嵐の中へ 夢
――――嵐の中へ――――
ドアを開けて
雨の中に
風の中に
駆けだして
頬に大粒の雨を受け
この両腕で、強く吹きつける風を抱いて
大気が暴れている姿を
この目で見て
この体で感じて
ずぶ濡れになって
どこまでも
限りなくどこまでも
倒れるまで走っていきたい
嵐よ
教えてほしい
僕が今ここに
確かに生きていることを
――――夢――――
黒く硬い岩稜を歩く時
僕たちは互いの靴音に耳を澄ませて
淡い淡い夢を見ていた
蒼く冷たい岩壁を登る時
僕たちは一本の赤いザイルに体を結びあって
遠い遠い夢を見ていた
君と見ていた夢は
今はもうここにはないけれど
いつかあの空の向こうにあるはずの夢