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異世界でも引きこもりたいっ!!  作者: 猫崎七色
第1章 異世界転生編
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05話 将来設計




 前世の記憶を取り戻して2日目。

 生活をする中で、俺は大事なことに気が付いてしまった。


 そう、将来についてだ。


 俺はこれからこの世界で生きていかなければならない。生きていくには、最低限の衣食住が必要だ。そのためにはお金がいる。お金を得るためには、働かなくてはならない。

 この仕組みについては、前世と同じだ。働かざるもの食うべからず。


 この店は長男が継ぐことが決まっている。なので、父親も長男には一番厳しく指導していた。

 姉や妹のソフィ―はどこかの家に嫁げばいいし、ひとつ上の次男はお店の手伝いをしているので、どこかで自分の店を開いてもいいかもしれない。


 俺も同じようにするか?


 答えは否だ。

 接客業は俺には向いてない。



 俺は引きこもりたいんだ!!!!!!



 前世で叶えられなかった夢をこの世界で叶えるんだ!!



 というわけで、本気で将来について悩んでいる。



 職業について色々調べたが、一番人気は国家公務員だった。やはり安定した給料が魅力のようだ。しかし、事務系の職種は貴族が携わることが多く、平民からなるのはほぼ不可能に近いようだ。

 他には騎士団がある。運動は苦手だし、好きでもない。戦争もやりたくないし、人も殺したくないので、騎士団は却下。



 あと、冒険者というのもある。

 基本的には、魔物の討伐や薬草の採取などがメインだ。危険を伴う仕事だし、収入もピンキリ。それに、そもそも運動が苦手な俺には向いていない。

 

 あとは、前世の薬学の知識を生かして、薬剤師。前世の農業の知識を生かして農家。それと、興味のある魔法の研究なんてのも考えた。

 まぁ、農家は結構体力が必要だし、できれば遠慮したい。


 あまり人と会わず、もくもくと働く仕事。そして、俺の性格に合っている職業は『薬剤師』か『魔法の研究』が今のところ一番いい気がする。

 『魔法の研究』なんて職業があるかはわからないが、それと似たような職業であれば問題ない。



 そうと決まれば、まずは勉強だな。この世界には学校みたいな教育機関はあるのだろうか?




 魔物が知っているわけないと思いながらも、ギンガに聞いてみた。めちゃくちゃ暇そうにしていたからだ。

 すると、ギンガは想像以上に物知りだった。かなり長い年月を生きているようだ。こんなに小さいのに。


 俺が住んでいるサンメイル王国には、各領地に学校がある。その中でも、一番レベルの高い学校は、『サンメイル学院』という学校らしい。場所は王都サンレージュ。

 学校では、基本的に魔法や剣術など色々な知識が学べるようだ。


 ただ、魔獣なこともあり、それ以上詳しい内容は知らない、と。これでも、魔物の中では人間について詳しい方なのだとか。


 『基本的に魔物は人間社会には興味ないからなッ!仕方あるまい。』


 そう偉そうに言った。


 でも、そうか……… 学校があるのか………

 将来のことを考えると、是非通いたいが……… 年齢や学費、入試など、学院についてもう少し調べる必要があるな。


 『今すぐ勉強したいなら、【貸本屋】と言うのがあると聞いたことがあるぞ。確か、本を貸してくれる店だと聞いた気がするが………』

 「それだっ!!」


 それこそ、今の俺にぴったりだ!

 学校については、後々調べるとして、まずは今できる勉強をしよう!


 俺は早速母親に相談した。







 この世界では、紙はかなり貴重で庶民が気軽に入手できるようなものではなかった。紙を作る技術があまり発達していないからだ。

 そのため、本自体もかなり高価だった。書かれている内容にもよるが、平均金貨1枚(10万円)はする。

 なので、購入というよりも貸し出すというのが主流になっていた。前世で言うところの漫画のレンタルサービスだ。


 ちなみにこの世界は世界共通の通貨を使用している。

 通貨単位は【ガルン】。


 ざっくり円にしてみると、

 100ガルン    = 鉄貨一枚 = 百円

 1,000ガルン   = 銅貨一枚 = 千円

 10,000ガルン   = 銀貨一枚 = 一万円

 100,000ガルン  = 金貨一枚 = 十万円

 1,000,000ガルン = 白金貨一枚= 百万円

 となる。




 母親は快く了承してくれた。

 早速その日のうちに貸本屋へ行き、1冊の本を借りてきた。

 普段お願いや頼み事をしないユーリがお願いしてきたため、すぐに母が時間を作ってくれたのだ。


 1冊借りるのに1,000ガルンもした(約1,000円)。決して安くはない。

 ユーリは、本を借りてくれた母のためにも、一生懸命勉強することを誓った。


 借りてきた本は、文字を覚えるための本だった。

 まずは文字の勉強だ。




 ◇





 「わぁーーっ!!」


 次の日。

 大きな叫び声で目を覚ました。


 何事かと周りを見ると、何が起こったのかすぐに理解できた。


 ギンガが兄さんに見つかってしまったようだ。

 兄さんは尻もちをつき、わなわなとギンガを見ていた。ギンガはあくびをして眠たそうにしていた。


 「どうした!?」

 「何があったの!?」


 叫び声を聞いた両親が慌てて部屋に入ってきた。


 さて……… 一体どうしたものか…………


 「と、父さん!母さん!! ま、魔獣が部屋の中にっ………!!」


 おっと、これはまずい。


 「待って!」


 俺は大きな声を出した。ビックリして両親の動きが止まったすきに、ギンガのもとへ行き、抱き上げた。


 「ん……?どうしたの??」

 「わんちゃん……?」


 俺の大きな声に、他の兄弟も起きてしまった。


 「コイツ、僕が拾ってきたんだ。ちゃんと説明するから、ちょっと待って」


 真剣な顔で両親に訴えた。両親はお互いに顔を見合わせ、頷いた。


 「わかった。どういう事か説明してくれるな?」

 「うん。ありがとう」


 ホッとした。話のわかる親で良かった。


 俺は小声でギンガに話しかけた。


 (ギンガ。俺以外の人間に意思伝達を使うな。お前が魔獣だとわかれば確実に殺される)

 『………ふむ。なるほど。わかった』


 よし、後は俺が説得できるかだな。


 「実は、この間裏山に薪を拾いに行った時に見つけたんだ。すごいケガをしてて、痛そうだし可愛そうだったから、家に連れてきて……… それで……… 薬を塗ってあげたんだ」


 両親は真剣な顔で話を聞いてくれていた。


 「噛んだりしないし、すごくいい子だし………… 僕がちゃんと面倒見るから、飼わせて! お願い!!」


 ん〜…… どうかな〜……

 特別説得力があるわけでもないからな…… これで納得してくれたらいいんだけど……


 「魔獣じゃないのか……?」


 父親が心配そうに聞いた。魔獣じゃないと俺が言おうとしたら、

 「わんちゃん!」

 と、ソフィーが言った。


 「犬か……」


 ホッとしたように父親が呟いた。どうやら犬ってことで納得してくれたようだ。ソフィー、ナイスアシスト!

 腕の中にいるギンガは不満そうな顔をしていたが、今はそれどころではない。見なかったことにしよう。


 「飼うって言うけど、ごはんとかちゃんと面倒見れるの?」

 「うん。大丈夫。ケガが治ればごはんは自分でなんとかするよ」


 ギンガに確認は取ってないが、俺は言い切った。もともと山で暮らしてたわけだし、自分の飯ぐらい自分でどうにかするだろう。というか、自分でどうにかしろ!


 と言うか、今気が付いたが、コイツこの家に来てからご飯食べてないよな?ウンコもしてないし…… 魔獣って食べなくても生きていけるのか!?

 …………後でギンガに直接聞いてみよう。



 両親は悩んだ末、飼うことを許してくれた。

 これで堂々とこの家に置いておける。

 思いもよらぬ早起きをしてしまったが、良い方向にまとまって良かった。


 それにしても、バレるのはやすぎじゃないか? とちょっと思った。






 「とりあえず、追い出されなくて良かったな。ところで、今までご飯あげてなかったけど、どうしてたんだ?大丈夫なのか?」

 『オレ様はナイトシルバーウルフだ!上位の魔獣だから食事は必要ないのだッ!』


 なんと!食事が必要ないなんて最高だ!!これで食事の心配は必要ない。






 ギンガは家族の一員として受け入れられた。ギンガ自身も楽しそうにしている。怪我も完全に完治し、今では元気に走り回っていた。

 野生の治癒能力凄まじい……!




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