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12.魔竜VS魔剣



          うごきが――――

 高速を超えて繰り出される魔竜の足と拳。しかしそれを魔剣はいとも簡単に召喚した疑似魔剣によりいなし続け、反撃の一手を試みる。も、魔竜はかれいなステップワークで回避を完了させた。

                   ――――おえない

 魔剣の追撃は高速の先。神速とも言える領域に達した狂刃が魔竜の喉元へ突き刺さる。すんでのところで回避を成功させた魔竜は身体を翻すと同時、大気ごと切り裂く爪を掲げ、いっきにたいしょうへとふりおろした。


「いや、いやいやッ……、」


 未だ自分が無事でいるのが不思議なくらいだ。

 この戦場は、様々な『速度』というものに支配されている。


 思考。

 攻撃、防御、反射、判断。

 打撃、斬撃、反撃、回避。

 知略、策略、侵略、攻略、襲撃、迎撃、追撃、直撃。

 離脱、後、再装填。


「LrrrrrRRR――――!」

「クァハハハハハハハッッッッ!」


 そんな風に、音を発する二匹のケモノ。

 二人の世界に入れる者はいない。

 二人の動作を追える者はいない。

 まるで決められた歌をセッションするように、舞い、踊り、轟き続ける。


「ベ、ベル……! 倒し切るなよ!」

「分かっておるわい」


 正直声が聞こえたのは運が良かったと思う。

 それくらいに、二人から鳴る音は、凄まじいまでの轟音だ。

 打撃と剣戟。全てがギリギリのバランスで、互いが互いに致命傷を避けている。


「ハーレムに迎え入れんといかんからのう。殺すには惜しいわい!」


 その割には躊躇しなかったじゃんお前。と、普段のツッコミを入れる暇は無かった。

 恐るべき判断速度から、瞬間ベルは高く飛び上がり、飛び蹴りと共に落下する。


「く――――ルルルルルルルァァァァァッッッ!」

「Lrrrッ……!」


 隕石でも落ちて来たのかと思うくらいの衝撃が、辺りを――――土地を襲う。

 街からかなり離れているにも関わらず、おそらくこの衝撃は向こうまで伝わっているだろう。

 周囲のわずかに顔を見せていた木々は根こそぎ砕け散り、草原は一つ残らず根絶やしになり。

 穏やかな風で揺れていた草木生い茂るこの場所は、今や見る影もない。そこには大きなクレーターが出来上がっていて、戦禍の跡地となってしまっている。


「うぁぁ……っ!」


 魔力で無理やり身体を固定していなかったら、俺まで吹っ飛んでいたところだ。それでもかなりギリギリだった。


「ム、すまんすまん。――――忘れておったわ」

「ベル……」


 ベルはたびたび俺のことを忘れて戦闘に没頭する。

 しかしそれは、相手にとどめを刺すとき。すなわち、最後の最後に最大級の攻撃を決めるときに起こりがちである。

 最大級の攻撃ということは。

 決めにかかるときということで。

 魔竜・ベルアインの最大火力を持ってして、倒れない者はいなかった。

 だからこそ。街に被害が出ようが、俺が大変な目に遭おうが、戦闘のアフターストーリーとして消化できたのだ。

 けれど、今は。


「クァハ……!」

「LLLLLLLLrrrrr…………ッ!」


 戦闘は終わらなかった。

 魔剣・ヴァルヒナクトは、ぼろぼろになりはすれ、魔竜・ベルアインの最大攻撃をその身に受けても尚立ち上がっていたのである。


「初めて、見た……!」

「奇遇じゃな、ワシもじゃ」


 ベルによる攻撃は、尋常ではない被害が出る。

 仮にヘリオスちゃんが懸念していた弱体化が起こっていたとしても、こうしてクレーターを作るほどの衝撃の攻撃は、実際に行われているわけで。

 それでもなお砕けないという、概念(せいぶつ)

 そんなものを、俺は初めて目の当たりにしていた。


「なるほど……、のう」

「ベル?」

「あやつ……、確かさっき言うておったのう。魔王を封印したとか何とか」

「そう言えば言ってたな……」


 ギャグパートみたいな空気だったが、確かに言っていた記憶がある。

 勇者が聖剣よりも魔剣の方が使えるから~とか。それで、魔王を斬って、封印したとか。


「魔剣・ヴァルヒナクトの中には、あやつの力以外に。

 遥か昔に封印されたとされる、魔王の力も入っておるようじゃな」

「はぁ!? マ、マジかよ!?」

「一部、のようじゃがのう」


 それでもベルは彼女を見据え、勝気に笑った。

 これまでの敵とは、明確に一線を画す強敵。

 彼女の最大火力でも倒れない難敵を前に、笑える理由。それは、


「そんなもん、ぬしを信じとるからに決まっとる」

「は……、え……!? そこで何で俺!?」

「クァハハハ!」


 彼女は笑って、俺の頭をがしがしと撫でた。

 こんなときにデレを挟むとか、余裕あるのかお前?


「余裕は無い。――――が、事実を述べたまでじゃ」


 ベルは言う。

 そしてしっかりと正面を見据え、静かに息を吐いた。


「ぬしにはまだ伝えておらんかったがのう。

 ワシには、隠された力が眠っておるんじゃよ」

「え、マジか! もっと強い力があるってのか!?」


 それ……、俺の身は大丈夫なんだろうな!?

 俺の力がめっちゃ吸われるとか、そうじゃなくても、これ以上の衝撃で吹っ飛んじまうのはカンベンして欲しいんだが!?


「クァハハハッ! 二つ目は保障出来んが、一つ目は問題ないわい。何せ――――元々すでに、備わっておるチカラじゃからのう」

「????」

「まぁ使えるようになったのは、つい最近なんじゃがな」

「??????????」


 言っている意味が全然分からなかった。

 最初から使える能力だけど、俺が把握していない能力で?

 けど、最近使えるようになった、攻撃方法?

 ベルって時々、なぞなぞみたいなこと言うよね……。


「クァッハハハハハッッ!

 よいよい、そこで見ておれマイダーリン!」

「お前どこでそんなことば覚えて来たんだよ……」


 茶化す言葉もそのままに。

 彼女は鋭い瞳をきゅっと細め、口角を吊り上げて静かに言った。


「勝ってくるわい」


 そして、決着の時が訪れる。









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