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第九十九話 少女と再会

 孤児院の空き部屋に荷物を置いた私とシェリーは、私の両親達の墓参りのため墓地へと向かった。


 ジークとシーズは気を使ってか孤児院に残った。


「久しぶりの帰省だろう? ゆっくり挨拶してこい」


 私達を送り出す時にシーズはそう言った。口調は荒いがいつも私を気遣ってくれる。本当に私には勿体ないくらいの仲間である。



 一方、ストニアは仕事の合間で会いに来てくれていたようで、私達が荷物を置くとすぐに病院へと戻って行った。


 どうやら最近病気になる人が増えているようで大忙しらしい。

 帰省の間はゆっくりしなさいと言われたが、手持ち無沙汰になった時は必ず手伝おうと心に誓った。



 墓地の中は蒸し返す暑さだった。

 日光を遮る木々がないのもそうだが、今日は雲ひとつない快晴だ。


 花を添えるには絶好の日和だろうが、死者に会いに来る方は全身から汗が出るくらいだった。時折花を添える人が手拭いで汗を拭く姿が目に入った。



「それにしても、孤児院の子達は元気でしたわね」


 私の横を歩くシェリーが感心したようにポツリと言った。視線だけ向けると彼女は肩にかかった髪を結っていた。


 実は、私が子供達にもみくちゃにされている間、シェリーにも被害が及んでいたのだ。


 滅多に来ない客人ということもあって、小さい子達が飛びついた。シェリーは髪も服も乱れてしまったが咎めることはしなかった。


 理由を聞くと、「元気があってよろしいですわ」と苦笑いしながら言っていたのを思い出した。



「ええ、少し元気すぎるくらいです」



 シェリーの様子に私も苦笑いして相槌を打った。


 ただ、子供達が元気なのは真実だ。私がこの街で暮らしていた時も同じくらいだったように思う。


 朝から夕方になるまで全力で走り回り、魔法学院に通い始めた子は小さい子の面倒を見ながら魔法の練習をする。孤児院では当たり前の光景だった。



 私がぼんやり考えているとシェリーは私の顔を覗き込んでクスリと笑った。。



 私がどうしたのかと尋ねると、シェリーは「なんでもありませんわ」と微笑むだけだった。


 ベネスに着いてから、シェリーは終始笑っていた。なので、これもその一つかと一人納得することにした。


 それからしばらく歩いていると、目的の墓石が見えてきた。


 一年ぶりに見る両親の墓だ。誰かが綺麗にしてくれているのだろう。生い茂る雑草は丁寧に取り除かれていた。


「お父さん、お母さん、お久しぶりです。シェリーが見繕ってくれた花を持ってきたので二人で楽しんでくださいね」


 私はそう言って花を添えた。シェリーに選んでもらった白い花は、時折風に揺られ私に手を振っているようにも見えた。


 そんな幻想的なことを考えながら二つの墓石に手を触れて目を閉じる。ひんやりとした石の感触が両手に伝わってきた。


 ……私は元気でやってます。王都に行ってからは新しい友達もできたんですよ。隣にいるシェリーという方ですが、私にいつも元気をくれます。戦争で辛かった時もシェリーは私に力をくれました。


 まだ付き合いは浅いですが、誰よりも信頼してる、私の大切な友達なんですよ。


 でもそれだけじゃなくて、恥ずかしがり屋なところもあるんです。シェリーは私の従僕のジークが好きらしくて、そのことを尋ねたら顔を真っ赤にするんです。それからーー



 しばらくの間、私は王都の思い出を二人に語っていた。


 それで何か返事が来るということもない。二人とも死んでいるのだから当たり前だ。

 しかし、時折吹き付ける風が、まるで二人が側にいて返事をくれているような気がした。



「……ごめんなさい、少しお待たせしてしまいました」


 墓石から離れた私はシェリーに謝った。だが、相当長居したはずなのにシェリーは微笑みを崩さず言った。


「それだけご両親への想いが募っているのよ。その気持ちは大事にしないといけませんわ」


 シェリーは待たされたことなど気にしていないようで、私の横に立って花を添える。

 私の両親ということで気を使ってくれているのだろう。それでも彼女の優しさには内心感謝していた。



「また来ますね。シェリー、行きましょう」


 シェリーの挨拶が終わったのを見計らい、私は両親に別れを告げた。



 二人の墓を後にした私達は、次はメリルとカインの墓へとやってきた。ここも綺麗に掃除されており、二人は気持ちよさそうに陽光に照らされていた。



「ここが友人のメリルとカインの墓です。シェリー、今度は一緒に花を添えませんか?」


 本来なら一人ずつ花を添えて挨拶するのが決まりだ。ただ、私の挨拶は長くなりそうなので同時に挨拶しようと提案した。


 私の意図が見え見えの提案にシェリーはクスクスと笑いながら言った。



「私は構わなくってよ。でもリジーが後めたいようですから、一緒に添えましょう」



 シェリーの許しも得た所で、私達は花を添えて二人同時に目を閉じた。そして私は王都の土産話やシェリーの紹介を二人にも語った。



 二人にも会うのは一年ぶりなので、つい話し込んでしまった。目を開けて周囲を確認すると、シェリーが一歩下がった所で待ってくれていた。


 かなり待たせてしまったのではと思ったが、口にするのはやめた。シェリーのことだから優しく笑ってくれると分かっていたからだ。


 その証拠に、「リジーの意外と言うか、普段見られない一面が見れて良かったですわ」と孤児院へ戻る道すがらに言われた。



 孤児院に戻ってから夕食になるまでは、私達も子供達の輪に混じって遊んだ。ジークとシーズもうまく溶け込めているようだった。


 意外にもシーズは子供たちに大人気で、その背中に乗せて走り回っていた。



 そんな賑やかな一日もあっという間に過ぎて、翌日に向けて就寝の時間となった。


 私達は空き部屋の一室を借りての雑魚寝だ。シェリーは遊んで疲れたのか、シーズを抱いてすぐに寝てしまった。部屋の隅ではジークも寝ている。


 そろそろ寝よう。そう思って私もあくびを噛み殺し布団に潜る。そして今日一日を振り返りながら目を閉じた。


 そう言えば、墓参りで敵討ちの話、忘れてたな……


 そんなことをぼんやり意識したが、深く考える前に私は意識を手放していった。

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