プロローグ 天使の転生屋さん
2~3話ごとに完結する連作短編形式になります。
けだるそうに作業をするのは、背中に白い羽のはえた天使だ。天使は大きな円形の板にマジックで<王子>やら<聖女>やらと文字を書きこんでいる。体形は幼児のそれだが、顔はほりが深かったり眉毛が太かったり、なんだか大人びていてあまり可愛くない。
天使が作業している後ろから、おでこにしわがある老け顔でメガネをかけた別の天使がやって来た。両手には段ボールを抱えている。
「おいーす。頼まれた品物もってきたぜ」
老け顔の天使の声を聴くと、可愛くない天使は目だけで振りかえって、けだるそうに答える。
「あざっす。適当にその辺おいといてください」
老け顔の天使は段ボールをその場におく。自分の肩を叩きながら会話を続ける。
「おまえさん、転生屋を始めるんだってな。稼げんのかい、そいつは?」
「やってみなきゃ分かんないっすけど、人間相手ならやりようはあると思うっす。あいつら欲深いっすから」
可愛くない天使は作業を続けながら答えた。老け顔の天使は邪魔しちゃ悪いと思って、じゃがんばってと言って帰っていった。
板に書き込む作業が終わった可愛くない天使は、段ボールを開いた。ごそごそと中身を取り出すと、電気製品が出てきた。モーターとスピーカーとボタンがそれぞれ1つずつあって、それらが電線につながっている。
天使はそのボタンを押してみた。
スピーカーからトゥロロロロローという電子音が鳴って、モーターが回りだした。
天使は満足そうにうなずいた。
「明日には転生屋さんを開業できるっすね」
<つづく>