の斬撃も効くみたいだし。外見ほど脅威度は高くないよ♪」

「なるほど」


 液体生物。魔法生物。

 まぁベルやヒナみたいな存在がいるんだ。そういうのもいるかぁ。


「問題は、どれくらい危険なのかってことだけど」

「そうだね~……。

 この場所どうにも危険っぽいっていうことを置いといて話すなら、単体としては大したことないかな」

「そうなのか?」

「うむ。在り方やカタチが不思議なだけで、脅威としては高ランクモンスターらと変わらんわい」

「高ランクモンスターくらいはあるんだな……」

「じゃがワシらにとっては、そこらのモンスターと比べると誤差みたいなもんじゃ」

「あぁでも、念のためにアリしゅはバニー化しておいたほうがイイかもね~。コーにゃんを守る意味でも」

「そうだな……。むぅ、昂れ……。昂れ……」

「昂れって念じるのもど~だし☆」


 言いながらも二人は、ナチュラルに洞窟内に向かって歩き出していた。

 あぁ……、普通に入る流れなんだな。


「分かっておるじゃろう? ワシらじゃぞ?」

「ソウダネ……」


 肩を落とし、俺も二人とベルの後に続く。

 しかし俺はこのとき。

 まさかこの洞窟内部で、人生が変わるような出来事を体験することになるとは。

 思っていなかったのである。


 静かに内部から吹いてくる風に引き寄せられるように。

 俺たちは洞窟を、進む。







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