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異世界でも引きこもりたいっ!!  作者: 猫崎七色
第1章 異世界転生編
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09話 ギルドでの大失敗

 俺はナナント町に帰ってきた。

 あのドラゴンから無事に帰ってこれるなんて奇跡だと思った。もう魔物なんて会いたくないと思うほど怖かった。ほんと、ちびるかと思った。


 ドラゴン以外の魔物も怖かったし、かなり強かった。あんな魔物がそこらじゅうにいるなんて、いつ死んでもおかしくないと思った。



 もっと強くならなくちゃ………!!



 今日、実際に魔物を見て、本気でそう思った。





 俺は早速、冒険者ギルドに向かった。もちろん、今日討伐した魔物と採取した薬草を売るためだ。


 「あの、魔物と薬草の買取をお願いします」

 「はい、かしこまりーーー魔物ですか!?」

 「はい」



 買取受付のお姉さんは、疑うような目で俺を見た。こんな子供が魔物を倒せるはずがない、そう思っている顔だった。

 事実、こんな子供が魔物を倒せるわけがない。ギンガが倒したのだ。俺は石を投げて、隠れていただけだ。


 「それでは、その魔物を見せていただけますか?」

 「わかりました」


 俺は、空間魔法を発動させ、魔物を取り出した。とりあえず、1番小さいアングリーラビットを取り出した。


 「これです」

 「…………!!!!!!!!!!!」


 受付のお姉さんは目が飛び出そうなほど驚いていた。せっかくの美人が台無しだ。周りの冒険者達も騒然としていた。


 「ギ、ギルドマスターッ!!」


 受付のお姉さんは、叫びながら部屋の奥に走っていってしまった。



 え……? なに……?

 俺、なんかしちゃった………!?



 取り残された俺に冒険者達の視線が突き刺さる。

 胃がキリキリしてきた。俺はちょー内向的なのだ。人に注目されるのが一番苦手だ。


 この空気に耐えられず、魔物をしまって帰ろうと思ったその時、部屋の奥から老人が出てきた。老人の後ろには、先ほどの受付のお姉さんがいた。


 「あの、僕帰ります……」


 もう耐えられない! この年にして胃潰瘍になりそうだ……



 しかし、俺の望みは叶わず、帰らせてもらえなかった。

 俺を中心に半径1mほどの円の壁が野次馬の冒険者によって作られていたのだ。



 「こ、これは………!! 本当にお主が倒したのか!?」


 老人ギルドマスターの目はカッと開いていた。



 「いいえ。友達と一緒に倒しました」

 「なるほど。その友達はどこにおる?」

 「この子です」


 そう言って、ギンガを指差した。

 ギンガは偉そうにふんぞり返って、調子に乗っていた。


 ギルドマスターはギンガと俺を交互に見て考え込んでしまった。


 「おいおい、ウソだろ」

 「あれは犬? いや……魔物なのか!?」

 「それってテイマーってこと?」

 「本当だったら、すげーガキだぜ!」


 冒険者達が好き勝手に騒ぎ出した。



 あぁ……… 最悪だ………

 まさかこんな事になるなんて………



 「………うむ。お主が討伐したので間違いないじゃろう。この年でBランクの魔物を討伐するとは…………」


 暫く考え、ギルドマスターが言った。

 しかし、それを聞いた受付嬢は納得いかないようだった。


 「失礼ですが、こんな子供に討伐できるとは思えません。Bランクの大人10人で討伐する魔物ですよ?」

 「この倒されたアングリーラビットのキズを見ろ。爪のひっかき傷じゃ。それに、この子が空間魔法を使うのを見たのじゃろう? 空間魔法が使えるなら、他の魔法も使えるはずじゃて」


 受付嬢はハッとした顔をして、深く頷いた。


 しかし、実際は全く違う。倒したのはギンガだ。俺は、魔法は身体強化と空間魔法しか使えない。

 アングリーラビットの背中にある小さな傷。俺が付けた傷はこれだけだ。もちろん、石を当てて付けた傷だ。


 「冒険者として登録できる年齢でないのが残念じゃ……… さて、もちろん買い取らせてもらうぞ」



 こうして、無事に買い取ってもらえたが、心底疲れてしまった。


 この雰囲気、ドラゴンなんて出したら大変な事になりそうだ。暫くドラゴンは売れないな………



 この日の売上はかなり良かった。


 アングリーラビット 1体 10万ガルン

 バーレリ草     50本 25000ガルン

 モーリュ草     5本 1万ガルン

 シルフィウム    50本 25000ガルン

 日月草       2本 4万ガルン



 この後、反省会をした。同じ間違いないをしないためだ。


 あんな沢山の人に注目されて、まるで見世物のようだった。

 ちょーインドアで内向的な俺にとっては、地獄でしかなかった。





 あれから、空間魔法について調べてわかった事があった。


 空間魔法はかなり高度な魔法で、使える人も国に10人いるかいないか、というレベルの魔法なのだそうだ。


 唯でさえ魔法を使える人が少ない。そんな中、空間魔法を使ってしまったのだ。驚いて注目するもの無理はない。


 なので、今後は、人前で空間魔法は使わないことに決めた。


 魔物の収納については、マジックバッグを参考にした。

 バッグの中で魔法を発動させ、傍からはマジックバッグを使っているように見える、という仕組みだ。



 魔物についても、売る前にちゃんと自分で調べてから売ることに決めた。


 先日売ったアングリーラビットはBランクの魔物で、かなり強い。子供には絶対に倒せない。


 1番弱い魔物でFランクの魔物というのがいる。これを中心に売ることにした。

 そして、段々強い魔物を売っていき、感覚を麻痺させていく作戦だ。







 ギンガの修行が始まって2週間経った。


 死ぬような経験を沢山したが、どうにか生きていた。

 毒針が当たりそうになったり、目の前を氷の矢が横切ったり、魔物の尻尾がかすめた事もあった。


 しかし、基本的には、俺は石を投げ、当たったら隠れる、という事しかしていなかった。

 だが、レベルは各自に上がっているのを日々実感していた。


 また、他の魔法も少しずつだが練習していた。まだ初級程度の魔法しか使えないし、具体的にイメージするのがとても難しいが、かなり楽しい。


 その上、魔物狩りのおかげでお金も効率よく稼げていた。これなら学院の学費もすぐに貯まるだろう。




 しかし、そんな都合よくはいかなかった。冒険者ギルドでの噂が親の耳に入ったのだ。


 8歳の息子が魔物を討伐したと知った両親は我が耳を疑った。そして、どうゆうことなのか説明させられた。

 すごく心配する両親。納得させないと、魔物狩り禁止令が出そうだった。それだけは絶対に阻止しなければならない。

 魔物狩りができなくなると、お金を稼げないし、レベルも上がらない。魔法の練習もできないし、これから剣の練習もする予定なのだ。


 俺は、「ギンガがものすごく強いから大丈夫!」とゴリ押しして、どうにか魔物狩り禁止令を免れることに成功した。


 「大人しかったユーリが、やんちゃになった」

 そう、ボソッと兄が呟いた。



 俺は家の手伝いも兼ねて、食べられる魔物も討伐することにした。

 マイルドラビット。この魔物は、肉の感じが牛に近く、俺の大好物でもある。このマイルドラビットを父親に持って行ったら、とても喜んでくれた。

 そして、父親から魔物の解体の仕方を教えてもらえることになった。




 こうして、あっという間に月日は過ぎていった。




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