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確認
その時、ワシの携帯が鳴った。
一樹からだ。
「大丈夫」
不安そうな息子の声。
「大丈夫じゃなかっ!ホールがつぶれた!」
「は?」
「は?」
一樹と良子は同時に声をあげた。
「すごか今の雨にやられたったい。今からお母さんと体育館に避難するけん」
「家、危ないと」
「わからん・・・けど、川が溢れたらやばかろう」
「まじで・・・」
絶句する一樹。
「また、何かあったら、連絡するけん」
ワシは電話を切ろうとした。
「あっ、ちょっと待って、俺はどうしたらいい?」
電話越しからも一樹の戸惑いがわかった。
「上の人に話してみろ。こっちは今、来てもどうしようもないけん。かえってそっち(職場)の方が高いけん(標高)、安全やと思うぞ」
「わかった。聞いてみる」
「おう、お前も気をつけてな」
「そっちも」
ワシと一樹は同時に電話を切った。
「いるもんだけ、とりあえず持っていくぞ」
「はい」
ワシと良子はとりあえず、必要な物だけ集め家を飛び出した。