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異世界でも引きこもりたいっ!!  作者: 猫崎七色
第1章 異世界転生編
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06話 サンメイル学院




 俺はというと、子供用の文字を勉強する本を完璧に覚えた。なので、新しい本を借りるべく、母親にお願いした。

 母親からお小遣いを貰い、ギンガを連れて貸本屋へと向かった。


 「人間を襲うなよ」


 念のため、釘を刺しておいた。


 『オレ様は誇り高きナイトシルバーウルフだッ! 人間など相手にする価値すらないわッ!! それにまだ完全回復してないからな』

 「ん? 怪我治ってないのか?」

 『いや。怪我は治ったが、少々暴れすぎてな………… 魔力が完全に戻ってないのだ』

 「なるほど。目に見えない部分ってことか」

 『それにしてもこの町は騎士が多いなッ!』


 SSランクの魔物同士の戦いから約1週間経っていたが、相変わらず人の出入りは激しかった。


 「ついこの間、この辺りで魔物が暴れたらしくて、その被害地の復興のために色んな人がこの町に出入りしてるんだ。王都と被害地の通り道だからさ」

 『なるほどな! ま、どの程度の魔物か知らんが、オレ様の敵ではないなッ!!』


 また調子に乗っているので、ここはスルーしておこう。





 そんな話をしていると、あっという間に貸本屋に着いた。

 カウンターにはシワシワのおじいさんが座っていた。

 おじいさんに本を渡し、返却の手続きを行ってもらっていると、上から声がした。


 「こんにちは。王国騎士団所属のガイロック・ゴートフェールだ。先日の魔物の消息について知っていることがあれば教えてほしい」


 王国騎士団の服を着た体格のいいおじさんが貸本屋のおじいさんに話しかけた。どうやらこの間の魔物の消息について聞き取りを行っているようだ。


 8歳のガキより王国騎士団様の方が大事なのだろう。おじいさんは手を止めて、王国騎士団のガイロックと話し込んでしまった。


 さて、どうしたものか………

 手続きが終わらないと新しい本が借りられない………


 あ…… そうだ!


 「あの、ちょっと聞いてもいいですか?」


 俺は話し込んでいる王国騎士団のガイロックの後ろに立っていた、気の良さそうな青年に話しかけた。この青年も王国騎士団の服を着ていた。


 「ん? なにかな?」

 「僕、ユーリって言います。あの、学校について色々教えて欲しいんですけど、いいですか?」

 「私は王国騎士団所属のアレクシード・グラウンドだ。もちろんいいよ。何が聞きたいんだい?」


 アレクシードは快く色々教えてくれた。


 王国騎士団は基本的にサンメイル学院の卒業生が多いらしい。

 なので、サンメイル学院について色々教えてもらった。


 まず、学院について。かなり古い歴史をもつ由緒正しい学校らしい。学院には寮もあるとのこと。

 受験資格は12歳以上。入試試験は筆記と実技。


 つまり、脳みそ筋肉は入学できないようだ。


 そして学費は、入学料金貨10枚、授業料が金貨10枚×6年間。卒業までに金貨70枚が必要だった。


 つまり、6年間で学費700万ガルン(700万円)!!!


 うちにはそんな大金はないし、お金の余裕もない。平民は学校に通うのもかなり厳しいということがわかった。


 「なるほど………有難う御座いました……」

 「ユーリくんは学院に入りたいのかい?」

 「えっと……」


 できれば入りたいし、今から勉強すれば入れると思うが、金銭的に入れるか厳しい。入りたいが入れないだろう。

 返答に悩んでいたら、他の王国騎士団の人が会話に入ってきた。

 チラチラとこっちの様子をずっと見ていた騎士団の人だ。


 「こんな田舎町のガキが入れるわけないだろ」

 「そんなことはない。実力があれば入学は可能だ」


 俺を見下すように言った団員にアレクシードが冷静に言った。


 「フン。実力があっても金がなければ入れないだろ?」


 いけ好かない奴だ。

 前世で俺の手柄を横取りした先輩社員の顔がふと浮かんだ。あの先輩もこんな感じで偉そうだったな…… 思い出したらイライラてきた。


 でも、コイツが言っていることは間違っていはいない。実力があってもお金がなければ入れない。まさに俺のことだ。なんてね。


 「まぁそうだな。でも、特待生枠があるだろ? 特待生として入学できれば学費は全額免除だ」

 「全額免除!? 特待生って何人がなれるんですか?」

 「確か10人だよ」

 「お前みたいなガキには無理だろうがな」


 特待生枠10人か…… いい情報が聞けた。


 「じゃぁ頑張れよ!」


 団員と貸本屋のおじいちゃんの話が終わったようだ。団員達はぞろぞろと貸本屋を出て行った。

 俺はアレクシードに、ありがとうと手を振った。




 本の返却手続きをようやく終え、新しい本を探しに本棚へ向かった。

 ギンガがはち切れんばかりに尻尾を振って、とても興奮していた。どうやら本が好きらしい。


 『オレ様は、好奇心と探求心の強い、頭脳派だからなッ!』


 とギンガがドヤったので、スルーした。


 色々な単語が学べるような本を探していると、サンメイル学院の過去問が置いてあった。

 先ほどの騎士団との会話を思い出た。入試の筆記試験がどのぐらいのレベルなのか気になり、本を手に取った。


 パラパラめくっていくと、筆記試験の全体像がわかった。


 前世で言うところの『国語』のような、文章読解力や単語についての問題。そして、数学は小学校の『算数』レベル。その他に『歴史』や『地理』の問題もあった。

 そして、『科学』がない変わりに、『魔法薬』『生物』などの項目もあり、『魔術』や『武術』といった項目もあった。


 内容的には、基礎中の基礎といった印象を受けた。これなら、ちゃんと勉強すれば特待生も十分狙える。



 俺は『魔法薬』が気になり、『魔法薬』の本を探した。

 色々な薬の作り方が書かれていたが、正直よくわからなかった。『魔法薬』は、なかなか難しい学問のようだ。


 魔法薬の本を本棚に戻すと、隣の本棚の本に目がとまった。表紙には金色の文字で『植物図鑑』と書かれていた。

 中を見ると、イラスト付きで色々な植物が紹介されていた。うちの裏山で見たことのある植物も載っていた。

 次はこの図鑑を借りようと決めた。


 この日は、当初の目的の単語の本を借り、帰宅した。




 





 うむ………

 どの世界でも悩みは尽きないな………


 帰宅して物思いにふけっているとギンガが話しかけてきた。


 『なんだ? 悩みか?』

 「あぁ。人間は悩みが多いんだ」

 『人間の悩みなんて高が知れてる。オレ様が解決してやろう! さぁ!悩みを言うがいいッ!!』

 「………」


 正直、この小動物に解決できるとは思えない。しかし、いい案も思いつかない。

 話すだけ話してみることにした。



 お金がない、と。



 将来の為に、学校に入りたいが、サンメイル学院は700万ガルン必要だ。しかも、生活費は別で必要になる。

 他の学校の学費はわからないが、多分同じくらいはするだろう。

 また、入学試験の勉強もしなくてはならない。そのためには、貸本屋で本を借りる必要がある。それにもお金が必要だ。

 もし、学校に入学しない場合、独学で勉強することになる。その場合も貸本屋で本を借りて勉強することになるだろう。


 つまり、圧倒的にお金が足りないのだ。


 なにか効率良く稼ぐ方法はないものか悩んでいた。



 『ガハハハハッ!! やはり思った通りッ! くだらない悩みだなッ!』




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