表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/118

22.下着屋事変・3



 会話は色めき立つ。踊り出す。

 姦しいという言葉があるが、今の私たちはまさしくその通りで。


「この、フルカップとハーフカップとは、どう違う?」

「フルに比べて、ハーフの方が布面積が少ないんだよ~。今のベルりんみたいに、綺麗な谷間を作りたい人向けって感じかな~」

「なるほどのう……」

「というか、きみが今手にしているソレ、良いデザインだな。私のサイズ無いかな……」

「おっけ、アタシも探すよ~。サイズは?」

「実はこの旅の途中で、上がってしまってね。この間測ったときには、67のFだった」

「へ~。アリしゅって横にベルりんが居るから麻痺っちゃうケド、十分巨乳だよね~」

「……まぁ、誉め言葉として受け取っておこうかな」


 というか、彼女の体形は規格外すぎる。

 数値以上に、目で見るとあまりの色香に性別関係なしに惹かれてしまう。

 胸より上だけで見てみても……。肌の色、肩の高さ、首の長さとバランス、髪の毛の生え際に至るまで。すべてがかなり際どいバランスで調整されていて、至高の芸術品のようにまとまっている。

 よからぬ思考が頭をよぎるのは、無理からぬ話だ。彼女に迫られたとき、私があまり抵抗できないのも、それが原因でもある。


「F~F~♪ どっこかな~♪」

「まぁ、きみはきみで、とてもまとまりのある身体つきだけれどね」


 ……ふむ、見つからないな。切らしているのかな? 残念だ。


「きみのほうも探そう。サイズはいくつなんだ?」

「ありちょ☆ えっとね~……。アタシのサイズは、アンダー61のDだね」

「そうか。それだとかなり選びやすそうだね」

「だよ~。ただ、選択肢が多すぎるのもちょっとネー。目移りしちゃうからアタシ」

「なるほど確かに」


 物珍しそうに店内を眺めているベルを横目で見つつ、私はヒナのものも探してみる。

 せっかく仲間になったのだ。お互いの好みを知っておくのも、必要だろう。


「ヒナ、こういうのは……」

「あは~☆ コレいいんじゃネ~?」

「ぶっ……! き、きみ……!」

「見て見て二人とも~。コレヤバくね?」


 それは、もう紐だった。

 大事な部分こそ隠せるが、逆に言えば、大事な部分以外は丸出しになると言っても良い。


「不思議じゃ。布面積が少ないものの方が、値段が高い」

「冒険者の装備でもあったりするじゃん? そ~いうの。加護か何か付与されてんジャン?」

「そんなわけあるか」


 所謂、過激下着である。

 そんなものに何の加護が付与されているというのか。魅了か何かか。


「よう分からんのう。……む、ではこちらはどうなんじゃ?」


 ベルはベルで、違う物を発見したようだ。

 ……段々こいつも、普通に女子トークの輪の中に入ってこれるようになっているな。

 そう思いつつも私は彼女の声に振り返る。するとそこで彼女が手にしていた物は……。


「おぉ~ベルりんのセンス最☆高!」

「きみな……」

「なんじゃ、これはダメなのか? 肌は覆われるようじゃぞ?」


 彼女が手にしていたものは……、先ほどヒナが手にしていたものと、真逆(・・)

 健全という意味では無く、むしろ不健全なほうに真逆のものだった。


「丸出しだね」

「丸出しだな」


 ヒナが持っていたものは、大事なところだけが隠れるようなものだったが。ベルが持っているものは、ほとんどの肌を隠しはするものの――――むしろ大事な部分を一切隠さないというランジェリーだった。


「何故じゃ? なんなら、ワシの格好よりも布面積は多いぞ?」

「それとこれとは話が別だ! 置いて来い!」


 というか、どうしてさっきから過激下着ばかりを()によこしてくるのか。

 ヒナの下着・肌着を選ぶという趣旨だったのだが。


「え? アタシのは別にいいよ~。もう買うの決まってるし」

「な、いつの間に……」

「アタシ魔剣だからさ~。紫とか黒いのにしとこうかなって」


 ヒナは言いながら、お洒落な下着を見せてきた。

 小さな星がワンポイントで飾りつけられていて、値段も手ごろで使い勝手もよさそうだ。


「……ちゃっかりしてるな、きみ」

「抜け目ないっしょ~。魔剣だからか、道具を選ぶセンスは抜群みたいだよ☆」


 魔剣だからというのがいまいち(ニンゲン)の感覚では理解できないが、それはスルーしておこう。


「ん? このオレンジのは……」

「そぉ~。アリしゅがさっき、似合うって言ってくれたじゃん? だから買お~と思って」

「そうなのか」

友達(・・)が選んでくれたモノだからね~☆」

「……」


 友達、か。

 パーティメンバーとか、仲間ではない、また新しいジャンル。

 前の街でレイラに感じていた感情を、彼女は私に想ってくれているのか。


「そうだな。きみによく似合うと思うよ」


 目を瞑り、私は静かに言う。

 とても心が満たされていく。じわりと心臓の奥底が、温かくなっていくのを感じた。

 人でなくとも。信念が違えども。こうして友になることは出来るのだな。


「こちらこそありがとう、ヒナ」

「ん? そう~? そんなにコレ(・・)気に入った系?」

「え……?」


 感慨が過ぎ去って、目を開けると。

 ヒナは私の身体に、超スケスケのセクシーランジェリーをあてがっていた。


「なふぉっ……!」

「すごいのう。

 着ておる(・・・・)のに着ておらん(・・・・・)


 鏡で自身の姿を見ると、ベルが持つ下着越しに、ほぼそのまま私の衣服が透過していた。

 これではもう、何も隠せていない。


「い、良いからさっさと戻してきなさいッッ!」

「は~い♪」


 私はまるで、イタズラっ子を持った母親のような叱り方をして、瞬間的に店内で一番目立ってしまったのだった。


 というかランジェリーショップ編。

 長くない?






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ