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1.珍しくヘリオスちゃんは・1

第二章開始です!

よろしくお願いします!



 宿屋の一室に泊っているかと思ったら、そこは神の部屋だった。

 あ、どうも。

 勇者にして魔竜の飼い主、コースケ・フクワリです。


「白……。そして広……」


 この空間に地平線というものは存在しない。

 延々と『白』が広がっているだけの空間である。


「ということはつまり……」

「ふ~、さっぱりぽんです。やはり寝起きはシャワーに限りますね~……」

「ヘリオッッ!!?」

「お……? おひゃっ!?」


 ということはつまり、ヘリオスちゃん(めがみ)絡みかなと思いかけたところに、ご本人が登場した。

 何もない白い空間が突如綺麗に切り裂かれたと思ったら、そこから白いバスタオルだけを巻いた中学生~高校生くらいの女の子が出てきたのだ。そりゃあ変な声も出る。

 いつもきれいに分けられている髪は、濡れそぼった状態で下ろされている。元気さの中に見える聡明な表情も、めっちゃリラックスした状態だった。


「あれ? もう着いていたのですかコースケさん。おかしいなぁ」

「い、いやあ……、俺も、ナニガナンダカ……」


 目の前を占める情報が、突如として『白』から『肌色』に変わりどきまぎする俺に対し。

 しかし当のヘリオスちゃんは、タオル一枚の状態を見られたというのに、驚きの声を上げた以降は落ち着いた状態だった。

 驚きの声を上げた内訳としては、『誰もいないと思ってた空間に人が居た』ことに対する驚きってところだな。


 百六十センチくらいの身長で、全体的にほっそりとした印象の身体つき。

 しかしながら、タオルの下から盛り上がる形のよい胸が、オッサンの俺には目の毒だ。

 実年齢は置いておき、女子高生くらいの若々しい肢体は、大丈夫と分かっていても犯罪めいた気持ちになってくる。


「どうしましたコースケさん?」


 全く動揺せず、真っすぐな瞳でこちらを見返してくる彼女に、俺はふぅとため息をつく。

 これはアレだ。いつもの価値観のズレってやつだろう。


「『神とニンゲンで種族が違うから、異種族の者に裸を見られても全然恥ずかしくありませーん!』みたいなパターンと見たね!」


 ずびしと指をさして俺は答える。

 魔竜(ベル)と過ごしていると、度々こういうことがあるのだ。

 種族間による価値観の違。特に羞恥の部分などは、かなり気にしない性質なのである。


「いえ、フツーに裸を見られるのは恥ずかしいですが」


 ――――と思っていたのだが、どうやら違ったみたいだ。

 そうだよね。羞恥の心はフツーに持ってるよね……。


「あれ? じゃあどうして平然としてんだ?」

「よく分かりませんが、コースケさんのことは憎からず思っていたからでしょうか。特に嫌な気にはなりませんでしたね!」


 自信満々に、「今気づきましたが」と言い放つ女神様。

 こう見えて俺(含む勇者パーティ)の上司な彼女は、中高生くらいにしては整い過ぎた身体で、腰に手を当て堂々と胸を張る。

 いつもの元気印なポーズだが、今現在の姿を顧みて欲しい。


「とりあえず整えてきますので少々お待ちを!」

「あ、はい……。ごゆっくり~……」


 きびきびとした動きで、何もない空間へと再び消えていく女の子。

 不思議空間過ぎるのだが、そんなことよりも強い衝撃でそれどころでは無かったという。






「さてそれで。

 急にお呼びだてして申し訳ありませんコースケさん」

「あぁいや、ぜんぜん。……まぁ一言欲しくはあったけど」


 五分ほど時間が経って、再び空間を切り取り戻ってきたヘリオスちゃん。

 姿はいつも通り、白をメインとした色合いの女神ルックに変わっている。髪も綺麗にまとめられていて、分けられた前髪から見える綺麗なおでこが、彼女の聡明さを印象付けていた。


「おかしいですね? 通知は出していたはずですが」

「そうなのか? 特に無かったけどなあ……」

「ふむ。行き違いか何かなのでしょう。

 仕方がありませんね。何せこちらも、前例がないことだからどんなことが起こるのか分からないのです」

「なるほど……」


 今から約一ヵ月半ほど前。

 俺、副割(フクワリ) 功助(コースケ)は、現代日本から異世界に転移させられた。

 現代で死んで、この世界に運ばれたということらしい。まぁそこの部分は特に重要ではないんだけど。

 そのあと。

 彼女、女神であるヘリオスちゃんの導きの元、魔竜・ベルアインという、この世を一度は混沌に堕としたとされるヤバヤバな怪物を使役して――――勇者活動をする運びとなったのだ。


「……改めてまとめてみるとカオスだな」

「天界みたいですね。わかりにくい!」

「天界ってそうなんだ……」


 まぁともかく。

 勇者というのはこれまでも居たらしいのだが、俺とベルのようにペアで勇者(暫定)という案件は初めてらしく。

 天界からの魔力の流れにも乱れがあるのかもしれない。

 ……的なことを、ヘリオスちゃんは説明してくれた。


「まぁコースケさんは、難しいことは考えなくて大丈夫です」

「そうか?」

「えぇ。情報の整理など、情報を整理出来る者がやればいいのです。適材適所でいきましょう」


 ヘリオスちゃんは言って、ぴっと指を立てて真っすぐな瞳でこちらを見る。


「その方が――――分かりやすい」


 このように。

 彼女はとにかく、『分かりやすさ』にこだわりを持っている。

 時々このあり方が、ひどく、狂気的に映ることがある。

 けれどこの分かりやすさというものに、俺たちの活動はかなり助けられている。

 基本的に俺もそこまで頭が良くないし、ベルは戦闘狂だから基本的に戦うことばかりだから、複雑な作戦を立てられても動けなくなってしまうのだ。


「そう言えば、複雑に物事が絡み合った事件もありましたねえ」

「そのときはマジで助かったよ……」


 なんか、国同士が水面下でばちばちやり合っていたことが問題だった事件があったのだ。

 どこか一国を滅ぼしたらバランスが崩れ、そこら一帯の情勢が狂ってしまうような、そんな事件。

 そこを俺たちが解決するに当たって、彼女はとても細かく、それでいて単純な指示を出してくれたのだ。


「Aの国の○○を壊してくれ。Bの国の○○を制圧してくれ。Cの国が来るだろうからせき止めれば、Dの国が一時的に味方になる……とかな」


 実際にはかなり複雑に物事が噛み合っていたはずだ。

 それを一つ一つ整理して、俺達でも理解できるレベルに落とし込み、それでいてベルが最大級にパフォーマンスを発揮できる土壌を整えてもらった。

 その結果、武力しかできない俺たちでも、その国々のバランスを崩すことなく一帯の平和を守りぬけたのだった。


「アレは……真骨頂だったなあ」


 俺が感心していると、ヘリオスちゃんは「いえいえ」と謙遜する。


「しかしながら、アリスさんが仲間になってからはとんとん拍子ですねえ」

「あぁそうだな」


 先日、レーヴァという街で事件を解決した際。

 アリス・アルシアンという女騎士兼ブレーン役の仲間が加入した。

 そのブレーン役っていうのが……、あまりにもブレーン役として優秀すぎた。


「めちゃくちゃ効率がいい……」

「ですね! 素晴らしいことです!」

「これまでは事件を解決したら、次の事件が待ってたからすぐに移動だったけど。

 アリスのお陰で移動もショートカット。事件もかなり時短して効率よく解決できるから、しっかり休みが取れるんだよ」


 ここ二週間の日程ローテは。二日間事件解決、一日休みというかたちだ。


「まぁめちゃくちゃ分かりやすくて――――楽だったよ」


 俺がそう告げると彼女は「ふふ」と嬉しそうに笑って言う。


「それも、コースケさんが頑張っているおかげですよ!」

「え……」

「あなたが頑張ってくれていたからこそ、アリスさんも力になりたいという気持ちになったんだと思います!」


 そんな風に、太陽のような笑顔を向けてくれる彼女。

 あまりにもいい子過ぎて、輝かしさに涙が出そうだった。

 これが女神信仰かと俺が泣きそうになっていると、「しかしてコースケさん」と、彼女は笑顔を崩さないまま――――とても申し訳なさそうに口を開いた。

 ヘリオスちゃんにしては、何とも不思議な表情とテンションである。


「どうした?」

「評価していただいているところ、非常に申し上げにくいのですが」

「うん」



「今度の案件は――――とても分かりにくいのです」



「なんと……」


 そう元気に言った後。

 彼女の元気はしおしおと無くなっていった。


「……カラ元気だったんだね、ヘリオスちゃん」

「うぅ~……。申し訳ないです~…………」


 一ヵ月くらい付き合っていて初めて出すその表情を。

 しかして俺は、(外見的には)年相応な表情っぽくて、可愛いと思ってしまった。








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