Tutorial Plus
少し遠くを見れば化け物、こっちを追って来る奴までいる。
……こんな世界で生きても絶望しかないのではないかと、そんな弱音が脳裏によぎる。
「くそ…っ、考えるな、考えるな…!」
別の事を考えて、弱音を隠そう、GSの内容を再度頭の中で整理する。
『Growing Survivors』月額制のオンラインゲームで、課金要素は今のところはない。
ゲームのジャンルとしてはレベルやスキルなどの成長要素のあるサンドボックス型のゲームだ。
少し特殊な要素があるとするなら最初に選択する職業があり、選択した職業によって作成可能なアイテムが変わったりする。中でも職業固有の作成可能なアイテムは強力な事が多い。
それ以外にも戦闘モーションが変わったり、アイテムを作る為の材料の数、HPやスタミナの成長率が変わったりもするが、やはり作成可能なアイテムが変わる事が大きい。
これによってプレイヤー同士が協力したり、材料と報酬を持ってくれば作ってやるなどの商売もあったりする。
職業の種類は全てを覚えてはいないがかなり種類は多い。俺に届いたメッセージにあった『一般人』や、ロックの『自衛隊員』など、その他にも色々ある。
軽く特徴を挙げるなら『一般人』はHP、スタミナの成長率が低い、それに加え職業固有のアイテムは無い。代わりに職業固有のアイテム以外は全て作ることは出来る。が、アイテムを作る為の素材の要求量が増えたり、作ったアイテムの耐久度が低かったりと、プレイするうえではキツい事が多い。
『自衛隊員』は武器系統のアイテムは少ない材料で作る事が可能で、HPとスタミナの成長率が高い。作成できなくなるアイテムもあるが、それもあれば便利程度のアイテムだ。
それに、職業固有のアイテムがかなり便利で、一度これに慣れてしまうとないと不便と思う程だ。初心者向けというだけあり、人気のある職業だった。
他にも建築系に特化した『建築家』や回復に特化した『医者』なども存在する。
序盤はどの職業を選んでも変わらず、エネミーとは関わらず素材を集め、安置を作り武器を作る、この一連を素早く終わらせることができれば、上手くいけば一度も死ぬこと無く安置に籠ることができる。
GSのデスペナリティは所有アイテムを回収する前にもう一度死んでしまえばアイテムが全て消えてしまう程度。ただ、エネミーに倒された場合は持っていた武器などをエネミーが使ったりする場合もあるから、回収はかなり困難となる。
ある程度脳内で整理を終えた瞬間、俺は急いで足を止め、物陰に隠れる。
「っ…! あぶねぇ…」
俺の視界の先には、周りの化け物よりも大きな化け物が、ゆっくりと歩いている。
ネームドエネミー。どこに居るか決まっている訳では無いが、一度現れると自然消滅はせず、倒すか、遠回りして関わらないようにするか以外、選択肢が無く。倒すとなればかなりの準備が必要で、準備が無ければ一発で殺されてしまう、強敵。
「やっぱ居るよな……くそ……」
俺は息を殺し、見つからないようにそいつから離れる。
ロックは無事だろうか、不安を抱きながらも俺はまた走り出す。